●「ツタヤ図書館」に人気も不安も 初導入した佐賀では…
朝日 2015年10月1日
「ツタヤ図書館」の賛否を問う愛知県小牧市の住民投票が4日、投開票される。全国に広がりつつある同図書館の現状はどうなっているのか。2013年、第1号がオープンした佐賀県武雄市に足を運んだ。
天井まで届きそうな5メートル近い書棚にぎっしり詰まった本。吹き抜けの館内にはカフェを併設し、ジャズやクラシックが流れる。雑誌をめくりながらゆったりコーヒーを楽しむ来館者も。4カ月の乳児を抱いた主婦(41)は、隣の多久市から車で30分かけて月3回は来る。「静まり返った公立図書館とは違い、幼い子どもと一緒でも気兼ねなく利用できる雰囲気が好き」。地元の図書館からは足が遠のいたという。
武雄市図書館は、小牧市の新図書館計画と同様、レンタル大手「ツタヤ」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者として運営する。従来の公立図書館とは違い、雑誌の販売や夜9時までの開館などが特徴だ。全国だれでも本を借りることができ、宅配便(500円)で返却もできる。
直営だった時より、図書館部分の延べ床面積を改装して1・4倍に広げた。開架の本は2倍の20万冊に増やし、休館日もなくした。武雄市によると、同じサービスを提供した場合、年間の見込み運営費は2億1千万円。CCCに書籍の販売やレンタルなどを認めることで指定管理料は1億1千万円にとどまったという。
市の予想を上回る来館者があった。人口5万人の武雄市に13年度は92万3千人が訪れ、14年度も80万人を超えた。週末は1日4千人も来る。利用者の半数が市外や県外からで、駐車場には福岡や長崎などの他県ナンバーが並ぶ。市は宿泊や食事、土産品など、市内の年間の経済効果を約20億円とはじく。
市教育委員会の担当者は「予想を上回り、リピーターが増えた。20~40代の本の貸し出しが3倍に増え、図書館が若者と行政とを結ぶ接点になっている」と胸を張る。
ただ、新しい図書館の形に疑問を感じる市民もいる。直営図書館に戻すことを求めている市民団体の井上一夫さん(75)は「図書館部分は奥に追いやられた。書棚も見栄えはいいが、高すぎて本が取れない。商業的な発想が前面に出ている」と批判する。
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