みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

パルムの僧院

2011年09月23日 | 
久しぶりの読書感想。
この夏、スタンダールの「パルムの僧院」を読んでました。
20年ぶりの再読。細部はほとんど忘れてしまっていたけれど、ついつい先に先に読み進めたくなる面白さだった。
岩波文庫の上下巻で750ページに及ぶ、長い小説だったけれど、長さは気にならない。楽しい読書の日々でした。

"優雅で美しく無垢"な青年ファブリス、そして彼をとりまく人物たちの波瀾万丈の物語。
19世紀初頭、ナポレオン戦争後の北イタリア・パルマの宮廷を舞台に、恋、政争、冒険が繰り広げらる。
面白くないわけがない。(盛り沢山すぎる気もするけど)

やはり、ファブリスとクレリアとの恋の行方が、目が離せないのだけど、
しかし、ラストは、もう少しなんとかならなかったのかな・・・。
深すぎる恋愛は幸福なのか不幸なのか、よく分からず・・・。

クレリアが、敬虔な信仰心とファブリスへの恋心、言わば、聖なる愛と俗なる愛の狭間で揺れ動く感じがいい。
信仰という縛りによって、一層美く、魅力を増すクレリア。

ファブリスが、結局、華麗で才知あふれるサンセヴェリナ公爵夫人ではなく、慎み深く、それでいて情熱的なクレリアに心を奪われるのは、分かる気がする。
と言っても、サンセヴェリナ公爵夫人の魅力がクレリアに劣るかという、そんなことはなく、実に天晴れで、素晴らしい!
金にも権力にも惑わされず、自身の情熱に忠実に生きる人間の潔いこと!

それにしても、2人の魅力的な女性に比べると、ファブリスって何なんだろう???
彼の行動は、あまりに無鉄砲、向こう見ずな感じで、少々、付いていきかねる・・・。
自分は男目線で読むから、そう感じるんだろうか?女性の視点だとどうなんだろう・・・。

とにかく、一生に一度はオーケストラを生で聴いておいて損はないように、パルム、お勧めと思われますね。
ロマン派の音楽を理解する上でも、いい小説ではないかな?

=====
余談1
やっぱりイタリアの気質は好きだなあ!
自分のイタリア贔屓の理由の一端はこの小説にあったんだなあと、合点したのだった。
いつか、美しいコモ湖も訪ねてみたい・・・。

=====
余談2
そもそも、再読しようと思ったのは、
日本百名山を著わした深田久弥が「パルムの僧院」愛読していたと知ったから。
確かに、本作のコモ湖畔の荘重な朝の情景の描写などは、アルプスの高峰で迎える厳かな朝の情景に通じるものがあり、深田氏が気にいる理由も分かる気がする。

=====
余談3
あと、たまたまこの季節咲いているサルスベリの花から
サルスベリ→サンセヴェリナ を連想したから、ということもありました。
(変な奴・・・。)

その後、読了記念に、アイスクリームの「パルム」と観葉植物の「サンセベリア」を買い求めた。
こうやって、人生は気まぐれに展開していく・・・。(笑)
自分の未来はどこに向かって進んでいくのだろうか・・・。

パルムの僧院〈上〉 (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店


パルムの僧院 (上) (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする