バングラデシュの首都ダッカ。地元携帯電話会社グラミンフォンが提供する医療相談「ヘルスライン」に「夫が倒れたと切迫した声の電話が入った。受けたのは医者の卵。直ちに「床に寝かせて安静に」などと指示し、救急車を手配した。心臓発作の男性は一命をとりとめた。
携帯を介した住民相談や医療、教育の試みが新興国に広がる。
こうした公共サービスは政府が取り組むべき課題のはずだ。だが、新興国の多くでは政治の混乱や財源不足、行政の腐敗が重なり、整備が進まなかった。ここでも携帯が状況を変えた。
「民」の自発的な結びつきが国家の不備を埋めていく。携帯電話は新興国の新たな可能性を存分に引き出している。
3間にわたって「携帯が変える新興国」と題し、携帯電話が経済発展の一翼を担う実情を伝えさせてもらいました。
記事の作成にあたっては「グラミンフォンという奇跡」(英治出版刊)を参考としました。