今の内閣、政府の情報公開の姿勢がどうなるかについて以前から興味がある。
そんな中、5月3日の憲法記念日、毎日新聞の特集、
「きょう憲法記念日 知る権利、集まる注目 動き出した情報公開法改正」は、最新の情報をまとめていた。
良くある問題としての「文書の不存在」が一つの主題。
今の内閣も、「議事録すら残さない」実態だという。
これについて、
「情報公開クリアリングハウス」の三木さんは「政務三役会議の議事録を作成しなかったり、郵政改革法案の制定過程を文書で記録しない行為は、公文書管理法に照らせば違法だ。
と明確。
三木さんには、福井県の会議記録の音声記録=電磁的な録音記録が公文書に当たるか否か、の訴訟で意見書を書いていただいたことがある。その訴訟は今は最高裁。
三木さんは、今の政府の情報公開の検討会のメンバー。
先のようなコメントをする人を含めている、そういう意味では他のメンバーも含めて人選が悪いわけではない。
ところで、鳩山首相が今年1月から始めたツイッター、
内閣広報室は「ツイッター」に首相が投稿した文書は行政文書に当たると決めたという。
対して、「ツイッター好き」とされる原口総務相のツイッターについて、総務省官房総務課は「全体としては個人的な日記だ」として行政文書とは位置づけず、当然、請求されても「不存在」になって公開されない、という。
他の省庁やトップを含めて、情報公開に後ろ向きな姿勢が目立つらしい。
ともかく、枝野行政刷新担当相が検討している情報公開制度見直し方針は4月に明らかにされている。
要点は以下。
国民の「知る権利」を明記。
●開示対象の拡大・明確化
●開示手続きの迅速化・強化
請求日から開示か不開示の決定までの期限を
現行の30日から14日に短縮。
1件につき300円の開示請求手数料も原則廃止
●事後救済制度の強化
また、改正案素案では、
「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」 の部分を削除し、
「請求文書をすべて開示しないと決定した場合、
首相が必要と認めるときは不開示を取り消すことができる」
とするという。
さらに、裁判で裁判官が直接、不開示の文書や情報の中身を見たうえで、開示の可否を判断できる「インカメラ審査」を採用する方向。
情報公開の訴訟を私自身15件以上やってきた。
情報公開の訴訟では、行政側が非開示にしたとき、今までは、当の行政側が公開できない理由を都合の良いように述べていれば基本的には済んだ。
原告側は、それを崩す主張・立証が必要になる。
しかし、「インカメラ制度」の導入で、裁判官が「非開示文書の現物」を審判者として自ら見て点検できることになる。
行政は、ごまかしがきかなくなる。
大いに期待したい。
人気ブログランキング→→←←ワン・クリック10点
5位あたり
●特集:きょう憲法記念日 情報公開訴訟を多く手がける弁護士、小町谷育子さんの話
毎日新聞 2010年5月3日
◇勝訴が運用改善へのインパクト
国の誤った情報公開法の解釈を、裁判を通してただしていきたいと思って多くの情報公開訴訟にかかわってきた。国は司法の判断には従うので、訴訟に勝つことは運用面での改善には大きなインパクトを与えるからだ。
4月に東京地裁が沖縄密約文書の全面開示を命じた判決は、全国各地の訴訟にかかわるみんなの努力が積み重なった結果だった。
ただ、国は訴訟に勝つためには立法時の議論をねじ曲げて主張するので法改正しかない。
その一つが裁判官だけが文書を見て判断する「インカメラ審理」の導入だ。誰も文書を見られないことにつけ込んだウソの主張をさせないという効果があることに加え、国の文書が原則30年で公開されることが徹底されれば、裁判官自身も自分の判断を検証されることになる。
公開訴訟では多くの裁判官が、判決の中で情報公開制度が民主主義にとって重要だと書いている。情熱を持って訴えれば、通じるものは必ずある。(談)
●特集:きょう憲法記念日 知る権利、集まる注目 動き出した情報公開法改正
毎日新聞 2010年5月3日
政権交代から7カ月余。憲法で定められた国民主権(前文、1条)や表現の自由(21条)とかかわりの深い国民の「知る権利」が注目を集めている。政府が「行政透明化検討チーム」(座長・枝野幸男行政刷新担当相)を設け、情報公開法の改正に乗り出したからだ。
座長試案では「知る権利」を盛り込む方向性が打ち出された。
一方、ずさんな年金記録管理の反省から昨年成立した公文書管理法は公文書を「国民の知的資源」と明記、11年4月に施行される。
「日米密約」関連文書の廃棄・紛失疑惑などで国の姿勢が改めて問われる中、鳩山政権を情報公開の立場から考えてみた。
◇前文(抜粋)
主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
◇1条【天皇の地位・国民主権】
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
◇21条【表現の自由】
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
●「文書不存在」の壁
市民団体「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事は、9省の「政務三役会議」の会議内容が分かる文書を請求してきた。しかし、「記録がない」という不存在が3件。開示された場合でも既にネットのホームページで公開されている記者会見記録ばかりで、議事録と呼べる文書はなかった。
「政治主導」を掲げる民主党。その具体策として政策決定を一元化したのが政務三役会議だった。民主党は同時に「情報公開」も唱えているが、政策の決定過程を国民が知ろうとしても困難なのが現状といえる。
そもそも議事録が存在するのかどうかも分からない。高校の学習指導要領解説書の記述を巡る3月の衆院外務委員会で、小野寺五典委員(自民)はこう批判した。「三役会議がほとんど大きなものを決めているが、議事録すら残さない。(情報公開を進めると)言っていることとやっていることが逆だ」
毎日新聞が1府12省庁(担当相)の担当課に三役会議の傍聴取材の可否と、発言者名や詳細なやりとりを記載した議事録の有無について聞いたところ、傍聴取材は総務省以外は不許可。
また、議事録は総務省が発言者名付きの「概要」を作成してホームページで公開。文部科学省が先月20日から概要の公表を始めたほかは、枝野行政刷新担当相と福島瑞穂消費者・少子化担当相が同様に公開しているだけ。
枝野氏は4月、全省庁に政務三役会議の議事録作成・公開を要請したが、それまでやってこなかったことへの危機感の表れでもある。
●不透明な郵政改革案
「何であんたたちに一から十まで説明する必要があるのか。大臣である私が責任もって決める」。亀井静香金融・郵政担当相は昨年12月4日の会見で、記者から「今後の話し合いは議事録を残すのか」と問われると、そう突っぱねた。
この日、日本郵政グループの株式売却凍結法が成立。金融庁大臣室で亀井氏のほか原口一博総務相ら総務省と金融庁の政務三役と、斎藤次郎・日本郵政社長が集まり、郵政改革法案策定に向けて開いた初会合の後に行われた記者会見での発言だ。
一連の審議過程は不透明だった。会合は非公開。議事録はもとより、会合の開催予定さえも非公表で進められた。途中経過は計15回開催された郵政改革関係政策会議で報告されたが、亀井氏らの決定事項の説明の場に過ぎなかった。「誰がどんな発言をし、どのような反応を経てその結論に至ったのか」。議論の経過は不透明なまま郵政改革法案は4月30日に閣議決定された。
「情報公開クリアリングハウス」の三木さんは「政務三役会議の議事録を作成しなかったり、郵政改革法案の制定過程を文書で記録しない行為は、公文書管理法に照らせば違法だ。鳩山政権が新しい試みをする中で、信頼性をどう担保していくかという組織運営に問題がある。自分たちを信じろ、というのではなく検証できるよう記録を残すなど客観的に説明していかなければならない」と指摘する。
◇期限破り、外務省突出
●「繁忙」が理由
総務省は情報公開法の施行を受けて毎年、調査状況を公表している。08年度の調査では、外務省による突出した開示期限破りが際立つ結果が出た。
・・・・
●ツイッターは?
情報公開法の改正論議では、行政文書の定義見直しも焦点の一つだ。
同法は行政文書について「行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書であって、職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているものをいう」と定めている。ただ、たとえばIT(情報技術)の進歩で定義に該当するかが不明確になるケースも出てきている。
鳩山内閣ではネット上の簡易投稿サイト「ツイッター」を使う閣僚が少なくない。首相自身も今年1月に始めた。首相が投稿した文書は行政文書に当たるのかどうか。内閣広報室によると、先月上旬になってようやく「行政文書」だと決めたが、その理由について「首相周辺の意見を取り入れた内容で、実際には首相秘書官補が入力しており、組織的関与があるので行政文書に当たると判断した」と説明する。
一方、「ツイッター好き」とされる原口総務相の場合は異なる。総務省官房総務課は「全体としては個人的な日記だ」として行政文書とは位置づけていない。当然、請求されても「不存在」になって公開されない。
ところが3月、原口氏は同省の課長に対してある人物との引き合わせについて「アレンジ、よろしくお願いいたします。頼りにしています」と要請。これに対して課長は「承知いたしました。大臣にtwitterでご指示いただける時代になったとは。感慨深いです」と応じている。
同課によると、これとは別に秘書官を通じて同様の指示を出しているので問題ないという。大臣の職務上の文章であることは明らかだが、同課は「大臣のツイッターは確かに行政文書的な要素を含むものが全くないとは言えないのだが……」と歯切れが悪い。
公文書管理法を所管する内閣府公文書管理課は「今後の検討事項」としている。
◇変わらぬ「密室会議」
●民間から「公開法案」
・・・・ 中央省庁等改革基本法は審議会などについて「会議または議事録は公開することを原則とし、運営の透明性を確保すること」と定め、有識者会議なども準ずることが閣議決定されている。ところが、運用は各省庁任せだ。
同有識者会議の議事録は公開しているが、発言者名は閣僚でも「政務三役」としてぼやかされていた。・・・・・・
沖縄返還(72年)に伴う財政密約や核密約など4件の日米密約問題を調査した外務省の「有識者委員会」(座長・北岡伸一東京大教授)も非公開で、議事録も作成されていない。今年3月に出された報告書では、密約を「広義」「狭義」などの言葉で分類したが、事後の検証は困難になっている。
「座長に静かな環境で議論したいという意向があった。議事録は委員が必要ないと判断した」(同省情報公開室)とする。しかし、委員の身分は「非常勤公務員」だ。
・・・
◇国会は「未開の地」
●参院、制度さえなく
「行政透明化検討チーム」座長の枝野行政刷新担当相が先月公表し、国民からの意見を募集している情報公開法改正案の試案は、国会に対しても「情報公開法と同等の開示制度導入の検討を促す」と、05年の見直しより一歩踏み込んだ見解を示し、国会の対応が注目を集めている。
情報公開法を制定した国会自身が実は「未開の地」のままだからだ。衆院は法の施行から遅れること7年の08年に独自の制度を定めたが、法の対象外。参院にはいまだに制度がない。
「知らない。衆院は何を公開しているの?」。参院議院運営委員会(議運)で理事を務める民主党議員の一人は、国会の情報公開制度についての記者の問いに開口一番、そう答えた。・・・・・
参院議運の西岡委員長も取材に対し「きちんと制度を作るなら法制化したほうがいい」と答えており、議論の行方が注目される。
==============
この特集は臺宏士、大貫智子、内藤陽、望月麻紀、日下部聡、曽田拓が担当しました。
==============
■ことば
◇公文書管理法
これまで各省庁でばらばらだった公文書の管理基準について、作成から移管・廃棄までの統一基準を示した法。年金記録問題など国のずさんな文書管理が問題化し、福田康夫元首相の主導で09年6月、衆参ともに全会一致で可決、成立した。施行は11年4月。
公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と位置づけ、「国民主権の理念にのっとり、現在及び将来の国民に説明する責務」を明記した。
また、これまでは「保存期限を超えた」ことを理由に廃棄されるケースも少なくなかったが、同法では期限を迎えた文書は国立公文書館などへ移管するか、廃棄する場合は「首相の同意」を条件とした。これで、役人の勝手な判断で公文書を廃棄できないようにするのが狙いだ。
==============
◆公文書開示を求めた裁判で国の主張が退けられた主な事例
◇法務省=録音テープは個人メモ?
