田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『アニーよ銃をとれ』

2020-12-13 08:09:48 | 映画いろいろ

 ここにもバッファロー・ビルが登場する『アニーよ銃をとれ』(50)。最初にこの映画の一場面を見たのは、『ザッツ・エンタテインメントPART2』(76)の中でだった。

 実在の女性ガンマンで、ワイルド・ウエスト・ショーに参加したアニー・オークリーの物語に材を取ったミュージカル西部劇。

 監督はジョージ・シドニー、脚本は後にベストセラー作家となったシドニィ・シェルダン、音楽はアービング・バーリンで、リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世が製作したブロードウェーミュージカルが基になっている。

 主なキャストは、アニー・オークレイ(ベティ・ハットン)、フランク・バトラー(ハワード・キール)、バッファロー・ビル(ルイス・カルハーン)、酋長シッティング・ブル(J・キャロル・ネイシュ)、パウニー・ビル(エドワード・アーノルド)、チャーリー・ダベンポート(キーナン・ウィン)。ネイシュはアイリッシュだが、『大酋長』(54)でもブルを演じている。

 アニー役は、当初はジュディ・ガーランドがキャスティングされていたが、精神不安定のため降板し、ハットンが代役として演じた。

 この映画の劇中歌「ショウほど素敵な商売はない(There's No Business Like Show Business)」が独立し、同名映画が54年に製作され、ブロードウェーでアニーを演じたエセル・マーマンが主演した。マーマンは映画版でアニーを演じたハットンを随分といじめたらしい。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ビッグ・アメリカン』

2020-12-13 07:50:40 | 映画いろいろ

 さて、バッファロー・ビルは、さまざまな映画に登場するが、『西部の王者』(44)とは対照的な描き方で、対で見ると面白そうなのが、ロバート・アルトマン監督の『ビッグ・アメリカン』だ。

『ビッグ・アメリカン』(76)(1981.4.5.)

 西部開拓時代の伝説の人物は、実際とはかなり違う姿で、英雄として今に語り継がれている者が多い。そうした人物たちの神話を、ひっくり返し始めたのは、『明日に向って撃て!』(69)の多少ズッコケたブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)や、『ドク・ホリディ』(71)の冴えないドク(ハリス・ユーリン)などが作られたニューシネマの頃だろう。それらを見ながら、英雄伝を崩してほしくないと思う半面、彼らのカッコ悪さを見て、親近感を抱いたところもある。

 この映画も、皮肉屋のロバート・アルトマンが、西部の英雄の一人であるバファロー・ビル・コディ(ポール・ニューマン)を、興行師、タレントや芸人の類として描いている。このアルトマン流のビルは、ひたすら富と名声をほしがる、ヒーローとしてはちょっと首をひねりたくなるような男で、対照的に登場するインディアンの酋長シッティング・ブル(フランク・カックィッツ)のような威厳もないが、とても人間的ではある。

 それは、ブルの幻影とビルが語り合うシーンに象徴される。バファロー・ビルは、作家のネッド・バントライン(バート・ランカスター)や、民衆、引いてはアメリカが作り上げた虚像に過ぎないのだから、結局は孤独なのである。そう考えさせられるところが、アルトマン流の皮肉がぴりっと効いている証拠なのだ。


『ロバート・アルトマン ハリウッドで最も嫌われ、そして愛された男』https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f76299b5f2e2a780b177963da2a89000

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビデオ通話で西部劇談議『西部の王者』

2020-12-13 07:35:40 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

『西部の王者』(44)

 

 ワイルド・ウエスト・ショーの創設者バッファロー・ビル・コディ(ジョエル・マックリー)の後半生を描いた西部劇。監督はウィリアム・A・ウェルマン。

 騎兵隊のスカウト(偵察)、バファローハンター、ワイルド・ウェスト・ショーの創設という、ビルの変転の中に、シャイアン族のイエローハンド(アンソニー・クイン)との友情と一騎討ち、妻(モーリン・オハラ)との愛、ウォーボネット・クリークでの騎兵隊対インディアンの激しい戦い、ワイルド・ウェスト・ショーといったエポックな出来事を描き込んでいる。

 特に、ウォーボネット・クリークの戦いのシーンの壮絶さには、ウェルマンの監督としての力量の大きさが示され、レオン・シャムロイの見事なカメラワーク、スタントマンたちのアクションには目を見張るものがある。何より、『風と共に去りぬ』(39)もそうだが、戦前にこんなにも色鮮やかなカラー映画が製作されていたことに、改めて驚かされた。

 この映画は、ビルを、インディアン討伐戦に参加したことを悔い、贖罪の念を抱き、インディアンを擁護するヒューマニストとして、また、妻との愛を貫くロマンチストとして、そして西部の英雄として描いている。これまた、戦前の映画にしては随分進歩的だと言うべきか。

 ちなみに、教師をしているイエローハンドの妹(リンダ・ダーネル)=インディアンが、文盲の白人のビルに手紙の書き方を教えるシーンまであったのには驚いた。

 ただ、恐らく事実とは大きく異なるのだろうし、今ならインディアン討伐やバファローの乱獲の罪に問われ、決して英雄としては描かれないはずだが、クラシックな劇映画として面白さ、という点から見れば、なかなか良く出来ていると思う。

 着こなしが難しいバックスキンの上着が似合い、長髪をなびかせる長身のマックリーがかっこいいが、ラストの老いてショーを引退する姿もいい。そしてオハラが美しい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする