選挙に立候補した者のポスター代金や選挙カー、ガソリン代など税金・公金で賄う制度がある。
昨年4月の統一地方選や最近の国政選挙に関しても、問題になっている。
私たちは、水増し請求や虚偽請求が疑われたので、最初は(2006年から)他県の自治体議員たちと共同・連動して問題を顕在化させたりした。その後も(2007年から)市民として住民監査請求・住民訴訟などした。
(※このブログのカテゴリーにまとめている⇒ 政務活動費の不正、ポスター、ビラなどの選挙公営問題)
住民監査請求でこちら集計リストに挙げて返還すべきとすると、その時点で県に返還する候補者も少なくなかった。
返還しない人たちについて、住民訴訟に進み、こちらは裁判手続きとして許認可権のある行政機関への調査嘱託、公費請求した業者に文書送付嘱託、文書提出命令などの申し立てを続けた。
その方向性には裁判所はわりと応じてくれて、関係文書や回答がいろいろと出てきた。印刷業者をほぼすべて、順番に裁判所に呼んで、資料とともに裁判官の質問に説明させたり・・・
情報公開などでは出てこない裁判独特の手続きのおかげ。
選挙カーの関係では、その回答で「後で候補者に〇〇〇〇円渡した」旨を正直に回答するレンタカー業者もあった。水増し・キックバックの立証だ。
高裁では、認められた文書提出命令で、「住民監査請求の段階でので監査委員の調査への回答の金額」と「文書提出命令でできた関係文書に記載された金額」の著しい齟齬・ズレが明らかになったので、書面で指摘した。
そしたら、判決前に数百万円が県に返還され、その「収入済の県の文書」も提出された・・・そうなのに、あるいはそうだから、か・・・判決は「棄却」。
‥ともかく、今日は、最近の関連の報道などを記録しておくことにする。
なお、昨日1月14日の私のブログへのアクセスは「閲覧数5,922 訪問者数1,421」。今朝の気温は2度。ウォーキングは、このあと、霧が濃い中を出かけることになる。
●岩手 選挙ポスター高い? 公費負担、価格検証が必要/岩手 2019.09.16
●青森県議選のポスターは高額?/東奥 2019年9月18日/
・・・県が負担する上限額と候補者側の請求額が1円単位までぴったり同じだったのは60陣営のうち24陣営。請求額の最高は116万3484円、逆に最も少ないのは37万8千円と、3倍ほどの開きがあった。ポスター1枚当たりの単価は、半数を超える38陣営が上限額をそのまま請求。請求されたポスター1枚当たりの単価は最低700円、最高2690円と3.8倍の差があった。・・・ポスター以外に、選挙カーのレンタル代や運転手への報酬、ビラ製作費も県費で賄う。知事選にも同様の県費負担がある。
●4月の熊本県議選のポスター代、10人が上限 公費申請に明細不要/熊本 2019/12/30/
・・・ポスター代をめぐっては、04年の岐阜県山県市議選で市議らが制作費を水増し請求したとして、詐欺容疑で07年に書類送検(起訴猶予)されるなど全国で問題が表面化。
●2016年以降の衆参院選 熊本県関係候補者のポスター代公費負担 金子、矢上、阿部氏が上限申請/熊本 2019年12月30日
●東京 選挙ポスター公費負担「100万円超」への大疑問/東京選出の9衆院議員、上限支払いは妥当か/東洋経済 2020/01/11
・・・2007年には岐阜県内の市議選や岐阜県議選に際し、詐欺まがいの「水増し請求」も発覚している。県議や市議は記者会見で謝罪し、水増し請求分の返還を申し出る事態に追い込まれた。「水増し請求」とは、どんな内容だったのか。当時の新聞報道や関係する議会議事録によると、手法自体は単純だ。
① 実際のポスター代は届け出た金額よりも安かったのに満額を請求した
② その差額を用いて使業者に公費負担の対象外の名刺や封筒、パンフレットなどを印刷させた
③ 一部議員は水増し分の中から「キックバック」として印刷業者から政治献金を受けていた
住民監査請求が相次ぐ事情について、全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士(愛知県)はこう指摘する。
「背景にあるのは“水増し疑惑”です。候補者と業者が共謀し、水増し分を業者がプールしてそのお金を別の目的のために使った事例がすでに明らかになっている。おそらく、地方で起きたことは国政選挙でも起きていると思います」
●柏市議選でポスター代金水増し疑惑 元候補が印刷会社を告発/産経 2016.2.16
●小泉進次郎環境相 “幽霊会社”に高額発注で政治資金4300万円を支出「週刊文春」2019/12/25
●この負担、減らないの?参院選の公費は530億円!出馬経験者が選挙コストを考える/エキサイト 2019年8月2日
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●選挙ポスター高い? 公費負担、価格検証が必要
岩手 2019.09.16
「選挙ポスターは1枚2千円以上する場合もあると聞きました。なぜそんなに高いのですか」。広島市南区の会社員男性(44)が中国新聞社(同市)の編集局に疑問の声を寄せた。同社の取材で、サイズやデザインがほぼ同じでも、候補者により価格差が大きいことが判明。本紙特命取材班も取材し、本県でも大きな価格差が明らかになった。ポスターは公選法に基づき税金で賄われており、実勢価格に合っているか検証が求められる。
8月25日に投開票が行われた盛岡市議選では、定数38に44人が立候補。選挙の掲示板には、ほぼ同じサイズのポスターが並んだ。
公選法は資金が少なくても選挙運動ができるよう、ポスター代を公費で負担する選挙公営制度を定めており、自治体が条例で上限を決めている。ポスターの掲示場数などによって変わるため、選挙区ごとに違う。
同市選管によると、同市議選のポスターの1人当たり公費負担(事前審査基準での速報値)は、上限の57万5771~約15万6千円と候補によって大きな差があった。1枚当たりに単純計算すると、千円近い人から約270円まで4倍近い開きがあった。複数人が上限額ギリギリで請求していた。
広島市議選では、安佐北区選挙区の請求額が上限の109万2866~11万8389円。1枚当たりは2759~203円で、14倍もの開きがあった。11万円余りと最少だった中堅市議は「この価格が実勢価格ではないか」と、公費の上限が高過ぎると指摘する。
選挙ポスターには、雨風に強い特殊な紙と色落ちしにくいインキが使われる。写真撮影やデザインにこだわれば、製作費は通常より高くなるが、本県沿岸部で印刷業を営む男性は「インクや紙代は大したことない。高いのはデザイン料」と打ち明ける。
慣例的に公費負担の上限額を請求する会社が多い上「直接受注の場合はまだいいが、代理店が入ると不透明な部分もある。ポスターとパンフレットをセットで注文する暗黙の了解がある場合もある」と明かす。
広島市内の複数の印刷業者も「公費上限が高い」と指摘。ある印刷会社社長は「金箔(きんぱく)でも使わないとこの額は使い切れない。20年以上前の水準だ」と話す。
公金の在り方に詳しい全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士(58)は「公営制度が一部で悪用されている恐れがある。市選管と議会は実勢価格を調査し、適正な価格へ上限を引き下げるべきだ」と訴える。
●【フカボリ】青森県議選のポスターは高額?
東奥 2019年9月18日
「選挙ポスターは1枚2千円以上する場合もあると聞きました。なぜそんなに高いのですか」。東奥日報紙「あなたの声から『フカボリ』取材班」のパートナー社、中国新聞(本社・広島市)の「こちら編集局です あなたの声から」に、同市の40代男性が疑問の声を寄せた。都道府県や市など規模の大きな自治体の首長選・議員選では、ポスター製作費を税金で負担している。そこで4月の青森県議選の状況を調べてみると、広島市議選と同様に候補者・選挙区によって差が大きいことが分かった。税金の無駄遣いになっていないか。
フカボリ 行政・政治・選挙 選挙
ポスター1枚当たりの単価や製作できる枚数は、ポスター掲示場の数などに応じて選挙前に決まり、各陣営に伝えられる。県議選の場合、上限額は選挙区ごとに異なる。
県選挙管理委員会に情報公開請求した資料を分析したところ、県が負担する上限額と候補者側の請求額が1円単位までぴったり同じだったのは60陣営のうち24陣営。請求額の最高は116万3484円、逆に最も少ないのは37万8千円と、3倍ほどの開きがあった。
ポスター1枚当たりの単価は、半数を超える38陣営が上限額をそのまま請求。請求されたポスター1枚当たりの単価は最低700円、最高2690円と3.8倍の差があった。
最近の選挙ポスターは、雨で色がにじんだり、波打ったりしないような紙を使うのが一般的。さらに「裏がシール状になっているなど紙自体の値段が高い」ため、通常のポスターより割高-というのが印刷業者の共通の見方だ。
ある現職県議のように「10パターンはデザインを出してもらった」となればデザイン代もかさむ。「一つのデザインで終わるなら30~50万円でもできるが、そうはならない。むしろ手間がかかる」(県南地方の印刷業者)との声もある。
一方、印刷枚数の違いが請求額の大きな差を生んでいたことが分かった。
大半の陣営が、予備のため掲示場数より多い枚数を発注。掲示場と同数だったのは、無投票だった選挙区の1陣営のみだった。上限いっぱいを発注したのは29陣営。枚数で見ると、青森市区では9陣営が700枚以上の予備を持っていた。
同市区の現職県議は「貼り間違いなどで急にポスターが必要になった時に『ない』では済まない。念のため」と説明する。
業者が県に提出する請求書は、公費が支出されるにもかかわらず、単価、枚数、総額のみという簡単さ。デザイン代、紙代、印刷代…などの内訳を書く必要はなく、何にいくらかかったのかを知ることはできない。コスト意識という面からは疑問符がつく。
そもそも県の負担額は実勢に合っているのか。県選管に聞くと、「(ポスター製作の)実勢価格そのものを把握していない。(負担額より)高い低いということは分からない」という。
青森市内のある業者は、現在の上限を「適正だと思う」としつつ、「税金を使う以上、透明性はもう少し担保されてもいいのでは」と話した。
▽県議選のポスター製作費 カネのかからない選挙の実現や候補者間の選挙運動の機会均等を目的に、県費負担している。1993(平成5)年に施行した県条例に基づく。条例で定めた計算式により、ポスター掲示場数に応じて1枚当たりの単価を選挙区ごとに算出。掲示場数の2倍を枚数の上限とし、印刷業者が県に請求する。単価、枚数が上限を超える場合は自己負担となる。得票が少なく、供託金を没収された候補は県費の対象にならない。ポスター以外に、選挙カーのレンタル代や運転手への報酬、ビラ製作費も県費で賄う。知事選にも同様の県費負担がある。
●4月の熊本県議選のポスター代、10人が上限 公費申請に明細不要
熊本 2019/12/30(高宗亮輔)
4月の熊本県議選に立候補した60人のうち10人が、公選法に基づく選挙候補者のポスター代の公費負担で、1円単位まで上限額(115万1472円~75万9792円)で申請していたことが29日、熊本日日新聞の調べで分かった。ポスター代は県選管に単価と枚数のみを申請すれば、県から印刷業者に直接支払われる。デザイン料、撮影料などの明細書は不要なため、候補者側の“言い値”を、チェックできない実態がある。
選挙運動費用収支報告書によると、公費負担額が最大だったのは熊本市1区の橋口海平、松村秀逸、岩田智子の3氏の115万1472円で、単価966円、枚数1192枚ともに上限だった。
