昨年の大晦日も家族で紅白歌合戦を観た。
乃木坂46は、2021年にも歌った『きっかけ』を歌った。紅白歌合戦で乃木坂46が同じ曲を複数回歌うのは初めてのことだ。シングル曲でもないこの曲は「メンバーが大切に歌い続けて来た曲」とのことだ。いい曲には違いないが、今年はファン以外にも聞き覚えがあるようなヒット曲がなかったこともこの選曲の理由だろう。
周囲に流されず、自分自身の衝動をきっかけに行動したいという信条を歌っている。その信条には共感する。テーマとしたら櫻坂46の楽曲にもよくあるような内容だが、表現方法が攻撃的ではなく、まろやかなのが乃木坂らしい。ダンスも控え目で、全編生歌での歌唱は良かった。
ところで、交差点の真ん中で信号の点滅が始まらないか不安になるという歌い出しはいかにも乃木坂らしい。信号待ちで隣り合った他人の感情にシンクロして泣いてしまう『シンクロニシティ』も、歩道橋の向こう側に渡ることを後戻りできない人生の選択に例えた最新曲『歩道橋』も、日常の道路周りから人生を語る歌詞だ。この3曲を「道路人生哲学シリーズ」と名付けたい。
櫻坂46『自業自得』は対照的に、激しいダンスとハードな曲調で「見せる」ステージだった。歌唱は、口パクではないようだったが「かぶせ」だと思われる。
彼女との別れは自分が選んだことで誰のせいでもないということを、「自業自得」というネガティブワードを敢えて使って表現している。テーマ自体は乃木坂46『きっかけ』と似たようなテーマだが、表現は尖っている。
「君の腕を噛んだまま歩いた」という歌詞が風変りだと思ってこれまで聴いていたが、画面に出た歌詞で「噛んだ」ではなく「つかんだ」だったことを初めて発見した。
毎年のことだが、紅白歌合戦で初めて聴く曲も多かった。それはそれで、最近のヒット曲を知る貴重な機会と考えている。それにしても1回聴いただけでは良さがよく分からない曲が増えてきているのは、私自身が老化しているからなのだろう。
特に2024年に大ヒットした『はいよろこんで』『Bling-Bang-Bang-Born』の2曲とも、画面の歌詞を見ながら聞いたが、何を歌っているのか、どこがいいのか、正直に言えばよく理解できなかった。どちらもリズム重視で、歌詞は語感が良くリズムに乗る言葉を当てはめているのだと思う。詩だから文法通りでなくてもいいが、あまりに断片的な言葉の羅列になっているように感じた。論理的に理解するのではなく、感覚的に感じる歌詞なのかもしれない。
多数出場していた日韓のアイドルグループ(櫻坂含む)の楽曲もそんな楽曲が多い気がした。優先順位は「リズム>>>メロディ>歌詞」なのだろう。私の好みは「歌詞=メロディ>>>リズム」なので真逆だ。それはあくまで好みの問題で、どちらがいい・悪いということではない。
番組後半の南こうせつとイルカあたりから、歌詞・メロディ重視の曲が増え、居心地のいい感じになって来た。THE ALFEE『星空のディスタンス』は、歌唱・演奏とも全く衰えておらず、当時の記憶のままのパフォーマンスだった。やっぱり、知っている歌手、知っている楽曲は安心して楽しめる。
毎年書いているが、三山ひろし歌唱時の「けん玉ギネスに挑戦」は、もう今回限りにした方がいいと思う。成功した今回がやめるチャンスだ。だいぶ飽きられてきたと思うし、誰も歌など聴いていないのは演出本来の目的を逸脱している。
一方、水森かおり歌唱時の「ドミノ倒し」も恒例化しつつあるが、こちらは歌の舞台をドミノで表現するという演出の範疇にギリギリ留まっている。また、失敗してもカメラに写っていない所で再開もできそうだから、けん玉ほど「歌そっちのけ」にはなっていない気がする。
今回、朝ドラ『虎と翼』『おむすび』2作の主演女優が司会をして、2作の主題歌が披露された訳だが、いろいろな意味で違いが鮮明になった。『虎と翼』は主な登場人物が勢ぞろいして作品を振り返るようなミニドラマに続いて、主題歌『さよーならまたいつか』を米津玄師が歌うという演出だった。評価が高かったドラマのファンも満足できる内容だったと思う。一方、苦戦中の『おむすび』の主題歌『イルミネーション』を歌い終えたB’zは、口直しとばかりに『ラブファントム 』『ウルトラソウル』の2曲を歌うサプライズ演出だった。
ただ、司会者としては橋本環奈の堂々とした態度は際立っていた。
ところで、最近過去の紅白歌合戦の再放送をやっていて、1971年のものを見たが、正直言ってつまらなかった。知っている歌手の若い姿を観ることができたが、歌っている楽曲がほとんど知らない曲なのだ。当時は、「その年のヒット曲」を歌うことが原則だったようで、その歌手の「代表曲」を歌っているのではなかった。
歌の紹介やトークも短く、ひたすら紅白交互に歌うような番組だった。時間も21時開始だったので3時間弱だったはずだ。そういうシンプルな構成自体は良いと感じた。
1980年代の再放送なら、知っている曲も多く、もう少し楽しめるのかもしれない。
2015年紅白歌合戦の感想
2016年紅白歌合戦の感想
2017年紅白歌合戦の感想
2018年紅白歌合戦の感想
2019年紅白歌合戦の感想
2020年紅白歌合戦の感想
2021年紅白歌合戦の感想
2022年紅白歌合戦の感想
2023年紅白歌合戦の感想
