田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

アイバン・ライトマンの映画 プロデュース作その2

2022-02-15 11:35:17 | 映画いろいろ

 

『マイレージ、マイライフ』(09)(2010.1.30.パラマウント試写室)

親父よりも息子の方がシニカル

 原題は「Up In the Air=空(飛行機)の上から」。まずオープニングの全米各地の空撮が印象的。主人公はジョージ・クルーニー扮する1年のほとんどを出張に費やす敏腕リストラ宣告人だが、このオープニングは彼の上から目線の象徴でもあるのだろうか。

 面倒くさいから独身。やたらと形にこだわり、スマートさが売り物という嫌な奴だが、ネット社会に反発する昔気質なところもある。まあユニークなキャラクターではある。

 そんな彼に、旅先で知り合った同種のキャリアウーマン(ベラ・ファーミガ=くせ者)と、実地研修のために行動を共にするネット世代の若者(アナ・ケンドリック=若い頃のトム・クルーズが演じた上昇志向者の女性版を思わせる)が絡んで、変化が訪れるというお決まりのパターンが展開される。

 リストラ、失業、転職、ネット社会、シングルライフの自由と孤独、ポイント生活、依存症、ワークライフバランスといった現代社会が抱えるさまざまな問題が描き込まれているのだが、ハートウォームとシニカルの間を行ったり来たりする構成なので、感情移入しずらいのが難点。最近の映画はどっちつかずのこうしたパターンが多い。

 監督のジェイソン・ライトマンは、『ゴーストバスターズ』(84)『デイヴ』(93)を撮ったアイバンの息子だが、親父よりも息子の方がシニカルな視点で映画を撮っている。これは世代の違いなのか、それとも時代の変化故なのか。


『ヒッチコック」(12)2013.3.28.(フォックス試写室)

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/35938
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/34302

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アイバン・ライトマンの映画『キンダガートン・コップ』

2022-02-15 10:28:50 | 映画いろいろ

『キンダガートン・コップ』(90)(1991.7.23.日劇プラザ)

 麻薬密売組織のボスを追う、ロス市警の鬼刑事キンブル(アーノルド・シュワルツェネッガー)が、ひょんなことから幼稚園の先生になる羽目に…。

 シュワルツェネッガーがコメディに初挑戦した、同じくアイバン・ライトマン監督の『ツインズ』(88)を見たときに、「勝負はこれから」と書いた覚えがあるが、その後の数年間で、良かれ悪しかれ、取りあえずは見事にイメージチェンジに成功したといってもいいだろう(われわれ日本人は、CMでのコミカルな姿を見慣れているせいもあるが…)。

 つまり、ご自慢の肉体を誇示しなくても、面白い話なら、そこそこ見られる役者として存在し始めたのだ。それが証拠に、この映画もライトマンのしたたかな演出に助けられているとはいえ、子どもが中心の中でも存在感はしっかりと示せていたし、肉体よりも精神の大切さを前面に押し出しているところに、この映画に対する彼の思いが感じられる。

 その点では、頭のいい人なのだろうし、何かと比較されるシルベスター・スタローンが、何だか哀れに見えてきてしまうのだ。

 ところで、アメリカの子役のうまさには、毎回感心させられるが、今回は、彼らが両親に吐く本音に思わずドキッとさせられた。子どもだと思ってばかにしているとえらいことになる。彼らの方が、よっぽどシビアに大人を観察しているのだから。

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「午後のロードショー」『ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT』

2022-02-15 07:24:17 | ブラウン管の映画館

『ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT』(06)

「BSシネマ」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5dcbe841a210aba81b6c2be3421972e7

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アイバン・ライトマンの映画『ツインズ』

2022-02-15 07:18:06 | 映画いろいろ

『ツインズ』(88)(1989.10.13.丸の内ルーブル)

 頭脳、肉体ともに優れた人間を作るという極秘実験で生まれたジュリアス(アーノルド・シュワルツェネッガー)。孤島で研究対象として育てられ、成長したジュリアスは、35歳の誕生日に双子の弟(ダニー・デビート)がいることを知る。だが、ようやく会えた弟はジュリアスとは似ても似つかぬ駄目人間だった。
 
 この映画のことを最初に聞いたときは、ああシュワルツェネッガーも、ついにアクション映画からの脱皮を試み始めたか、所詮、一貫してドタバタコメディやアクションをやり続ける俳優はいないのかと思い、少々残念な気がしていた。

