漫画家の水島新司氏が引退を発表した。水島氏の最大の功績と言えば、『ドカベン』『大甲子園』の舞台は高校野球だが、例えば、『男どアホウ甲子園』の後半、『野球狂の詩』『あぶさん』『ドカベン プロ野球編』などで、漫画と現実のプロ野球の世界をリンクさせて描いたところだろう。
そこで、彼が生み出した藤村甲子園、岩田鉄五郎、水原勇気、景浦安武、山田太郎、岩鬼正美といった個性的かつ魅力的なキャラクターが、実在の球団や選手たちと絡む様子は、読んでいて本当に楽しかった。
また、清原和博が「山田から4番打者の心得を学んだ」と語ったことから、『ドカベン プロ野球編』で山田は西武に入団し、岩鬼は水島氏の贔屓チームのダイエーへ、殿馬一人は、イチローがチームメートになりたいと希望したことからオリックスに、といった具合に、本物の選手たちと水島氏が“キャッチボール”をしていた様子も面白い。
このうち、『ドカベン』と『野球狂の詩』はアニメのイメージも強いが、実はどちらも実写映画化されている。
『ドカベン』(77・東映)は、『トラック野郎』シリーズなどの鈴木則文が監督し、永島敏行が、山田を野球部に誘う長島徹役でデビューした。山田(橋本三智弘)、岩鬼(高品正広)のほかは、殿馬一人(川谷拓三)、じっちゃん(吉田義夫)、夏子はん(マッハ文朱)、 わびすけ(中村俊男)が原作のイメージに近いか。徳川家康監督役で水島氏も顔を出す。併映は『恐竜・怪鳥の伝説』という特撮映画だった。
『野球狂の詩』(77・日活)の監督は加藤彰。女性投手・水原勇気(木之内みどり)、東京メッツの老エース岩田鉄五郎(小池朝雄)、監督の五利一平(桑山正一)、スカウトの尻間専太郎(谷啓)、捕手の武藤(鶴田忍)、阪神の力道玄馬(丹古母鬼馬二)と、かなり原作のイメージに近い配役がなされた。本人役で野村克也も顔を出す。プレー場面が稚拙なのはご愛嬌。当時ロマンポルノを作っていた日活がこの映画を作ったのは意外だった。
神宮球場『野球狂の詩』
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