『1001秒の恐怖映画』井上雅彦(創元推理文庫)
(2005.9.9.)
怪奇、SF映画をモチーフにしたショートショートと映画の解説付き。作者が同年代だけに映画を観た背景や趣味がかぶる面白さあり。表紙の和田誠の絵もGOOD。
(後記)この本のルーツとも呼ぶべき連作短編集『スクリーンの異形-骸骨城-』(角川ホラー文庫)も読んでみたが、こちらは少々趣味性が強すぎてあまり入り込めなかった。ただ『第三の男』の後日談として書かれた「ライム・ライム」はちょっと面白かったが。
井上雅彦編の短編ホラー集、異形コレクション(光文社文庫)
(2005.9.14.)
バラエティーに富んだ玉石混交の短編の中で、クラシック映画を巧みに盛り込んだ田中文雄の懐古趣味が気に入った。以下、このシリーズでのリストを。
01年『幽霊船』所収/「シーホークの残照(「猫船」)」生者と死者の友情『シーホーク』
02年『キネマ・キネマ』所収/「左利きの大石内蔵助」座敷童と野外映画『忠臣蔵』
03年『獣人』所収/「浅草霊歌」哀しい父子と『獣人雪男』
03年『アジアン怪綺』所収/「ふたりの李香蘭」満映、李香蘭、川嶋芳子
『邪神たちの2・26』(学習研究社)
(2005.10.12.)
2・26事件にクトゥルー伝説を絡ませたホラー小説だったが、正直なところ期待外れ。SFの形を借りて事件を正当化したいのか、筆者の狙いがいまひとつはっきりしない。
『冬の旅殺人事件』(廣済堂出版刊)
宇都宮をモデルにしたと思われる北関東の城下町を舞台にした推理小説。 こちらも推理小説としてはいささか弱い。この人は短編の方がうまいような気がする。まあ今回は、北品川というなじみの土地が登場してきたので、ちょいとうれしかったのだが。
『コガネムシの棲む町』(徳間文庫)
(2005.10.14.)
「コガネムシの棲む町」「ハメルンの笛がきこえる」「鰐を飼う女」「鴉猫」「魔女の系譜」「死人起こし」「魚怪」「汽笛」「神遣い」からなる短編集。
表題作はファンタジーの色が強いが、ほかはモダンホラーの味わい。通読してくるとどうやら匂いと水の描写にこだわりがあることに気づく。とはいえ、やはりこの人は短編の方がいい。一押しは「汽笛」。
『蔦に覆われた棺』(集英社文庫)
蔦のからむ西洋館、少年の亡霊、憑依…。西洋のゴシック・ホラーの要素を日本に置き換えたモダン・ホラーの中編。後半にこの頃はやっていたスプラッター・ムービーの影響がみられる。
『夏の旅人』(ハヤカワ文庫)
(2005.11.8.)
初期の短編集。『トワイライトゾーン』を連想させる連作といったら誉めすぎか。
75..約束(生霊)
77..海賊船長(ファンタジー)エロール・フリン
78..黄昏屋敷(屋敷霊)
76..処刑(SF)
76..さすらい(夢盗人)
76.故郷に死す(ロボット)レイ・ブラッドベリ風
74.夏の旅人(トラウマ)
『猫路』(集英社文庫)
江戸時代の用水路が隠し味の現代怪猫話。さらりと読めるがいいのか悪いのか。