ほかに高島和男氏(同市2区)95万5272円、溝口幸治氏(人吉市区)75万9792円、早田順一氏と渕上陽一氏(ともに山鹿市区)83万1200円、村上真由子氏と末松直洋氏(宇城市・下益城郡区)99万9360円、増永慎一郎氏(上益城郡区)108万3280円が、上限額で申請していた。
上限額の10氏以外に90%以上での申請は16人。80%以上での申請が全体の半数を超えていた。一方、上限額との比率が3割以下だったのは13人。最低は田端幸治氏(上益城郡区)の15万1200円で、上限との比率は13%だった。
1枚当たりの単価のみ上限が7人、枚数のみ上限は18人。単価は最高が3071円で、最低が216円。15人が立候補した熊本市1区でも、単価は上限の966円から230円まで4倍以上の開きがあった。
公費負担の上限額はポスター掲示場の数で定められており、最大は熊本市1区の115万1472円、最小は上天草市区の73万7706円。今回の県議選では立候補した60人全員が公費負担を利用しており、総額は約4094万円だった。
熊本大法学部の伊藤洋典教授(政治学)は「それぞれの候補者のポスター代のばらつきがあまりに大きく、上限額の設定や実態が不透明だ。法令に違反していないとはいえ、税金で公費負担される以上、金額の妥当性の説明は不可欠だ。制度を見直す必要もある」と話している。(高宗亮輔)
ポスター代の公費上限、相場よりかなり高い 候補者「妥当な金額」 業者「おいしい仕事」
熊日は県議選で上限額を申請していた現職9人と元候補者1人に取材。県議らは「業者が営業をかけてくる。スタイリストや撮影料、デザイン料込みだ」「ネクタイやポーズを変えて100枚以上撮影して決めた」「デザイン料はないが、紙は防水加工している」「ポスター代は実費だと思う」などと代金の正当性を強調。ただ大半が「スタッフに任せているので細かいことは分からない」と口をそろえた。
一方、複数の印刷会社などによると、一般的なポスター代の相場は「300枚で25万円」や「千枚で35万円」など。その上で、今回の受注業者の中の1社の役員は「公費上限額は手作業で制作していた昔の基準が残っているため、今の相場よりかなり高い」と話す。
上限額は総務省と県が3年に1度見直しており、現行額は2016年に決まった。過去の県議選や市議選に携わった印刷会社の元社員も「公費負担の上限額が高いというのは業界では共通認識で、おいしい仕事。明細も不要なので、かつて水増し請求をして名刺やビラを無料で印刷して渡すこともあった。キックバックを要求する議員もいた」と証言した。
ポスター代をめぐっては、04年の岐阜県山県市議選で市議らが制作費を水増し請求したとして、詐欺容疑で07年に書類送検(起訴猶予)されるなど全国で問題が表面化。愛知県豊橋市では、申請の際に企画料やデザイン料など契約の詳細な内訳を示す書類の提出を義務付け、透明性を確保している。
●2016年以降の衆参院選 熊本県関係候補者のポスター代公費負担 金子、矢上、阿部氏が上限申請
熊本 2019年12月30日(高宗亮輔)
選挙候補者のポスター代の公費負担をめぐり、熊本日日新聞社は2016年以降の衆参院選と知事選の全候補者を調査。17年衆院選で当選した自民党の金子恭之氏(熊本4区)と立憲民主党の矢上雅義氏(比例九州)、16、19年参院選に無所属で立候補し落選した阿部広美氏(熊本選挙区)が公費負担の上限額で申請していた。
金子氏と矢上氏はともに衆院熊本4区から出馬。いずれも単価258円で4854枚作成したとして上限額の125万2332円を請求していた。
阿部氏は16年参院選で144万180円、19年が143万782円の上限額だった。
熊日の取材に対し、金子氏の事務所と矢上氏は「デザイン料込みの値段。インキや紙を上質なものにこだわった」と理由を説明。阿部氏は「スタッフに任せていたので分からない」などと話した。
衆参院選では上限額の3氏のほかに、公費負担の上限との比率が9割以上だった候補者は6人。単価のみ上限が4人、枚数のみ上限が2人だった。上限との比率が最も低かったのは衆院熊本3区の関根静香氏で57%だった。
一方、3氏が立候補した16年知事選では、蒲島郁夫氏(96万8千円)と幸山政史氏(96万円)は、ともに上限との比率は68%だった。単価は蒲島氏が上限の121円、幸山氏は120円としていた。寺内大介氏は基準の得票数を下回ったため、公費負担は受けられなかった。
