田中雄二の「映画の王様」

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『明日になれば他人』

2019-02-27 06:09:59 | 1950年代小型パンフレット
『明日になれば他人』(62)(1991.9.9.)



 かつて巨匠クルーガー監督(エドワード・G・ロビンソン)と組んでアカデミー賞まで獲得した俳優のアンドロス(カーク・ダグラス)。今はアルコール中毒で療養所にいる彼に、クルーガーからローマでの大作製作を手伝えとの連絡が入る。
 
 『巴里のアメリカ人』(51)を撮ったビンセント・ミネリによる“ローマのアメリカ人”である。とはいえ、前者にあった明るさは影を潜め、この映画を覆うトーンは暗く苦いものになっている。

 それは、描かれたのが映画界の舞台裏であり、ハリウッドの監督がイタリアで映画を撮ることを都落ちのように考えているのが見え隠れするせいもある(演じるロビンソンがさすがにうまい)。

 また、この映画が作られた頃は、テレビの台頭で娯楽の王者から退き始めたハリウッド映画が暗中模索をしていた時期でもある。つまり、やがて開き直ったようなニューシネマが登場するまでの“谷の状態”と、この映画が描いた世界がぴたりと重なって見えるのだ。

カーク・ダグラスのプロフィール↓


エドワード・G・ロビンソンのプロフィール↓
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