みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

北村薫「六の宮の姫君」

2008年08月12日 | 
知的な好奇心をくすぐられて、とても楽しめる話だった。
芥川龍之介の「六の宮の姫君」がなぜ書かれたのか?芥川と菊池寛の交流を軸に、いろんな文献を元に解き明かされていく。ミステリー仕立て。
芥川や菊池の性格への考察や、文章表現の妙(足し算的な文章 or 掛け算的な文章があったり・・・)についてやらに話は及び、ふむふむ、へ~!と感心しながらの読書となる。
作者の文学への造詣の深さ、博学ぶりには、ただただ恐れ入る。よくぞここまで、調べ上げたなあ!

何より、主人公の大学4年生の私がいい感じ。気立てがよくて、頭がよくて、さっぱりしてて・・・。もしも来世で、優秀な頭脳をもって、生まれ変われるのなら、こんな子とお付き合いしたかも。

一人称で、テンポ良く綴られた文体もいい。爽やかさ、柔らかさが、程よく混じってて、読み心地がいい。
加えて、ところどころ現れる名文句もいいではないか。
「誰もが毎日、何かを失い、何かを得ては生きていく」
話が締まる。

本書、文学を専攻する学生さんには必読ではないかな。卒業論文、かくあるべし。
文壇の重鎮的な作家たちが、いろいろ登場して、作風とか知っていると、より楽しめそう。
文学史上の名作と呼ばれる作品、いろいろ読んでみたくなるなあ。昔、愛読した武者小路実篤も出てきて、嬉しい。

英語で綴られた副題の「人生の門出」には、「諸君、流されるだけではなく、意志を持って生きようではないか!」というメッセージが込められてそう。
「六の宮の姫君」のように、ならぬように、意志を持って、生きるべし。だろうか。

六の宮の姫君 (創元推理文庫)
北村 薫
東京創元社

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