●選挙ポスター公費負担「100万円超」への大疑問/東京選出の9衆院議員、上限支払いは妥当か
東洋経済 2020/01/11
取材:本間誠也、木野龍逸、穐吉洋子=いずれも「フロントラインプレス(Frontline Press)」
選挙に立候補した者のポスター代金を公金で賄う制度がある。この「公費負担」制度をめぐって近年、地方選挙で「水増し請求ではないか」「県に公費負担させたポスター代は過大だった」などとして、住民監査請求が次々と起きている。
では、国政選挙ではどうか。東京都から選出されている衆議院議員の37人(小選挙区と比例復活)について調べたところ、9人が定められた上限の満額を、5人が限度額の99%以上を請求していた。それ自体には何の問題もないものの、一方では、請求額が上限の半分に満たない議員も12人を数える。この差は何か、なぜ生じるのか。取材を進めると、「実勢価格を反映していない高すぎる上限」という制度設計の問題、そして公費負担制度を思う存分に使う政治家の姿勢が見えてきた。
ポスターの枚数 選管は現物チェックせず
公職選挙法は資金が少ない人でも立候補できるよう、ポスターやビラ、看板などの費用を公費で負担するよう定めている。ポスター代の公費負担は国政選挙から始まり、1992年の公選法改正によって地方選挙に拡大された。その上限額は、国政選挙の場合、特定の式によって選挙区ごとにポスター1枚当たりの上限単価を計算、その単価に各選挙区内の公設掲示板数の2倍を乗じて出された総額が上限になる。地方選挙の場合も一部を除いて、上限は国政選挙の計算式を採用している。
公費の請求は以下の流れになる。
まず、候補者は印刷業者との間で代金を明示した請負契約を交わす。その契約書や実際にポスターを作ったことを示す証明書などを印刷業者が各地の選挙管理委員会に提出。選挙後に代金を選管に請求し、選管から支払いを受ける。この手続きでは、選管側は届け出のあった枚数が実際に印刷されたのかどうかといった現物チェックをしておらず、印刷業者は候補者と交わした「枚数確認書」を提出するだけで支払いを受ける。
「フロントラインプレス」の調査は、2017年10月の総選挙で当選した東京都選出の衆院議員37人を対象とした。東京都の公報では公表されていない「選挙運動費用収支報告書」に関連する詳細資料、各候補者による公費負担の書類などを情報公開請求によって収集し、分析した。東京の小選挙区25区のポスター代上限額は、都選管発行の「選挙の記録」などで確認した。
その結果、業者と契約したポスター代金が上限額の100%だった議員は9人で、それぞれの内容は次ページ表のとおりだ。総額は25万~110万円程度、1枚当たりは257~1290円と議員によってかなりバラツキがある。
党派別では、自民党が石原宏高氏(3区)、菅原一秀氏(9区)、文部科学相の萩生田光一氏(24区)ら7人。立憲民主党は海江田万里氏(1区)。無所属は初鹿明博氏(16区に出馬・比例復活=当選時は立憲民主党、2019年12月に離党)。これら9人が印刷した選挙ポスター1枚当たりの単価は836~1290円で、全員が上限に当たる公設掲示板の2倍の数を印刷したと記されている。
「実勢価格以上の公費請求だ」多発する住民監査請求
これまで各地の地方選挙では、ポスター代の上限額を請求した議員を対象に「水増し請求ではないか」などとする住民監査請求が繰り返し行われている。福岡市長選(請求日=2015年11月)、埼玉県議会選挙(2016年5月)、衆院議員選挙の富山県選挙区(2018年3月)、大阪府岸和田市議会議員選挙(2018年10月)など枚挙にいとまがない。「選挙ポスター」「住民監査請求」のワードでネット検索するだけで次々と実例が表示され、その多さに驚くかもしれない。
住民監査請求の多くは「上限の単価が高すぎ、公費負担として認めた掲示板の数の2倍という印刷枚数も多すぎる」という趣旨だ。請求理由には「単価が実勢の値段を反映していない」という内容も目立つ。
それだけではない。
2007年には岐阜県内の市議選や岐阜県議選に際し、詐欺まがいの「水増し請求」も発覚している。県議や市議は記者会見で謝罪し、水増し請求分の返還を申し出る事態に追い込まれた。「水増し請求」とは、どんな内容だったのか。当時の新聞報道や関係する議会議事録によると、手法自体は単純だ。
① 実際のポスター代は届け出た金額よりも安かったのに満額を請求した