 とはいえ、この映画はデビートの助けが大ではあるが、そこそこ楽しめるものに仕上がっていた。いい意味で、監督アイバン・ライトマンのしたたかさを感じた。

 また、この映画とほぼ同時期に『レインマン』(88)『ミッドナイト・ラン』(88)といった“相棒ロードムービー”の傑作が作られ、とりわけ、シリアスとコメディの違いこそあれ、『レインマン』とは設定が驚くほどよく似ていた。

 そこには、アメリカが今再び、家族の絆や兄弟愛といったものを見つめ直そうする姿勢が強く感じられて、興味深いものがあった。そこに漂う温かさが、この映画を単なる際物コメディの域から救っていると言ってもいいだろう。

 さて、シュワルツェネッガーは、この後、アクション俳優から何でもこなせる俳優へと変身できるのだろうか。この映画だけではまだその答えは出ていないような気がする。


 ところで、劇中、シルベスター・スタローンの『ランボー3/怒りのアフガン』(88)のポスターが映り、ラストのクレジットにも、スタローンに対する皮肉とも感謝の意とも取れるコメントが記されていた。

 ちょうどタイミングよく、テレビの「金曜ロードショー」で『ランボー3』をやっていたので、見てみたのだが、明らかにスタローンが無理をしているように見えた。あの筋骨隆々の体はもはや異常だ。薬を使っているといううわさもあながち間違ってはいないのだろう。

 思えば『ロッキー』以降のスタローンからは、まるで現代の豊臣秀吉の如く、成り上がり者が無理をして突っ張るような悲しさが感じられる。

 定着してしまったイメージに対して、もはや肉体を誇示することでしか自己表現ができない空しさ、人間味の薄い強引な映画作りも目立ち、私生活でのゴタゴタも含めると、あまりいいイメージは浮かんでこない。

 そう考えると、シュワルツェネッガーの方が器用で、生き方がうまいと言えるのかもしれない。「もう昔には戻れないぜ」というスタローンの嘆きが聞こえてきそうで、何やら切なくなってしまった。

【今の一言】この2人が、『エクスペンダブルズ』(10)でのカメオ共演、『エクスペンダブルズ2』(12)での本格的な共演を経て、『大脱出』(13)ではついにW主演を果たした。時代は変わるのだ。だから人生は面白い?

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アイバン・ライトマンの映画 監督作

2022-02-15 00:09:42 | 映画いろいろ

ベストワンは『デーヴ』

『ゴーストバスターズ』(84)『ゴーストバスターズ2』(89)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/36a29bb6b28ecdaef9aefedaa45296a8

『デーヴ』(93)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/06810d98456a40838a5ba60eb44f1615

『エボリューション』(01)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9f05e73de128768acf6f2c0ce46f0149

『ドラフト・デイ』(14)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c4ae540d0a56c52f759c0056e61c6d16

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アイバン・ライトマンの映画 プロデュース作

2022-02-14 22:41:37 | 映画いろいろ

 アイバン・ライトマン死去。最後の映画が、息子のジェイソンと一緒に作った『ゴーストバスターズ/アフターライフ』だったのだから、いい人生だったのではないか。初めて彼を知ったのは、彼が製作し、ジョン・ランディスが監督をしたこの映画だった。

『アニマル・ハウス」(78)(1980.5.4.三軒茶屋映画.併映『アメリカン・グラフィティ』『天国から来たチャンピオン』)

 1962年。名門フェイバー大学の新入生ラリー(トム・ハルス)たちは学生友愛会のデルタ・ハウスに入会するが、そこはブルート(ジョン・ベルーシ)、かわうそ(ティム・マシスン)など、くせ者集団の巣窟だった。学長(ジョン・バーノン)は、優等生集団のオメガ・ハウスを使ってデルタ・ハウスをつぶそうとするが…。

 めちゃくちゃな映画だが、こんなに笑ったのは久しぶりだった。これは劇場の雰囲気の影響もあったのだが、登場人物がそれぞれ個性的で、60年代初頭のまだ明るいアメリカがよく出ていたからだと思う。

 ラストの“その後の消息”は、今日一緒に見た『アメリカン・グラフィティ』のパロディだろう。それにしても、あのデブのブルートが上院議員とは、いやはや何とも笑える。遊んで騒げるのも学生の特権!

