舞台はフィラデルフィア。B級映画の音響技師ジャック(ジョン・トラボルタ)は、深夜、効果音の録音中に交通事故を目撃。池に落ちた車から娼婦のサリー(ナンシー・アレン)を救出したことで、事故の裏にある陰謀に巻き込まれる…。監督はブライアン・デ・パルマ。
ファーストシーンの、シャワーを浴びる女に近づくナイフで、前作『殺しのドレス』(80)を思い出させ、しかもアレンに『殺しのドレス』と似た役柄を与えている。となると、デ・パルマが「この2作は兄弟のような映画だ」と宣言しているようにも取れる。
ところが『殺しのドレス』ほどにはサスペンスは盛り上がらない。犯行の手口はすぐに分かってしまうから、後は組織が仕向けた追っ手(ジョン・リスゴー)から2人がどう逃れるのか、その渦中での2人の愛の行方は…に興味は絞られるのだが、追っ手は自分の変態趣味に忙しく、2人のロマンスも進展しない。ラスト近くの追っ掛けシーン以外は、一体これからどうなるのか、というハラハラドキドキが無さ過ぎるのだ。というわけで、全体的には全てが中途半端な印象で、期待外れだったと言えなくもない。
ただ、効果音としての銃声や悲鳴、雑誌の写真を切り抜いてフィルム化する描写、ヒッチコック映画を思わせるカメラの移動や花火のシーンなどに、映画狂としてのデ・パルマの趣味が出ているし、支離滅裂なピノ・ドナジオの音楽やリスゴーの変態悪役ぶりなど、ディテールには捨て難い魅力があった。
【今の一言】今回、約37年ぶりの再見となったこの映画は、ミケランジェロ・アントニオーニの『欲望』(66)に触発されたものだと後から知った。『欲望』の原題が「BLOW UP=タイヤを膨らませる」なら、この映画のそれは「BLOW OUT=タイヤのパンク」である。デ・パルマはタイトルで種明かしをしていたのだ。
ジョン・トラボルタ
ジョン・リスゴー