昨年のNHK大河ドラマ『いだてん』は低視聴率だったが、私は毎週楽しく見ていた。年末に総集編が放送されたので改めて見たが、1年間の物語が思い出され、改めてよいドラマだと思った。(本放送時にピエール瀧が演じていた足袋屋の前半シーンも、三宅弘城で撮り直してあった。)
日本人が初めてオリンピックに参加し、そして日本で初めてオリンピックを開催するまで、明治から昭和にかけての年月を描いた正に大河ドラマだ。前半の主役は金栗四三で、後半は田畑政治ということになっているが、全体を通して存在感があった中心人物は何と言っても嘉納治五郎だろう。優れた柔道家であり、国際的な知名度・人脈があり、オリンピックへの情熱は誰よりも深い。東京オリンピック開催を生きて見ることはできなかったが、田畑はじめ多くの人々が彼の悲願を実現させた。
もう一人の主人公は古今亭志ん生だろう。そもそもこのドラマの構成が、志ん生が弟子の五りんに語って聞かせる長い長い話(落語)ということになっていた。総集編の冒頭を見て気が付いた。その構成が分かりづらいとか、志ん生を演じたビートたけしの滑舌が悪いとか批判もあったが、その構成がドラマに立体感を与えていたのは事実だ。選手(金栗)や役員(田畑)といったインサイダーではなく、アウトサイダーである一般国民の視点を志ん生が体現していたのではないか。
オリンピックに対しては、批判的な視点が目立った。
「大規模な運動会」「平和の祭典」といった本来の理想に対して、時に政治に翻弄され、戦争により中止に追い込まれた史実をシニカルに描いていた。象徴的なのは1940年にオリンピックを開催するはずだった旧国立競技場で、学徒動員の出陣式が行われたシーンだった。
一方、「国を代表して出場」「国民の期待を背負う」ことの重圧、残酷さも、金栗四三、人見絹江、前畑秀子らのエピソードを通じて繰り返し描かれた。近年は「自分のために頑張る」「オリンピックを楽しむ」と語る選手も現れているが、好むと好まざるとを問わず背負わされている現実は変わらないのではないか。
前畑の重圧を知った田畑が、「頑張れ」と言わないように気を付けていたが、結局は有名な「前畑がんばれ」の大合唱に流されてしまうというシーンが象徴的だった。
娯楽性も高い中、考えさせることも多い、重厚で骨太なドラマだったと思う。
史実にはない役を杉咲花が好演していた。金栗に影響を受けて自分もオリンピック出場や女子選手の育成を目指したが、関東大震災で亡くなったシマ。シマの娘で、金栗の弟子である小松と結婚するりく。親子二役を一人で演じた。そしてりくの息子が五りんという設定だ。シマとりくが金栗と志ん生を繋いだ。
元AKB48の川栄李奈は五りんの恋人役をそつなくこなしていた。最終回ではシマのひ孫を出産していたが、その子はオリンピック選手になれるのだろうか。
2020年、いよいよ2度目の東京オリンピックだ。金メダルの個数とか、どうでもいい。平和とスポーツの祭典で、スポーツ本来の感動を数多く味わえることを願っている。
日本人が初めてオリンピックに参加し、そして日本で初めてオリンピックを開催するまで、明治から昭和にかけての年月を描いた正に大河ドラマだ。前半の主役は金栗四三で、後半は田畑政治ということになっているが、全体を通して存在感があった中心人物は何と言っても嘉納治五郎だろう。優れた柔道家であり、国際的な知名度・人脈があり、オリンピックへの情熱は誰よりも深い。東京オリンピック開催を生きて見ることはできなかったが、田畑はじめ多くの人々が彼の悲願を実現させた。
もう一人の主人公は古今亭志ん生だろう。そもそもこのドラマの構成が、志ん生が弟子の五りんに語って聞かせる長い長い話(落語)ということになっていた。総集編の冒頭を見て気が付いた。その構成が分かりづらいとか、志ん生を演じたビートたけしの滑舌が悪いとか批判もあったが、その構成がドラマに立体感を与えていたのは事実だ。選手(金栗)や役員(田畑)といったインサイダーではなく、アウトサイダーである一般国民の視点を志ん生が体現していたのではないか。
オリンピックに対しては、批判的な視点が目立った。
「大規模な運動会」「平和の祭典」といった本来の理想に対して、時に政治に翻弄され、戦争により中止に追い込まれた史実をシニカルに描いていた。象徴的なのは1940年にオリンピックを開催するはずだった旧国立競技場で、学徒動員の出陣式が行われたシーンだった。
一方、「国を代表して出場」「国民の期待を背負う」ことの重圧、残酷さも、金栗四三、人見絹江、前畑秀子らのエピソードを通じて繰り返し描かれた。近年は「自分のために頑張る」「オリンピックを楽しむ」と語る選手も現れているが、好むと好まざるとを問わず背負わされている現実は変わらないのではないか。
前畑の重圧を知った田畑が、「頑張れ」と言わないように気を付けていたが、結局は有名な「前畑がんばれ」の大合唱に流されてしまうというシーンが象徴的だった。
娯楽性も高い中、考えさせることも多い、重厚で骨太なドラマだったと思う。
史実にはない役を杉咲花が好演していた。金栗に影響を受けて自分もオリンピック出場や女子選手の育成を目指したが、関東大震災で亡くなったシマ。シマの娘で、金栗の弟子である小松と結婚するりく。親子二役を一人で演じた。そしてりくの息子が五りんという設定だ。シマとりくが金栗と志ん生を繋いだ。
元AKB48の川栄李奈は五りんの恋人役をそつなくこなしていた。最終回ではシマのひ孫を出産していたが、その子はオリンピック選手になれるのだろうか。
2020年、いよいよ2度目の東京オリンピックだ。金メダルの個数とか、どうでもいい。平和とスポーツの祭典で、スポーツ本来の感動を数多く味わえることを願っている。