田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『月光の女』

2019-02-26 12:32:45 | 1950年代小型パンフレット
『月光の女』(40)(1992.5.30.)



 マレーのゴム園主ロバート(ハーバート・マーシャル)の妻レスリー(ベティ・デイビス)が、ハモンド(ジェームズ・スティーブンソン)を殺害する。彼女は正当防衛を主張し、夫も弁護士もそれを信じたが、弁護士の助手が、事件当日、レスリーがハモンドに宛てて書いた手紙を発見する。サマセット・モームの「手紙」をウィリアム・ワイラー監督が映画化。

 この映画を撮った頃のワイラーは、製作者サミュエル・ゴールドウィンと組んで『この三人』(36)『孔雀夫人』(36)『デッド・エンド』(37)『嵐ヶ丘』(39)『西部の男』(40)と、それぞれ違った題材の名作を残している。

 それらに比べると、この映画と、ベティ・デイビスがアカデミー主演賞を受賞した『黒蘭の女』(38)は、ゴールドウィンの製作ではなく、いかにもデイビス御用達といった感じで、今となっては彼女の古めかしい悪女ぶりが目立ってしまう。

 ところが、ワイラー、デイビスの集大成となった名作『偽りの花園』(41)はゴールドウィン製作によるもの。その意味では、やはりゴールドウィンの力は大きかったのだろう。

 ところで、数年前にキム・カーンズが歌った「ベティ・デイビスの瞳」という曲が大ヒットしたが、『何がジェーンに起ったか?』(62)の老婆役で、デイビスと初対面してしまった自分にとっては、何かしっくりこないところがあった。ところが、彼女が最も光り輝いていた頃のこうした映画を見ると、いまさらながらその歌詞に納得させられた。思えば彼女は“強い女”の先駆けだったのかもしれない。

【今の一言】ゴールドウィンの評伝『虹を掴んだ男』によると、ワイラーは『嵐ヶ丘』を、マール・オベロンではなく、デイビス主演で撮りたかったらしい。確かに、彼が作る冷徹な映画のヒロイン像にデイビスは合っていたのだろう。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/10cc294f9f7bbf8525eb9e6db7ce937f
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『毒薬と老嬢』

2019-02-26 07:49:48 | 1950年代小型パンフレット

『毒薬と老嬢』(44)(1992.8.31.)



 婚約者(プリシラ・レイン)を披露するため、2人暮しの伯母(ジョセフィン・ハル、ジョーン・アディア)を訪ねたモーティーマ(ケーリー・グラント)。ところが伯母たちには「貸間あり」の新聞広告で釣った身寄りのない老人たちを、毒入りワインで安楽死? させるという困ったクセがあった。モーティーマは自分にも伯母たちと同じ精神異常の血が流れていると思い込み、必死になって婚約者に秘密を知られまいと画策するのだが…。

 この映画は、人情噺を得意とするフランク・キャプラが珍しく撮ったブラックコメディ映画だが、公開時の双葉十三郎さんの批評に「あまりにも原作の舞台劇の方が傑作で…」と書かれているように、思いのほか評判になっていない。

 だが、キャプラの映画を見てくると、この映画の“狂った一家”も、本人たちは至極幸福であるという点では、例えば『我が家の楽園』(38)の一家や、『オペラハット』(36)『スミス都へ行く』(39)『素晴らしき哉、人生!』(46)の主人公たち、つまり、一般社会から見れば“変人”扱いされる、キャプラが描き続けてきた理想郷の住人たちと同じ世界の人たちなのだと気づく。

 また、ブラックな話なのに死体が全く出てこない点などからも、当時、ハリウッドで台頭してきたヒッチコックたちに対するキャプラなりの余裕の挑戦と見れないこともない。

名画投球術No.1「たまには幸せになれる映画が観たい」フランク・キャプラ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9e99f5d4aed0879a4acec261f63f830c

フランク・キャプラのプロフィール↓


ケーリー・グラントのプロフィール↓

パンフレット(48・アメリカ映画宣伝社(American Picture News))の主な内容
今週の解説/鑑賞ポイント/マッセイのマスク/物語/スタア・メモ児玉数夫(ケイリー・グラント、レイモンド・マッセイ、ジャック・カースン、プリシラ・レーン、ピーター・ローレ、エドワード・E・ホートン、ジェームス・グリースン)撮影所美談

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