『マーヴェリック』(94)(1994.12.8.目黒シネマ)
最近は、ビデオの普及もあり、存在自体が危機的な状況にある名画座で久しぶりに映画を見た。この映画は公開されて間もないものだったが、今やロードショー(この言葉も死語に近いか…)で見逃したらビデオで、が当たり前になっているから、ちょっと複雑な思いもした。
ところで、この映画の監督はリチャード・ドナーだから、当然ノーマークではなかったのだが、メル・ギブソン主演と聞いて、彼らが作ってきた『リーサル・ウエポン』シリーズのよしみで作られた西部劇という印象を持たされ、今まで見ずにいた。
ところが、見終わった今は、見逃さなくてよかったと思えるような快作に仕上がっていたのが何ともうれしい。やはり贔屓の監督の映画には目を通さねば…と反省させられた。
何より、テレビドラマ出身のドナーが『スーパーマン』(78)同様、オリジナルのテレビドラマに対する愛着を込めつつ、新たな映画として仕上げたところに好感が持てたし、脚本のウィリアム・ゴールドマン、撮影のビルモス・ジグモンドが久しぶりに示した名人芸、ちょっとキャサリン・ヘプバーンを思わせるような新たな魅力を発揮したジョディ・フォスターも見られた。
加えて、オリジナルのドラマ「マーベリック」のジェームズ・ガーナーをキーパーソンとして出すあたりの、遊び心を含んだオマージュの捧げ方が何ともいい。他にも、「ララミー牧場」のロバート・フラー等、かつてのテレビヒーローたちもカメオ出演していたのだから、念がいっている。
そして、様々な事情から、クリント・イーストウッドの『許されざる者』(92)やケビン・コスナーの『ワイアット・アープ』(94)といった最近の西部劇が、屈折だらけの暗いものになってしまうことを考えると、この映画の、楽しさに徹した作りは今時貴重である。中でも『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90)をパロディにしたような、グラハム・グリーンのインディアンは傑作だった。
ストーリー的には、同じくポーカーを扱った『テキサスの五人の仲間』(66)や『スティング』(73)などと比べると、途中で落ちが分かってしまうところもあるが、今回は、作り方によっては、まだまだ楽しい西部劇が出来る可能性を示してくれたことを素直に喜びたいと思う。