村山浅間（むらやませんげん）神社 in 静岡県富士宮市

富士宮市村山に鎮座される「村山浅間（むらやませんげん）神社」。御祭神は『木花開耶姫（このはなさくやひめ）』。
左座に『大山祗命、彦火々出見命（ひこほほでみのみこと)、瓊々杵命（ににぎのみこと）』、右座に『大日霊貴（おおひるめむち）＝天照大神・伊弉諾尊（いざなぎのみこと）・伊弉冉尊（いざなみのみこと）』を配祀。

社伝に【孝昭天皇2年に富士山中腹の水精ケ岳に創建され、崇神天皇朝に神領地や神戸を賜り、応神天皇朝に社殿修造、大宝元年（701年）に現在地へ遷座したという。中世になると末代上人が富士山を修験の霊山として開くが、その末代が現境内地に堂舎を構え、以後富士山に対する神仏習合の地として発展したという。】

富士山村山口登山道の要所を占め、元浅間大社の境外摂社で、全国にある浅間神社の一社。神仏習合の地の名残として「富士根本宮」と号し、また別名「富士山興法寺」とも称します。　明治の神仏分離により「境内社：富士浅間七社」を相殿として「浅間神社」が造られました。

鳥居脇、石段の上左右より神域を守護されるのは、どこか異星人を思わせる容貌の狛犬さん一対。「昭和五庚午年（1930） 建立」の刻。

低い頭頂部、分厚いまぶた、水平に伸びた耳、そのどれもが独創的で、非常に興味をそそられます。

江戸流れの系統である事がわかる美しい尾を足元に引き寄せ、気難しい学者の容貌で境内の一角を見つめる吽形さん。引き締めた口元が何かもの言いたげで、そのまま捨て置けない気分に・・

お堂の趣を見せる拝殿

向拝の龍は底抜けに大らかな顔で笑っておられる　(⌒∇⌒)。

朱の鳥居の向こうに続く参堂の先には、末社「高嶺総鎮守（大棟梁権現社）」が鎮座。「富士山興法寺」を形成した堂社の一つで、かつては富士修験の祖末代が祀られていましたが、神仏分離令により祭神を『大己貴命』に改め、「富士大神社」～「高嶺総鎮守」と改称。

静岡県指定天然記念物「村山浅間神社の大スギ」。

静岡県指定天然記念物「村山浅間神社のイチョウ」。静岡県内で最大級の幹周を持つイチョウは、保護柵の中で支え木に護られ、枝一杯の緑の葉陰を作っています。

境内には富士登山関連の碑が数多く奉納されていましたが、何故か別格で目立っていた碑。　イギリス人で初代駐日総領事を勤めた『ラザフォード・オールコック』。1860年に外国人として初めて、富士山村山口登山道から富士登山を行ったそうで、その「富士登山150周年記念碑」なんだそうです。

「村山水道完成記念」碑、この緑に囲まれた山間の地域では、きっとすごいでき事だったに違いありません。

か細くはかなげで、それゆえに美しく初冬の空を彩る「冬桜」。標高約500ｍの神域を優しく、愛おしむがごとく包み込む御祭神の姿に重ねて・・・

境内の随所で目にするブルーシートのわけ、私たちは迂闊にもずっとその理由に気づきませんでした。
あの未曾有の大災害３・11からわずか四日後の、平成23年3月15日22時31分、静岡県東部地震が発生。　富士宮市では最大震度6強を観測し、この地震によって「村山浅間神社」をはじめ多くの場所に被害が及びました。
石灯籠の倒壊、本殿前の石垣は広範囲に崩壊。その応急処置がこのブルーシートだったのです。
甚大な災害でありながら何故この事実を知らなかったのか・・何故他では気がつかなかったのか・・　何故、震災から八ヶ月も経ちながら、文化財であるはずの神社に、修復の手が届いていないのか。
報道の圏外に置かれた災害が、いかに人の目に触れずに終わるのか・・これもその例なのでしょう。　もちろん、このブログを書いている時点で、神社はすっかり修復され、元の姿を取り戻したと聞き、その事に何よりも喜びを伝えたい思いで一杯です。

本当であれば「大日堂（旧興法寺本堂）」や「護摩を焚いた聖壇」「水垢離場」も見たかったのですが・・　震災の傷跡もまだ生々しい状態では迂闊に立ち入ることもはばかられ、そのまま参拝を終えました。

参拝日：2011年11月11日

「村山浅間神社」は、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一つとして、参拝から二年後の2013年、UNESCOの世界遺産リストに登録されました。