『波も涙も暖かい』(59)(1987.6.10.)
経営難に陥ったマイアミのホテルのオーナー(フランク・シナトラ)が再建に奔走する姿を、息子(エディ・ホッジス)への愛、ガール・フレンド(キャロリン・ジョーンズ)や美しい未亡人(エリナー・パーカー)との恋、兄夫婦(エドワード・G・ロビンソン、セルマ・リッター)の好意、旧友(キーナン・ウィン )の裏切り、などを交えながら描く。
フランク・キャプラが8年ぶりに監督した人間喜劇。シナトラとホッジスが歌う「High Hopes」(作詞ジミー・バン・ヒューゼン、作曲サミー・カーン)はアカデミー歌曲賞を受賞した。
キャプラの映画の多くは、ばかばかしくなるほどの善意で描かれ、ラストは毎度お決まりのハッピーエンドになるのだが、なぜか後味がいい。それはニューシネマなど、暗く厳しい映画を見ながら育ってしまった者の、夢の工場だった頃のハリウッドへのかなわぬ憧れがあるせいなのかもしれない。
とは言え、昔の映画が全て素晴らしかったというわけではない。この映画にしても、キャプラ晩年の、しかも長いブランクを経て、ということを差し引いてみても、あまり上出来とは言えないだろう。パーカーの母性を感じさせる演技や、ベテランのロビンソンやリッターが脇で盛り上げて、やっと何とかなっている感もある。ところが、これでも今の人間喜劇よりは暖かいものを感じて、いい気分になれるのだから困ったものだ。この場合、言い得て妙の邦題も珍しく相乗効果を発揮する。
【今の一言】立川談志が和田誠との対談で「『波も涙も暖かい』がいいね、なんて奴がどっかにいないかね」と語っていたのが印象に残っている。
フランク・キャプラのプロフィール↓
フランク・シナトラのプロフィール↓
エリナー・パーカーのプロフィール↓
エドワード・G・ロビンソンのプロフィール↓
パンフレット(60・外国映画出版社)の主な内容は
かいせつ/かんとくフランク・キャプラ/ものがたり/スター・メモ、フランク・シナトラ、エドワード・G・ロビンソン、エリナー・パーカー、キャロリン・ジョーンズ、エディ・ホッジス、セルマ・リッター/こぼれ話
寄席や芸人の見巧者としても知られた著者の、連載エッセーをまとめた『御家庭映画館 映画ビデオガイドブック』を改題再版したもの。無頼派として知られた人が、わざわざ“御家庭”と名乗っているところが微笑ましいが、それ故、少し遠慮して語っているところも見受けられる。
登場する映画は、チャップリンの『黄金狂時代』(25)からウディ・アレンの『ブロードウェイのダニーローズ』(84)まで。
自身の苦い戦後体験とともに語られる『自転車泥棒』(48)や、無頼派ならではの視点で語られる『アスファルト・ジャングル』(50)『陽のあたる場所』(51)などの“犯罪物”や、『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』(73)などのアウトローへの共感、あるいは『心の旅路』(42)の嘘の効用、“泣き”の変化に言及した『道』(54)などが印象に残る。
また『逢びき』(45)についての「抑制する誇りと日常生活を維持していく誇りがきっちりと描かれている」という一節は、まさに我が意を得たりという気がした。
あくまでも“観客の視点”で語られているのが好ましい。
2013年のボストンマラソンでの爆弾テロ事件を、現場で警備に当たっていたボストン警察の刑事(マーク・ウォールバーグ)を中心に、地元警察とFBIの合同捜査で犯人を追い詰めていく様子を描く。
監督はピーター・バーグ。ジョン・グッドマン、ケビン・ベーコン、J・K・シモンズ、ミシェル・モナハンなど、共演陣も豪華。『ライ麦畑で出会ったら』(15)『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(17)『ヘレディタリー/継承』(18)と、進境著しいアレックス・ウルフが犯人の一人を演じていた。
さて、犯人追及の描写は緊迫感があり、なかなかのサスペンス劇として見られるのだが、後半は、映画の根底にある「アメリカ=ボストンはテロには屈しない」という主張が強く出過ぎて、どうしてもプロパガンダ的なものを感じてしまう。原題は「愛国者の日」だから、これも仕方ないのか。
また、本編が終わった後、本物の関係者や被害者が登場するのは、最近の実録物の常で、それが新たな感慨を呼ぶこともあるが、この映画の場合は、主張の押し付けやくどさを感じさせられるので、かえって逆効果だったと思う。
第二次大戦史に名を残した米海軍航空隊のフランク・“スピック”・ウィードの伝記映画。
前半は『静かなる男』(52)にも通じる、ジョン・ウェインとモーリン・オハラを中心にしたアットホーム劇的な楽しさに満ちあふれていたのに、後半は、ストーリーの流れ上仕方ないのかもしれないが、あまりにも海軍礼賛が前面に押し出され過ぎて、素直に見ることができなかった。
もともとフォードの映画には、西部劇の騎兵隊も含めて、軍隊賛美や愛国精神への傾倒が見られるが、詩情あふれる展開や、見事なカメラワークが、そうした思想を忘れさせて見る者を感動させる、という魔力を持っている。この映画については、その魔力がちょっと弱かった気がする。それは知り合いだったという主人公ウィードへの思い入れがそうさせたのか、それとも晩年の衰えは、このあたりから始まっていたのだろうか。
ジョン・ウェインのプロフィール↓
モーリン・オハラのプロフィール↓