茂幸雄著『自殺をくい止めろ!』を読んだ、自死を減らすための国民的な努力を
深まりゆく秋、食欲の秋でもあるが、物思う秋だ。そんな季節の中で、茂幸雄著『自殺をくい止めろ! 東尋坊の茂さん宣言』(三省堂刊)を読んだ。この本の表紙には、「誰にでもできる自殺防止・支援とは?250人以上の自殺企図者の叫び声に耳を傾け、自殺を食い止めてきた東尋坊の茂さんが今全国民に呼びかける」と書かれている。
昨年度・2012年度の自殺者数は2万7858人となり、15年ぶりに3万人を下回った。中でも「経済・生活」を理由とする自殺者が大幅に減少した(前年比で18.5%減少)。それをもって、内閣府は「経済環境が底打ちした影響もあるのではないか」(自殺対策推進室)とみている、との報道もある。
そうだろうか、私はそうは思わない。3万人を割ったとは言え、3万人近い方々が、自ら死を選ばざるを得ないというのは異常な事態だ。加えて、「自殺者」は減少していても、「変死者」は増加している数字もある。
「警視庁が公表している『死体取扱状況』を調べてみると、2011年度の変死体数は18000人を超えている。(注意:東日本大震災の死亡者数は含まない)。2012年度の詳細はまだ判らないが、その内の何割かが自殺であったと仮定すれば、あっさりと自殺者の減少分を補うことになってしまう可能性が有る」との指摘もある。警察が取り扱った総死体数は2011年度で17万人にも上る(10年程前は12万人程度だった)という。まさに異常だ。
茂さんのような体を張った努力が、今求められていると考える。茂さんは、ご著書の中で、「『自殺の名所』と言われている自殺多発場所に対する対策の怠慢」を始め、精神科医や警察や報道機関、そして行政などの怠慢を指摘している。納得する。
私も何より政治・行政の怠慢を指摘したい。国民一人一人が、心豊かに暮らせる環境を整備することは、政治・行政の責任だと考える。この国から、一人も自死者を出さないための努力・施策の展開を心からお願いしたい。