司法試験委員会の議事内容を記録したテープの開示を求めた訴訟で、国は「議事要旨を起案するための個人的な手控えの一つ」として公開を拒否したが、東京地裁は07年3月、「行政文書」と認定。開示請求は認めなかった。一方、情報公開・個人情報保護審査会も09年7月、地裁と同様に「行政文書に該当する」と認定した。
◇外務省(1)=放置1年7カ月
日韓国交正常化交渉の関係文書の請求に対して、一部を除き、1年7カ月以上にわたって開示するかどうかの決定をしなかった。これに対して、東京地裁は07年12月、違法と認定。控訴審では国が開示、不開示の決定をしたため訴えの利益がなくなったとして請求者側が取り下げた。
・・・・
==============
◇「情報公開制度の改正の方向性について」の骨子
・目的として「国民の知る権利」の保障の観点を明示
・国の安全が害され、公共の安全に支障を及ぼす恐れがある情報を不開示とする要件で「行政機関の長が認めるにつき相当の理由がある」を削除=恣意(しい)的判断の排除
・全部の不開示決定は首相に報告。首相は取り消しなど必要な措置を求められる権限を創設
・開示期限を請求のあった日から14日以内に短縮。文書が大量の場合、「相当の部分」を開示した残りについて、「相当の期間内」に開示できる規定については開示決定から60日以内と明記
・開示決定が法定期間を過ぎた場合は、不開示決定があったとみなす
・情報公開請求訴訟での、不開示文書の内容を分類・整理した文書(ボーン・インデックス)の作成・提出制度の創設と、裁判官だけが文書を確かめられる「インカメラ審理」の導入
・国会や裁判所にも情報公開法と同等の開示制度導入の検討を促進
●首相判断で行政文書開示を 情報公開見直し方針
2010/04/19 22:11 【共同通信】
枝野幸男行政刷新担当相が検討している情報公開制度見直し方針の全容が19日、判明した。国民の「知る権利」を明記した上で、必要な場合には首相が行政文書を開示するよう閣僚ら行政機関の長に求める規定導入を提唱した。政治主導で国民の知る権利に応える姿勢をアピールする狙いもある。
枝野氏は自ら座長を務め20日午前に開く「行政透明化検討チーム」の初会合で方針を提示。行政機関情報公開法などの改正案を6月中にまとめ、秋の臨時国会で成立を図る考えだ。
方針は(1)開示対象の拡大・明確化(2)開示手続きの迅速化・強化(3)事後救済制度の強化―が柱。
開示拡大では、開示請求された行政文書をすべて開示しないと決定した場合は首相に報告し、首相が必要と認めるときは不開示を取り消すことができるようにする。不開示決定の場合には具体的理由を書面で示させるほか、開示の際には職務にかかわった公務員の氏名も原則開示とする。
手続き迅速化に関しては、請求日から開示か不開示の決定までの期限を現行の30日から14日に短縮。1件につき300円の開示請求手数料も原則廃止する。
●情報開示の是非、裁判官が判断 情報公開法改正素案
朝日 2010年4月10日4時1分
現行法では、国の安全や他国との外交上の信頼関係が損なわれたり、公共の安全と秩序の維持に支障があったりする場合など「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示にできる、としている。情報公開の可否を文書の所管省庁の大臣、実質的には官僚に委ねる仕組みだ。
この条文のため、公開の是非を巡る裁判では、大臣ら行政の判断がまず尊重され、文書や情報の中身自体が問われるのではなく、不開示とした理由や判断が合理的かどうかが対象にされている。このため、情報公開を巡る訴訟では、原告が敗訴するケースが少なくない。
これに対し、改正案素案では、「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」の部分を削除。
さらに、裁判で裁判官が直接、不開示の文書や情報の中身を見たうえで、開示の可否を判断できる「インカメラ審査」を採用する。
大臣ら行政側だけでなく、裁判官が実質的な判断に加わることで、公開の範囲を広げる狙いがある。 (倉重奈苗)
| Trackback ( )
|
|
|
|
|
|