② その差額を用いて使業者に公費負担の対象外の名刺や封筒、パンフレットなどを印刷させた
③ 一部議員は水増し分の中から「キックバック」として印刷業者から政治献金を受けていた
住民監査請求が相次ぐ事情について、全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士(愛知県)はこう指摘する。
「背景にあるのは“水増し疑惑”です。候補者と業者が共謀し、水増し分を業者がプールしてそのお金を別の目的のために使った事例がすでに明らかになっている。おそらく、地方で起きたことは国政選挙でも起きていると思います」
フロントラインプレスが調査対象とした東京選出の衆院議員37人の中には、ポスター代の請求額が上限の50%に満たなかった者も12人いた。党派別では、自民党7人、立憲民主党3人、公明党と日本共産党が1人ずつ。多くは届け出た印刷枚数も少なく、選挙区内の掲示板数の2倍未満だ。
1枚当たりの単価に着目すると、この12人は1枚当たり「257~775円」の幅に収まっている。突出して請求額が低い議員もいる。上限の23.4%しか請求していない長妻昭氏(7区・立憲民主党)、22.4%の鴨下一郎氏(13区・自民)、23.1%の平沢勝栄氏(17区・自民)の3人だ。
この2017年の総選挙では、東京の各選挙区におけるポスター代の公費負担は、おおむね110万円前後が上限だった。その中で長妻、鴨下、平沢の3氏はそれぞれ25万~26万円の請求である。平沢氏の事務所に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「規定では掲示板の2倍まで印刷できるようになっていますが、うちは実際に使用する枚数に近い数を印刷するようにしています。そのほか、ポスターやビラの写真は同じものを使うとか、工夫もする。長年取引のある下町の業者さんに頼んでいることも安く済む一因かもしれません。過大な発注もしないよう気をつけています」
印刷会社社長「どうやったらそんなに高い金額に」
上限額の20%台で印刷を請け負った都内の会社社長は「個別の取引について話せない」としたうえで、こう語った。
「あの金額でも十分、利益は出る。普通の相場だと思います。紙質やデザイン、インクも見劣りしないはずです。うちの4倍以上の金額で請け負っている業者さんがいる? いいですねえ。そんな商売やっていたら蔵が建ちますね。業者と議員さんがどんな話し合いをして、そんな金額になったかは存じませんが」
前出の新海弁護士は「ポスター1枚当たりの単価が議員の間で大きく違っている。これはおかしい」と言い、こう続けた。
「単価こそが問題なのです。東京選出の衆院議員の場合、250円程度から1200円以上まで5倍近い開きがある。価格差が5倍もあれば、通常の市場ではないし、取引は成り立ちません。岐阜県では、水増し分をプールしたうえで別の用途で使い回していました。単価を実勢価格に近いものにしないと、ポスター代に関する水増し請求疑惑は地方選挙でも国政選挙でも続くでしょう」
衆院議員側の回答「適正に処理しています」
フロントラインプレスは、今回の調査で満額請求した東京の衆院議員9人に「ポスター代の公費負担が上限額に達した理由」を尋ねた。事務所から戻ってきた回答を見ると、「公選法に従い、適正に処理しています」といった“紋切り型”が7人。自らが当事者にもかかわらず、「印刷業者に確認してください」としてひとごとのように答えた議員も1人。「ポスターに特殊加工しているため、単価が高くなった」と具体的な理由を示したのは1人だけである。
日本の公営選挙制度に詳しい日本大学法学部の安野修右・助教はこう言う。
日本大学法学部の安野修右・助教(撮影:穐吉洋子)
「当選した議員の中でさえ、請求額に4倍以上もの差が出るということは、つまり、公費負担制度を悪用し、『税金だから多くもらわなければ損だ』とばかりに動いていると疑われてもやむをえないでしょう。市場原理が働けば、価格は低いほうに収斂されます。ポスター1枚が1200円以上とか、誰もが怪しむ。上限の50%未満が実勢価格かもしれません」
「公選法自体の問題もあります。選管には“捜査”の権限がないから、ポスターの検品といったチェックができない。選管の職員から『不合理なこと、明らかに疑わしいことがあっても立ち入れない』『形式さえ整っていれば受け付けざるをえない』と聞かされたこともある。形式審査にならざるをえないから、候補者はチェックを逃れているんです」
●柏市議選でポスター代金水増し疑惑 元候補が印刷会社を告発
産経 2016.2.16
昨年8月の柏市議選で、同市の印刷会社が選挙ポスター代金を水増しして市に請求した疑惑が浮上している問題で、立候補時にポスター作成を依頼した元候補者の今野正隆氏(63)が15日、詐欺罪で同社の告発状を県警に提出した。県警は告発状を受理し、立件の可否を含めて慎重に捜査を進める。
告発状によると、同社は今野氏のポスター作成費を水増しして市に請求し、現金をだまし取ろうと計画。事前の見積もり額15万8760円の4倍を超える契約金額68万400円と記載した作成契約書を今野氏に交付して市選管に提出させ、同9月に市からポスター作成代金の公費負担分の限度額55万8360円をだまし取ったとしている。
同社は産経新聞の取材に対し、「この件についてはコメントできない」としている。これまでの取材には「水増し請求した事実はない。見積価格からの増額は、相談料などが想定以上にかかったためだ」などと説明していた。
また、同市議選では、他の立候補者の多くがポスターの公費負担分として約35万~55万円を市に請求していることから、今野氏は「他の立候補者についても水増し請求された可能性がある」として、住民監査請求を行う意向を示している。
◇
■告発の今野氏「制度改めるきっかけに」
「『柏市の無駄を省く』と訴えて出馬したのに、こうしたことが平然と行われていて愕然(がくぜん)とした。これ以上、犯罪の片棒を担がされるのは嫌だ」。詐欺罪で印刷会社を刑事告発した今野正隆氏は15日、産経新聞の取材に対し、告発に踏み切った心情を明かした。
今野氏は網膜色素変性症で約5年半前に全盲になった。視覚障害者の生活向上に取り組もうと、昨年の市議選への出馬を決意。選挙ポスターを作成する際、知人を通じて紹介されたのが同社だった。
ポスター作成に当たり、同社から事前に示された見積額は15万8760円。しかし、契約額は4倍以上の68万400円に膨れ上がっていた。同社から明確な説明はなかったが、同社を紹介した知人からは「金額は(同社で契約している)他の候補者に合わせてもらうけどいいか」と告げられた。
疑問を感じながらも、「書類を期限までに提出しなくてはいけない」と考え、落選後の昨年9月に契約書を市選管に提出。これにより、市から同社に公費負担分の限度額55万8360円が支払われた。
契約額と限度額の差額約12万円が未納になっていると思って同10月に確認すると、支払っていないにもかかわらず、同社は差額分の請求書と領収書をその場で同時に渡してきた。担当者は「もともと15万8760円の実際額とは違うので、相殺してもマイナスにならない」と説明したという。
今野氏は「こんなこと(水増し)が常態化していてはいけない。ポスター作成の公費負担分の金額も適正かどうか、制度の見直しを訴えていきたい」と説明する。疑惑が事実であれば、自身も契約書を提出したことで詐欺行為の一端を担ったことになり、今後の捜査次第では同罪に問われる可能性がある。
今野氏は「県警に告発の相談をした際にも、摘発される可能性を刑事に厳しい口調で指摘された」と明かし、「覚悟の上だ。制度を改めるきっかけになればいいと思う」と話した。
●小泉進次郎環境相 “幽霊会社”に高額発注で政治資金4300万円を支出
「週刊文春」2019/12/25 2020年1月2・9日号
小泉進次郎環境相(38)の資金管理団体「泉進会」および、小泉氏が代表をつとめる「自由民主党神奈川県第11選挙区支部」から4300万円以上の政治資金が、実態のない“幽霊会社”に支出されていることが「週刊文春」の取材でわかった。税金を原資とする政党交付金も支出されており、小泉環境相の説明が求められそうだ。
「泉進会」と「第11選挙区支部」の政治資金収支報告書を「週刊文春」が調査したところ、両団体からエムズクリエ(以下エムズ社)に対し、 2012年から2018年までで ポスター代や印刷代などの名目として約4300万円が支出されていた。
小泉氏のポスターに〈印刷者〉として記載されているエムズ社の住所は、千葉県野田市。「週刊文春」取材班がこの住所を訪れると、そこには一軒家が建っていた。エムズ社の表札などはなく、世帯主としてM氏の名前が掲げられているだけ。周辺にも印刷工場はなかった。地方法務局に問い合わせたが、エムズ社の法人登記はされていなかった。
ポスターには「エムズ社」が明記されている
M氏の知人によると、「M氏は長年B社という老舗の印刷会社に勤める営業マン。永田町担当でしたが、すでに退職している」という。
B社の社長が取材に応じ、次のように答えた、
「元々ウチは純一郎さんの代から小泉事務所と取引していました。そのときからMは小泉事務所の担当でした。エムズ社の名前は聞いたことはないが、そもそもBは営業担当だからポスターのデザインや製作なんてできない」
さらに、続けてB社の社長は「個人で請け負っている割には受注額が高すぎるように感じる」と指摘する。たとえば2017年の衆院選における支出。「選挙運動用ポスター印刷」1200枚分としてその代金116万円が計上されている。
「ポスター1200枚であればせいぜい30~40万円が相場です。腕のいいデザイナーを使って高く見積もっても70~80万円。なぜ小泉事務所は幽霊会社にわざわざ相場より高い値段で発注しているのか。もしかしたら、発注額のうち何割かをキックバックされている可能性もあるのでは」
お洒落なポスターだが……
また、エムズ社の下請け業者はこう明かす。
「エムズ社って何もしていないですよ。うちの会社みたいなところに全部投げて、手数料をとっていくだけ」
当事者のM氏を直撃すると……
エムズ社のM氏を直撃した。
――エムズ社は法人登記していない?
「法人登記というより、個人事業主として登録していて、税務申告も毎年しています。小泉事務所サイドからは『株式会社じゃないとダメだよ』と言われましたが」
――実際の製作は外注している?
「看板、たすき、街宣車は同じ会社に発注していて、ポスターは別の会社にお願いしている。まあ昔風に言えば、ブローカーってやつだね」
――受注額が相場より高いと言われているが?
「選挙はキワモノなんです。高いか安いかは、お客さんの判断です」
飄々と取材に応じていたM氏だが、記者が「キックバックはしていないのか?」と尋ねると、語気を強めて、こう答えた。
「そういうことは一切していない」
このエムズ社への約4300万円の支出には、税金を原資とする政党交付金が支出されている。「第11選挙区支部」の現在閲覧できる2014年~2018年の「政党交付金使途等報告書」を調べると、エムズ社への支出のうち、約9割(約1200万円)が、税金を原資とする政党交付金から拠出されているのだ。
なぜ、小泉事務所は、実態のない会社に巨額の発注をするのか。キックバックはないのか。質問状を送ったが、期限までに回答はなかった。
政治資金に詳しい神戸学院大学教授の上脇博之氏はこう指摘する。
「エムズ社への支出額には、血税が原資となる多額の政党交付金が含まれています。この異常に高額の税金が登記されていない幽霊会社に流れていることは、政治資金の適切な使い方とは到底いえない。キックバックなどの疑いをもたれても仕方ない状況を自ら招いている。きちんと説明するべきです」
実は、小泉環境相の不明朗な政治資金の支出はこれだけではない。「週刊文春」12月26日(木)発売号では、交際していた人妻実業家との「不倫ホテル代」を政治資金から支払っていた問題、4度の衆院選で約3600万円の余剰金が消えている問題など、総額約8000万円となる小泉氏の政治資金に関する疑惑を6ページにわたり報じている。
●この負担、減らないの?参院選の公費は530億円!出馬経験者が選挙コストを考える
エキサイト 2019年8月2日
・・・(略)・・・総務省(※1)によると、参議院議員選挙では、前回の16年実施分で、約530億円の公費が使用されました。
・・・(略)・・・これは「1候補者あたり約1億1,500万円」で、当時の有権者数は約1億600万人ですから、「1有権者あたり約500円」となります。かなりの巨額な金額と言えるでしょう。
なお、直近5回分の参議院議員選挙の公費負担は以下の通りで、概ね500億円程度です。
・16年7月:530億円
・13年7月:499億円
・10年7月:482億円
・07年7月:570億円・04年7月:628億円
・・・(以下、略)・・・
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