21世紀中年

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ドキュメント「キム・ルメのダービーへの道」

2023-05-27 19:11:01 | ヨレヨレ競馬ライフ

 すべてのホースマンにとってダービーは目標であり、憧れである。ダービーに出走するだけでも名誉であり、それが勝てるかもしれないとなれば、その緊張感たるや想像を絶するものがる。

 そんなレースにこの10年で3度も勝っているのは友道師、今年はサトノグランツで挑む。鞍上の川田にとってもマカヒキ以来のチャンスといえる。

 そして6度、栄冠を手にしている武豊も有力馬ファントムシープで7度目のダービージョッキーを目指す。

 ダービーは実力だけでは決して取れないタイトルであり、運やツキも後押しして、やっと手にすることが出来る栄冠であるにも関わらず、それを何度も手中に収める調教師や騎手はもはや神だ。

 今年、悲願のダービーに手が届きそうな調教師は手塚師と木村師だ。手塚厩舎が送りだすソールオリエンスは皐月賞を驚異の末脚で差し切り、圧倒的1番人気に推されている。鞍上は横山武史、一昨年エフフォーリアの2冠目をあと一歩で逃しており、今度こそとは意気込む。

 一方、木村師は昨年、皐月賞2着のイクイノックスを擁しルメールとコンビで挑むも、武と友道の神コンビが送り出したドウデュースを捉え切れなかった。そんな木村師とルメールのコンビが、今年はスキルヴィングで挑む。

 スキルヴィングの臨戦過程を見れば、キム・ルメコンビがいかにダービーにこだわってきたかが良くわかる。

 スキルヴィングの父はキタサンブラック、イクイノックスと同じである。たぶん、木村師は直感でこの馬で今度こそダービーを勝ちたいと誓ったのだろう。

 デビューは10月5日、師が選んだのが府中の芝2000mだった。出遅れが響き2着に甘んじたが、同馬の素質を信じ2戦目も府中の芝2000mに出走させ、後方から33秒2の目の覚めるような末脚で圧勝した。この勝利で、コンビの目の先にはもうダービーしか映っていなかった。

 年が明けて2月、3戦目に選んだのはダービーと同じ府中の芝2400mゆりかもめ賞だった。そこでも同馬は最速の末脚で圧勝した。この時すでに青葉賞からダービーというプランが出来ていたことは想像に難くない。クラシック一冠目の皐月賞には目もくれず、ダービーの権利を得るために2カ月半後の青葉賞を目標に調整する。もちろん、最終目標はダービー本番であり、八分の仕上げでトライアルに臨む。すべてプラン通りだ。それまで、デビューから同馬の馬体重をみれば、ち密な調整過程が良くわかる。4戦すべてが524kなのだ。そんな馬はこれまでいただろうか。しかも、それは100%の仕上げでないことは明らかだ。青葉賞は八分のデキでも勝てる、目的はあくまでもダービーに向けての試走なのだ。青葉賞の結果みれば、そのあっぱれな調整ぶりが手に取るようにわかる。スタートが良くないのは織り込み済みで、相手関係から楽に差し切れると読んでいた。上り34秒1は最速とはいっても2着のハーツコンチェルトとタイである。前走では34秒0で上がっていたことを考えれば、多頭数の今回は33秒台の脚を使ってもおかしくないが、あくまでも試走であり、余裕で勝って権利を取ったレースだったのだ。

 青葉賞馬がダービーで勝てない理由は、引退した名伯楽藤沢師が若い馬が月に2回も2400mを走るのは厳しいと語っていた通りだ。しかし、スキルヴィング陣営はあえてその厳しい道を選んだ。それは無理せず余裕残しで青葉賞に勝つ自信があったからに他ならない。

 かくしてキム・ルメコンビは、すべて予定通りのプランを消化し、無事にダービーにコマを進めることが出来た。デビューしてから初めて100%に仕上がったスキルヴィングを後押しするように、当日は良馬場は間違いない。

 木村師にとって今年のダービーは、もう憧れではない。勝つためにやるべきことをやってきた。奇しくもWBCの決勝戦に臨む際に「憧れはいらない」とナインを鼓舞した大谷の言葉が甦る。

 無事に2400mを走り切った先に、キム・ルメコンビを讃えるダービートレーナー、ダービージョッキーの称号が待っている。

 そんなわけで勝手な想像でドキュメンタリーにしてしまったが、あながち外れてはいないだろう。もちろん、明日はスキルヴィング本命で勝負する。

 相手はソールオリエンスを筆頭に皐月賞上位4頭とサトノグランツの5頭。

 

 

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