北海道各地でヒグマの出没が相次いでいる。専門家は要因として、ヒグマの積極的な駆除が行われなくなったためとしている。つまり、かつてはヒグマを人間に危害を加える害獣として位置付け、目撃されるやハンターが出動し撃ち殺してきたが、今は積極的な駆除を辞めたことから、生息限界を超えたということらしい。
まだ幼少の頃、数十年前、今でこそ野生のキツネやエゾシカは当たり前に人前に現れるが、昔はめったに姿を見せることはなかった。昔の方が生息数が多かったにもかかわらず、人前に姿をさらさなかったのは、人間が生息エリアに踏み込んでこなかったためというのは、素人の考えなのか。それとも、実は人知れず狩猟行為が行われ、野生動物が粛清されていたため、昔の方が生息数が少なかったのだろうか。エゾシカについては一時乱獲されていたという話は聞いたことがあり、保護動物とされてから激増したという。ヒグマも同じ道を辿っているというのが専門家の見方のようだ。
エゾシカは農作物を荒らし、ヒグマは家畜や人を襲うという現実があり、今後、行政はどう行動するのか。野生動物の生息を尊重し、人間の側が彼らとの距離を徐々に離していくのが理想だと思うが、難しいところだ。人を襲えば駆除もやむを得ないところだが、森に分け入って彼らを駆除するのだけはやめてほしい。
登山や釣りや山菜取りに行って襲われるのは自己責任であり、ヒグマは悪くないという原則だけは守ってほしいものだ。それにしても、ここまで市街地にまでヒグマが出てくるとは、いったい山で何が起こっているのか。
とりわけ、札幌の場合は乱開発のツケなのは明らかだ。今さら、住宅を壊して森に戻すのは無理だろうが、せめて熊が生息する山と背中合わせの南区や中央区についてはヒグマの行動域に住宅地侵入を防ぐ防護柵を設けるとか、何か策を講ずるべきだろう。もちろん、人間の側もこれ以上、山を荒らさない、これ以上の宅地開発はしないという意思表示も必要だ。今のところ、札幌市は指をくわえてただ静観しているだけ。経済優先のオリンピックより、真剣に自然との共生を考えるべきじゃないのか。