私がAKB48のファンになって最初の推しメンは浦野一美だった。彼女が出演した舞台は、行きがかり上、ほとんど観ている。今回も初日に観劇した。
会場の萬劇場は、大塚駅そばのビル、地下深く階段で潜って行く文字通りの地下劇場だ。収容人数は200名くらいだろうか。私は当日券で入ったが、7列目の、よく見える良席だった。後方にはまだ空席があった。
自殺願望者が集まる「自殺の館」という古い洋館。そこに紛れ込んだ指名手配犯が、自殺願望者達に死ぬのを思い止まるように説得して行くという1幕芝居だった。浦野さんは館の主人の助手「葛西さん」を演じていたが、主演の指名手配犯の次に台詞も多く、非常に重要な役だった。
舞台全体としての満足度は、正直言ってもう一歩。
コメディなのだが、台詞のテンポが少し悪い気がした。前の人の台詞にかぶせ気味にポンポン進んでいくのが気持ちいいと思うのだが、一瞬沈黙がある場面が目立った。それが演出なのか、初日のため稽古不足なのかはわからないが、私としては残念だった。笑える場面も多かったのだが、観客が同時にドッと沸くという感じではなかったのも、テンポの悪さのせいではなかったか。
それから、途中からの展開はだいたい予想される通りの予定調和。「道徳コメディ」と銘打っているので、不道徳な結末にはならないだろうとは判っていたが、もうひとひねり欲しかった。
主演の指名手配犯役の役者さんは、個性的で演技も達者、堂々の主演ぶりだったと思う。それから、館の主人はいかにも気持ち悪い怪演。
そんな中、浦野さんは、これまでの舞台とは全然違った役柄だった。館の主人の指示に従い、自殺願望者達を厳しく管理するクールな助手という役作りがしっかりできていたと思う。可愛らしさとか華やかさはないが、報酬のためと割り切って、与えられた役割を冷静にこなすヒールぶりは小気味よかった。
相変わらず脚が細い。誇張ではなく大和田南那の3分の1くらいしかない。今回は黒いタイツを穿いた上にスカートという姿で、生脚は拝めなかった。髪もひっつめていて表情も厳しく、最初に登場した時は別の役者さんかと疑ったくらいだった。それだけ役作りをしていたということだろう。
カーテンコールではいつもの浦野さんだった。
今日が初舞台という若い男優さんを「童貞なんだって?」といじったり(劇中で彼の役がそういう設定だったことを踏まえたもの)、最後に何か言いたい人?という呼びかけに「ハイ、楽しかったです。」と大声で応じたあと挨拶をして、それまでのグダグダした雰囲気を締めたり。既にベテランの舞台女優の域に達している、手慣れた振る舞いだった。
こういう仕事を楽しんでいる浦野さんを、これからもこっそり見続けていきたいと思った。
『カンタンには死にたくない!(仮)』は2月28日まで上演中。
これまでの浦野一美の舞台の観劇記は以下。
『中野ブロンディーズ』
『キマズゲ』
『泉鏡花』
『DUMP SHOW』
『中野ブロンディーズ(再演)』
『GO! JET! GO! GO!』
『眠らぬ町の王子様』
『博士と太郎の異常な愛情』
『浅草あちゃらか』
『DAY IN A SUN~1日だけ日の目を見る日』
『GO! JET! GO! GO!』(再演)
会場の萬劇場は、大塚駅そばのビル、地下深く階段で潜って行く文字通りの地下劇場だ。収容人数は200名くらいだろうか。私は当日券で入ったが、7列目の、よく見える良席だった。後方にはまだ空席があった。
自殺願望者が集まる「自殺の館」という古い洋館。そこに紛れ込んだ指名手配犯が、自殺願望者達に死ぬのを思い止まるように説得して行くという1幕芝居だった。浦野さんは館の主人の助手「葛西さん」を演じていたが、主演の指名手配犯の次に台詞も多く、非常に重要な役だった。
舞台全体としての満足度は、正直言ってもう一歩。
コメディなのだが、台詞のテンポが少し悪い気がした。前の人の台詞にかぶせ気味にポンポン進んでいくのが気持ちいいと思うのだが、一瞬沈黙がある場面が目立った。それが演出なのか、初日のため稽古不足なのかはわからないが、私としては残念だった。笑える場面も多かったのだが、観客が同時にドッと沸くという感じではなかったのも、テンポの悪さのせいではなかったか。
それから、途中からの展開はだいたい予想される通りの予定調和。「道徳コメディ」と銘打っているので、不道徳な結末にはならないだろうとは判っていたが、もうひとひねり欲しかった。
主演の指名手配犯役の役者さんは、個性的で演技も達者、堂々の主演ぶりだったと思う。それから、館の主人はいかにも気持ち悪い怪演。
そんな中、浦野さんは、これまでの舞台とは全然違った役柄だった。館の主人の指示に従い、自殺願望者達を厳しく管理するクールな助手という役作りがしっかりできていたと思う。可愛らしさとか華やかさはないが、報酬のためと割り切って、与えられた役割を冷静にこなすヒールぶりは小気味よかった。
相変わらず脚が細い。誇張ではなく大和田南那の3分の1くらいしかない。今回は黒いタイツを穿いた上にスカートという姿で、生脚は拝めなかった。髪もひっつめていて表情も厳しく、最初に登場した時は別の役者さんかと疑ったくらいだった。それだけ役作りをしていたということだろう。
カーテンコールではいつもの浦野さんだった。
今日が初舞台という若い男優さんを「童貞なんだって?」といじったり(劇中で彼の役がそういう設定だったことを踏まえたもの)、最後に何か言いたい人?という呼びかけに「ハイ、楽しかったです。」と大声で応じたあと挨拶をして、それまでのグダグダした雰囲気を締めたり。既にベテランの舞台女優の域に達している、手慣れた振る舞いだった。
こういう仕事を楽しんでいる浦野さんを、これからもこっそり見続けていきたいと思った。
『カンタンには死にたくない!(仮)』は2月28日まで上演中。
これまでの浦野一美の舞台の観劇記は以下。
『中野ブロンディーズ』
『キマズゲ』
『泉鏡花』
『DUMP SHOW』
『中野ブロンディーズ(再演)』
『GO! JET! GO! GO!』
『眠らぬ町の王子様』
『博士と太郎の異常な愛情』
『浅草あちゃらか』
『DAY IN A SUN~1日だけ日の目を見る日』
『GO! JET! GO! GO!』(再演)