『おかえり、モネ』は異色の朝ドラだったと思う。
登場人物の誰もが内面に葛藤を抱えていて、それを上手く表現できずに苦しんでいる。そんなドラマだった。言葉が少なく、声も小さいので、集中して画面を見て、セリフや演技の行間を読まないと内容がよく理解できない。見る人に緊張を強いるドラマだった。
そのため、「朝の忙しい時間には合わない」「朝から暗い話は勘弁」といった批判もあったようだが、それはドラマそのものの評価とは違うと思う。また、私もそうだが録画して夜見たり、オンデマンドで好きな時に見たりする人も多くなっており、放送時間帯でドラマのテイストに制約を付ける必要もないと考える。
私はとても丁寧に作られた良いドラマだったと思う。
しかし一方で、主人公の百音(清原果那)はじめ登場人物の言動に対して、もどかしく思う場面が多々あったのは事実だ。もっとストレートに気持ちを伝えたり、行動すればいいのにと感じた。でもそれは、私の「共感力」が低いせいでもあり、またそのもどかしさがドラマの醍醐味という面もあるだろう。そして何より、東日本大震災という災害を体験した当事者しか分からない心情があるのだろうし、その心情に寄り添って作られ、そういうこともあるのだろうと想像させられただけでも、優れたドラマだったのだと思う。
一方11月に始まった『カムカムエヴリバディ』は、登場人物の気持ちや演技は分かりやすい。行間を読む必要はそれほどないと思う。
しかし、違う意味で集中して見なければならない、これもまた異色の朝ドラだと思う。
何が異色かと言うと、1話ごとのストーリー展開が早く、それぞれの回が15分の作品として完成度が非常に高いのだ。1編15分の単発ドラマを見たような充実感がある。
例えば第6話。岡山の和菓子屋の娘安子(上白石萌音)と大阪の大学生稔の1年間の手紙のやり取りを通じて、2人の想いが深まって行く様子を描きつつ、戦争の足音が近づいてくる世相も醸し出されていた。今後の展開を予感させるような効果もあった。『木綿のハンカチーフ』が1編の短編小説のような味わいがあるのと同様の演出だった。
更に、第8話は圧巻。家業の事情から断れない見合い話が持ち上がり、話を受けることを決断した安子は、最後に一度だけと大阪まで汽車に乗って稔に会いに行く。映画を観たりうどんを食べたりして半日を過ごし、見合の話は切り出せないまま、帰路の汽車に一人乗った安子は涙が止まらない。そこでタイトルロールが挟まれ、汽車は岡山に着いたのだが、何と同じ汽車に稔が乗っていたのだった。
ストーリー展開が早いのは、100年間の物語を半年で描くので必然ではあるが、駆け足で進んでいる感じは全くない。濃淡を付けながらも1話1話じっくりと進んでいる印象を受ける。
ヒロインが3代に亘るのも異色だ。もっとも、『あまちゃん』も母子孫の3代がヒロインだったと言える作品だったが、『カムカムエヴリバディ』は100年間を時系列で描き、3人のヒロインが別々に出て来るようだ。
そして3代目のヒロインは元AKB48の川栄李奈だ。AKB、坂道グループ出身の朝ドラヒロインは初であろう。大島優子、島崎遥香、松井玲奈、渡辺麻友、そして川栄李奈自身もかつて重要な役で出演していたが、ヒロインは初だと思う。活躍を期待したい。
『あまちゃん』の感想記事はこちら。
『なつぞら』の感想記事はこちら。
『エール』の感想記事はこちら。
『ひよっこ』の感想記事はこちら。
登場人物の誰もが内面に葛藤を抱えていて、それを上手く表現できずに苦しんでいる。そんなドラマだった。言葉が少なく、声も小さいので、集中して画面を見て、セリフや演技の行間を読まないと内容がよく理解できない。見る人に緊張を強いるドラマだった。
そのため、「朝の忙しい時間には合わない」「朝から暗い話は勘弁」といった批判もあったようだが、それはドラマそのものの評価とは違うと思う。また、私もそうだが録画して夜見たり、オンデマンドで好きな時に見たりする人も多くなっており、放送時間帯でドラマのテイストに制約を付ける必要もないと考える。
私はとても丁寧に作られた良いドラマだったと思う。
しかし一方で、主人公の百音(清原果那)はじめ登場人物の言動に対して、もどかしく思う場面が多々あったのは事実だ。もっとストレートに気持ちを伝えたり、行動すればいいのにと感じた。でもそれは、私の「共感力」が低いせいでもあり、またそのもどかしさがドラマの醍醐味という面もあるだろう。そして何より、東日本大震災という災害を体験した当事者しか分からない心情があるのだろうし、その心情に寄り添って作られ、そういうこともあるのだろうと想像させられただけでも、優れたドラマだったのだと思う。
一方11月に始まった『カムカムエヴリバディ』は、登場人物の気持ちや演技は分かりやすい。行間を読む必要はそれほどないと思う。
しかし、違う意味で集中して見なければならない、これもまた異色の朝ドラだと思う。
何が異色かと言うと、1話ごとのストーリー展開が早く、それぞれの回が15分の作品として完成度が非常に高いのだ。1編15分の単発ドラマを見たような充実感がある。
例えば第6話。岡山の和菓子屋の娘安子(上白石萌音)と大阪の大学生稔の1年間の手紙のやり取りを通じて、2人の想いが深まって行く様子を描きつつ、戦争の足音が近づいてくる世相も醸し出されていた。今後の展開を予感させるような効果もあった。『木綿のハンカチーフ』が1編の短編小説のような味わいがあるのと同様の演出だった。
更に、第8話は圧巻。家業の事情から断れない見合い話が持ち上がり、話を受けることを決断した安子は、最後に一度だけと大阪まで汽車に乗って稔に会いに行く。映画を観たりうどんを食べたりして半日を過ごし、見合の話は切り出せないまま、帰路の汽車に一人乗った安子は涙が止まらない。そこでタイトルロールが挟まれ、汽車は岡山に着いたのだが、何と同じ汽車に稔が乗っていたのだった。
ストーリー展開が早いのは、100年間の物語を半年で描くので必然ではあるが、駆け足で進んでいる感じは全くない。濃淡を付けながらも1話1話じっくりと進んでいる印象を受ける。
ヒロインが3代に亘るのも異色だ。もっとも、『あまちゃん』も母子孫の3代がヒロインだったと言える作品だったが、『カムカムエヴリバディ』は100年間を時系列で描き、3人のヒロインが別々に出て来るようだ。
そして3代目のヒロインは元AKB48の川栄李奈だ。AKB、坂道グループ出身の朝ドラヒロインは初であろう。大島優子、島崎遥香、松井玲奈、渡辺麻友、そして川栄李奈自身もかつて重要な役で出演していたが、ヒロインは初だと思う。活躍を期待したい。
『あまちゃん』の感想記事はこちら。
『なつぞら』の感想記事はこちら。
『エール』の感想記事はこちら。
『ひよっこ』の感想記事はこちら。