田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『白夜』

2019-02-11 18:41:02 | 1950年代小型パンフレット
『白夜』(57)(2006.11. 24.)



 ドストエフスキーの原作をルキノ・ビスコンティが映画化。セット撮影が見事な一作。イタリアの港町の小さな橋で、マリオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、1年前に去った男(ジャン・マレー)を待ち続けるナターリア(マリア・シェル)と知り合い、彼女が語る物語に耳を傾けるが…。

 ナターリアの姿が、フェデリコ・フェリーニの『道』(54)のジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)とイメージが重なるところがある。また、後のビリー・ワイルダーの『アパートの鍵貸します』(60)の三角関係劇(この映画とは逆のパターンだが)に、少なからず影響を与えたのではないかと思われる。特にあの映画のジョセフ・ラシェルの音楽は、この映画のニーノ・ロータの影響大とみた。高校生の頃に見て、ひたすら睡魔に襲われたロベール・ブレッソン版の『白夜』(71)も、今見直したら印象が変わるだろうか。
 
マリア・シェルのプロフィール↓

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『地下室のメロディー』

2019-02-11 15:34:48 | 1950年代小型パンフレット

『地下室のメロディー』(63)(2010.10.23.新宿K's CINEMA)



 初老のギャング・シャルル(ジャン・ギャバン)は、生涯最後の仕事として、カンヌのカジノの地下金庫から10億フランを強奪する計画を立て、チンピラ青年のフランシス(アラン・ドロン)と、その義兄のルイ(モーリス・ビロー)を仲間に引き入れるが…。

 この映画をテレビで初めて見たのは小学生の頃。いつの間にかこの映画のドロンよりもギャバンに年が近くなっていてあ然とする。印象的なテーマ曲、いかにもフランス映画らしいモノクロでスタイリッシュな映像と登場人物、そして妙に理屈っぽいセリフが印象に残る。このころのアンリ・ベルヌイユは、娯楽映画監督としての腕が冴えわたっている。

 この映画の、盗んだ札束がプールに浮かんですべては水の泡というラストは、ジョン・ヒューストンの『黄金』(48)やスタンリー・キューブリックの『現金に体を張れ』(56)にも通じる無常観が漂うのだが、当時の映画界の暗黙の了解として、犯罪は割に合わないという結果を示すことが必要だったのかもしれない。今なら、ディカプリオやジョニー・デップがドロンの役でリメークもありかと思うが、ギャバンの役にはまる役者がいないなあ。


『違いのわかる映画館』vol.02 新宿K's CINEMA アラン・ドロン生誕75周年映画祭https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3c533d0cadc613e16a0df94391ea7b5b

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『平原児』『地獄への挑戦』

2019-02-11 08:08:58 | 1950年代小型パンフレット
『平原児』(36)(2013.4.10.渋谷シネマヴェーラ「西部劇特集」)



 リンカーン大統領暗殺事件が起きた頃、ワイルド・ビル・ヒコック(ゲーリー・クーパー)は、親友のバッファロー・ビル・コディ(ジェームズ・エリソン)と共に西へ向かっていた。その途中、ヒコックは恋人のカラミティ・ジェーン(ジーン・アーサー)と再会するが、彼らはカスター将軍とインディアンとの戦いに巻き込まれていく。

 実在の人物が多数登場するセシル・B・デミル監督の西部劇大作。今回、久しぶりに見直したら、いろいろと盛り込み過ぎたためか、大味で退屈な印象を受け、時代差を感じた。名作は時代を超えるはずだが、残念ながら、この映画の場合は違った。インディアン役で、当時デミルの娘婿だったアンソニー・クインがちらっと顔を出す。

ゲーリー・クーパーのプロフィール↓


ジーン・アーサーのプロフィール↓


アンソニー・クインのプロフィール↓

 

『地獄への挑戦』(36)(2013.4.24.シネマヴェーラ「西部劇特集」)



 クリスマスの頃、荒野の真ん中で瀕死の母親から赤ん坊を預けられた3人の悪党(チェスター・モリス、ルイス・ストーン、ウォルター・ブレナン)の改心を描く。ピーター・B・カインの原作は、ジョン・フォードの『恵の光』(19)、ウィリアム・ワイラーの『砂漠の生霊』(30)、フォードの『三人の名付親』(48)など、何度も映画化されている。いわば人情西部劇の古典だ。後には『赤ちゃんに乾杯!』(85)と、それをリメークした『スリーメンズ&ベイビー』(87)などの亜流も生まれた。

 今回は、ロケを生かした荒涼とした風景(特に毒水の存在)を映したジョセフ・ルッテンバーグの撮影が印象に残った。監督のリチャード・ボレスラウスキーは、ロシアでスタニスラフスキーに演技を学んだ後、ハリウッドに渡ったポーランド人だという。脚本にジョセフ・L・マンキーウィッツが参加している。

ウォルター・ブレナンのプロフィール↓



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