『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023.6.2.ソニー・ピクチャーズ試写室)
ピーター・パーカーの遺志を継いだ少年マイルス・モラレス(シャメイク・ムーア)を主人公に新たなスパイダーマンの誕生を描き、アカデミー長編アニメーション賞を受賞した『スパイダーマン スパイダーバース』(18)の続編。
マルチバースを自由に移動できるようになった世界。マイルスは久々に姿を現したグウェン(ヘイリー・スタインフェルド)に導かれ、あるユニバースを訪れる。そこにはスパイダーマン2099ことミゲル・オハラ(オスカー・アイザック)やピーター・B・パーカー(ジェイク・ジョンソン)ら、さまざまなユニバースから選ばれたスパイダーマンたちが集結していた。
愛する人と世界を同時に救うことができないというスパイダーマンの哀しき運命を突きつけられるマイルスだったが、それでも両方を守り抜くことを誓う。しかし運命を変えようとする彼の前に無数のスパイダーマンが立ちはだかり、スパイダーマン同士の戦いが幕を開ける。
前作を見ていないので、最初は何が何だか分からない状態に陥ったが、人物関係などは「多分こういうことなのだろう」という想像を交えながら、理解に努めた。その間、目まぐるしい展開とアクション、マルチバースによる雑多な登場人物の判別に悩まされながら、やっと追いついてきたと思ったら、また「続く」となった…。
いやはや、マーベルやDC、そして先の『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』、そしてこの映画と、つながりのある作品を見ていることが前提なのだから、1本の独立した映画として見られないのでは困ってしまう。みんながみんな、全ての作品を見て、つながりを理解しているというわけでもあるまいに。
だから、まるでサイレント期のシリアル(連続活劇)に戻ったかのような、この手の流行はあまり喜ばしくない気がするし、何でもありのマルチバースという発想は、作り手にとっては便利なのかもしれないが、見る方は混乱する。
ただ、アメコミの再現という意味では、実写版を超えていると言っても過言ではない。そして、この後を引く終わり方を見せられると、何だかんだと文句を言いながら、結末を知りたくなるのだから、見事に術中にはまっている。