田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『大いなる遺産』

2019-02-08 18:47:11 | 1950年代小型パンフレット
『大いなる遺産』(46)(1987.10.11.)



 17世紀初頭のロンドン。20歳になった孤児のヒップ(ジョン・ミルズ)は、ある人物から莫大な遺産を受け取るが…。チャールズ・ディケンズの名作を映画化。スペクタクル映画を撮る以前のデビッド・リーンが正攻法で描く。

 この映画、ガイ・グリーンの奥行きのある撮影が素晴らしく、モノクロの絵画を見ているような気分になる。ただ、この手の成長映画の子役から大人の俳優への転換の難しさ、つまりイメージの引継ぎの難しさが、この映画にも如実に表れている。

 何しろヒロイン・エステラの少女時代を演じたジーン・シモンズが、あまりにも光り輝いていて、後に大女優となる片鱗を垣間見せるから、引き継いだエステラ・ハビシャムがかわいそうな気さえするのだ。

 それにしても、こうした昔のイギリス映画の特徴だった格調高い映像美は、このリーンやキャロル・リードたちの時代とともに消滅してしまったのだろうか。最近はイギリス映画なのかアメリカ映画なのか、区別がはっきりしないような気がする。その復活については、『炎のランナー』(81)『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』(83)のヒュー・ハドソンあたりに期待したい。

 【今の一言】その後、期待したヒュー・ハドソンは思いのほか伸びなかった。またこの映画は、1998年にアルフォンソ・キュアロン監督、イーサン・ホークのピップ、グウィネス・パルトローのエステラでリメークされた。

名画投球術 No.7. 「いろんな不倫が見てみたい」デビッド・リーン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6656d135892f89a5ee867ce45b7c7437

ジーン・シモンズのプロフィール↓


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【インタビュー】『アクアマン』アンバー・ハード

2019-02-08 12:46:47 | インタビュー



スーパーヒーローを演じるには、やはりスーパーなトレーニングが必要でした(笑)」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1178662


『アクアマン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3ea6cba5942868b1dee5e61547e26d4b

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『アリータ:バトル・エンジェル』

2019-02-08 08:56:33 | 新作映画を見てみた


 日本のSFコミック「銃夢」(木城ゆきと)を、製作ジェームズ・キャメロン、監督ロバート・ロドリゲスが実写映画化。キャメロンに原作を紹介したのは『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)のギレルモ・デル・トロだという。

 大戦後の未来は、天空に浮かぶユートピア都市ザレムと、荒廃した地上のアイアンシティに分断されていた。アイアンシティに暮らす医師のイド(クリストファー・ヴァルツ)は、ある日クズ鉄の山から少女の頭部を発見する。彼女は300年前に作られた最強兵器=サイボーグだった。ドクは彼女をアリータ(ローサ・サラザール)と名付け、娘のように接するが…。遠い未来の世界を舞台に、記憶を失ったサイボーグ少女の成長と恋、そして闘いを描く。テーマはアイデンティティの模索と、父と娘といったところか。

 キャメロンが『アバター』(09)で扉を開けた3D映像が格段に進歩し、もはや違和感を抱かせない。加えて、キャメロンが自身の娘を重ね合わせて創造したというアリータをはじめ、登場人物の描写がきちんと描かれているので、映像やアクションだけが際立つという失敗も犯していない。アリータを見ていると、何だかこちらも父親のような気分になってくる。

 一時は乱発された3D映画も、最近は下火になった感があったが、キャメロンがまた新たな可能性を示したと言えるのかもしれない。その意味では、まさにキャメロン印の映画。その分、監督ロドリゲスが果たした役割があまり見えてこないところがある。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『どてっ腹に穴をあけろ』

2019-02-08 06:27:03 | 1950年代小型パンフレット

『どてっ腹に穴をあけろ』(59)(1987.11.15.)



 暗黒街の帝王アル・カポネ(ネビル・ブランド)と財務省検査官エリオット・ネス(ロバート・スタック)の戦いを描いたTVシリーズ「アンタッチャブル」の劇場版。監督はフィル・カールソン。

 ブライアン・デ・パルマの『アンタッチャブル』(87)公開のおかげで、うろ覚えのオリジナルを見ることができた。ここでは正義のネス対悪党カポネという図式が明確に描かれており、ベトナム戦争以前の、疑うことなく正義を描けたアメリカの典型がここにもあったという感じがした。

 デ・パルマ版も、最近では珍しく正義を前面に押し出してはいたが、ラストのネス(ケビン・コスナー)の姿に、法律=正義ではない苦さが残る。つまり、映画やドラマは、作られた時代の空気を如実に反映するということだ。ひたすら正義を描けた昔がうらやましい気もする。それにしても、誰が付けたか知らないが、随分物騒なタイトルだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする