マレーのゴム園主ロバート(ハーバート・マーシャル)の妻レスリー(ベティ・デイビス)が、ハモンド(ジェームズ・スティーブンソン)を殺害する。彼女は正当防衛を主張し、夫も弁護士もそれを信じたが、弁護士の助手が、事件当日、レスリーがハモンドに宛てて書いた手紙を発見する。サマセット・モームの「手紙」をウィリアム・ワイラー監督が映画化。
この映画を撮った頃のワイラーは、製作者サミュエル・ゴールドウィンと組んで『この三人』(36)『孔雀夫人』(36)『デッド・エンド』(37)『嵐ヶ丘』(39)『西部の男』(40)と、それぞれ違った題材の名作を残している。
それらに比べると、この映画と、ベティ・デイビスがアカデミー主演賞を受賞した『黒蘭の女』(38)は、ゴールドウィンの製作ではなく、いかにもデイビス御用達といった感じで、今となっては彼女の古めかしい悪女ぶりが目立ってしまう。
ところが、ワイラー、デイビスの集大成となった名作『偽りの花園』(41)はゴールドウィン製作によるもの。その意味では、やはりゴールドウィンの力は大きかったのだろう。
ところで、数年前にキム・カーンズが歌った「ベティ・デイビスの瞳」という曲が大ヒットしたが、『何がジェーンに起ったか?』(62)の老婆役で、デイビスと初対面してしまった自分にとっては、何かしっくりこないところがあった。ところが、彼女が最も光り輝いていた頃のこうした映画を見ると、いまさらながらその歌詞に納得させられた。思えば彼女は“強い女”の先駆けだったのかもしれない。
【今の一言】ゴールドウィンの評伝『虹を掴んだ男』によると、ワイラーは『嵐ヶ丘』を、マール・オベロンではなく、デイビス主演で撮りたかったらしい。確かに、彼が作る冷徹な映画のヒロイン像にデイビスは合っていたのだろう。
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