【今の一言】ちょうど自分も大学に入ったばかりのときで、大学の隣の駅にあった映画館で見たのだった。ただ、その後の自分の大学生活はこんなに楽しくはなかったが…。

『ベートーベン』(92)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f90a3420c310dcc28d67343c4b459e71

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/14b33d1b832eedcc3dca49ba4de039d6

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『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』をNetflixで再見

2022-02-14 12:05:28 | 映画いろいろ

 この映画に関しては、いろいろと分かってから見た2度目の方がよかった。主演の2人の好演(特に小松菜奈がいい)に加えて、肝はやはり、レトロな雰囲気の京都で繰り広げられるクラシカルな恋愛模様が、現代が舞台なのに、そうは見えない不思議な雰囲気を感じさせるところだろう。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/11aacb7071596e82efe9680f0003d89e

『君の膵臓がたべたい』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』とは兄弟映画か
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/954c56b02eff903ec700e1bad94523f2

 

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戦争秘話『広瀬中佐の銅像』『灰の男』

2022-02-14 09:40:47 | ブックレビュー

『広瀬中佐の銅像』もりた なるお(新人物往来社刊)
(2006.5. 26.)

 先日閉館した交通博物館前(旧万世橋駅前)に建っていた日露戦争の英雄・広瀬中佐の銅像。だが、第二次大戦後“戦犯銅像”として撤去される。そして、その後なぜか銅像は行方不明に…。美術界の裏側を描きながら、ちょっとした謎解きを加えるというのは、筆者の名短編「真贋の構図」と同じ手法だ。ただし、老齢故か筆致が緩んだ感じがするのが残念だった。

 併録された『予科練の七つボタン』はウィリアム・サローヤンの『人間喜劇』を思わせる戦中話。この人の本領はやはり短編かと思わされる。


『灰の男』小杉健治(講談社文庫)
(2006.8.5.)

 戦争に翻弄される対照的な2人の主人公の人生(戦中、戦後、現代)を通して、昭和20年の東京大空襲にまつわる謎を追った一種のミステリー。前半の下町や庶民の生活描写が秀逸なだけに、後半に提起される天皇や軍部の責任問題が浮いてしまうのが惜しい。


『沈黙の土俵』小杉健治(ケイブンシャ文庫)
(2009.9.28.)

 15年前の殺人事件に関係する5人の男女の謎とそれを追うフリーライターと女性弁護士の恋が縦糸、そこに相撲界に入った若者の出世物語が横糸で交錯する。この手法は、同じ作者の『土俵を走る殺意』の姉妹編のような趣。ミステリーとしてはいささか弱いが、相撲とミステリーを融合させた点がユニーク。取り組みの描写もうまい。

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『五月十五日のチャップリン』(川田武)

2022-02-14 08:37:37 | ブックレビュー

『五月十五日のチャップリン』川田武(光文社文庫)
(2005.5.23.)

 昭和初期に起きた5.15事件と、来日中だったチャップリンとのかかわりには結構謎が多く、日下圭介の『チャップリンを撃て』、千葉伸夫の『チャプリンが日本を走った』などを生んでいるが、この小説はチャップリンとヒトラーが実は超能力で結びついていた? というオカルティズムを用いて2人をコインの裏表として描いた異色作。

 とはいえ、これは少々強引な力業でルール違反だという気もするが…。何しろ、この手を使ったら何でもOKじゃないか。淀川長治さんとおぼしき評論家が登場するのはご愛嬌。

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「午後のロードショー」『フランティック』

2022-02-14 07:18:13 | ブラウン管の映画館

『フランティック』(88)(1991.5.15.月曜ロードショー) 

 パリを舞台に、失踪した妻を追う男の姿を描く。ロマン・ポランスキーが、これほど素直に“ヒッチコックしている”とはつゆ知らず、どうせまた癖のある映画を撮ったのだろうと、勝手に思い込んで今まで見ずにいたのだが、見事に予想は外れ、今は、久しぶりに面白いサスペンスを見せてもらったという喜びを感じている。

 ただ、いかにもポランスキーというところもあった。パリで生まれ、ポーランドに移り、イギリス、アメリカを経て、再びヨーロッパへと舞い戻った放浪するユダヤ人の彼が抱く、どこにいても異邦人という孤独や恐れが、この映画の、パリで一人ぼっちになるアメリカ人の主人公(ハリソン・フォード)の心情に反映されている気がする。

 だから、これはやはりポランスキーが持つ屈折がなければ生まれない、描けない世界だったのではないかと思うのだ。すなわち、個人が持つ屈折も、描き方次第では、サスペンス劇に昇華させることも可能だということ。その手本がここにある。

 

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