乃木坂46は、2021年にも歌った『きっかけ』を歌った。紅白歌合戦で乃木坂46が同じ曲を複数回歌うのは初めてのことだ。シングル曲でもないこの曲は「メンバーが大切に歌い続けて来た曲」とのことだ。いい曲には違いないが、今年はファン以外にも聞き覚えがあるようなヒット曲がなかったこともこの選曲の理由だろう。
周囲に流されず、自分自身の衝動をきっかけに行動したいという信条を歌っている。その信条には共感する。テーマとしたら櫻坂46の楽曲にもよくあるような内容だが、表現方法が攻撃的ではなく、まろやかなのが乃木坂らしい。ダンスも控え目で、全編生歌での歌唱は良かった。
ところで、交差点の真ん中で信号の点滅が始まらないか不安になるという歌い出しはいかにも乃木坂らしい。信号待ちで隣り合った他人の感情にシンクロして泣いてしまう『シンクロニシティ』も、歩道橋の向こう側に渡ることを後戻りできない人生の選択に例えた最新曲『歩道橋』も、日常の道路周りから人生を語る歌詞だ。この3曲を「道路人生哲学シリーズ」と名付けたい。
櫻坂46『自業自得』は対照的に、激しいダンスとハードな曲調で「見せる」ステージだった。歌唱は、口パクではないようだったが「かぶせ」だと思われる。
彼女との別れは自分が選んだことで誰のせいでもないということを、「自業自得」というネガティブワードを敢えて使って表現している。テーマ自体は乃木坂46『きっかけ』と似たようなテーマだが、表現は尖っている。
「君の腕を噛んだまま歩いた」という歌詞が風変りだと思ってこれまで聴いていたが、画面に出た歌詞で「噛んだ」ではなく「つかんだ」だったことを初めて発見した。
毎年のことだが、紅白歌合戦で初めて聴く曲も多かった。それはそれで、最近のヒット曲を知る貴重な機会と考えている。それにしても1回聴いただけでは良さがよく分からない曲が増えてきているのは、私自身が老化しているからなのだろう。
特に2024年に大ヒットした『はいよろこんで』『Bling-Bang-Bang-Born』の2曲とも、画面の歌詞を見ながら聞いたが、何を歌っているのか、どこがいいのか、正直に言えばよく理解できなかった。どちらもリズム重視で、歌詞は語感が良くリズムに乗る言葉を当てはめているのだと思う。詩だから文法通りでなくてもいいが、あまりに断片的な言葉の羅列になっているように感じた。論理的に理解するのではなく、感覚的に感じる歌詞なのかもしれない。
多数出場していた日韓のアイドルグループ(櫻坂含む)の楽曲もそんな楽曲が多い気がした。優先順位は「リズム>>>メロディ>歌詞」なのだろう。私の好みは「歌詞=メロディ>>>リズム」なので真逆だ。それはあくまで好みの問題で、どちらがいい・悪いということではない。
番組後半の南こうせつとイルカあたりから、歌詞・メロディ重視の曲が増え、居心地のいい感じになって来た。THE ALFEE『星空のディスタンス』は、歌唱・演奏とも全く衰えておらず、当時の記憶のままのパフォーマンスだった。やっぱり、知っている歌手、知っている楽曲は安心して楽しめる。
毎年書いているが、三山ひろし歌唱時の「けん玉ギネスに挑戦」は、もう今回限りにした方がいいと思う。成功した今回がやめるチャンスだ。だいぶ飽きられてきたと思うし、誰も歌など聴いていないのは演出本来の目的を逸脱している。
一方、水森かおり歌唱時の「ドミノ倒し」も恒例化しつつあるが、こちらは歌の舞台をドミノで表現するという演出の範疇にギリギリ留まっている。また、失敗してもカメラに写っていない所で再開もできそうだから、けん玉ほど「歌そっちのけ」にはなっていない気がする。
今回、朝ドラ『虎と翼』『おむすび』2作の主演女優が司会をして、2作の主題歌が披露された訳だが、いろいろな意味で違いが鮮明になった。『虎と翼』は主な登場人物が勢ぞろいして作品を振り返るようなミニドラマに続いて、主題歌『さよーならまたいつか』を米津玄師が歌うという演出だった。評価が高かったドラマのファンも満足できる内容だったと思う。一方、苦戦中の『おむすび』の主題歌『イルミネーション』を歌い終えたB’zは、口直しとばかりに『ラブファントム 』『ウルトラソウル』の2曲を歌うサプライズ演出だった。
ただ、司会者としては橋本環奈の堂々とした態度は際立っていた。
ところで、最近過去の紅白歌合戦の再放送をやっていて、1971年のものを見たが、正直言ってつまらなかった。知っている歌手の若い姿を観ることができたが、歌っている楽曲がほとんど知らない曲なのだ。当時は、「その年のヒット曲」を歌うことが原則だったようで、その歌手の「代表曲」を歌っているのではなかった。
歌の紹介やトークも短く、ひたすら紅白交互に歌うような番組だった。時間も21時開始だったので3時間弱だったはずだ。そういうシンプルな構成自体は良いと感じた。
1980年代の再放送なら、知っている曲も多く、もう少し楽しめるのかもしれない。
2015年紅白歌合戦の感想
2016年紅白歌合戦の感想
2017年紅白歌合戦の感想
2018年紅白歌合戦の感想
2019年紅白歌合戦の感想
2020年紅白歌合戦の感想
2021年紅白歌合戦の感想
2022年紅白歌合戦の感想
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