tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

物価論議は実証分析をベースに その3

2013年05月30日 11時26分40秒 | 経済
物価論議は実証分析をベースに その3
 前々回、前回の分析から今日の状態を見ると、どういうことになっているのでしょうか。先ずは金融緩和の効果です。アメリカ並みの金融緩和をしたからアメリカ並みの2パーセントのインフレ・ターゲットが現実となるとは言えないようです。

 現実の動きで見れば、金融緩和の効果はほぼ2割の円安($1=¥80→$1=¥100)に現れました。しかしまだ消費者物価(購買力平価)の動向で見れば円高解消ではなく(正確な数字はありませんが)$1=¥110ぐらいでないとデフレ圧力は消えないでしょう。

 金融が緩んだから物価が上がるのではなく、金融緩和が円安をもたらし、円安によってデフレ圧力が弱まるのです。あと10円の円安で、インフレへのスタートラインという所でしょうか。$1=¥120になれば、放っておいても、外国より安い日本の物価は上がるかもしれません。

 しかし、日本経済自体の力で毎年1~2パーセントのインフレにするためには、それだけの賃金コストプッシュが必要になります。これが実現されるためには、経済成長率(厳密には実質国民経済生産性の向上)プラス1~2パーセントの賃上げが必要です。

 今年、連合の要求は「定昇維持」でしたが、ボーナスは満額回答も多く、その分平均賃金は上がるでしょう。しかし3月時点ではまだ賃金は前年同期比マイナスですから、今すぐインフレ到来とはいきそうにありません。
 経済成長は多分プラスになるでしょうから、2パーセントのインフレ・ターゲット達成は今年度はおそらく困難で、今年の最低賃金審議や来年の春闘の結果待ちでしょう。

 問題は、来年度以降です。連合も、今期の最低賃金の大幅アップを厚労省に働きかけたようです。来年は、それなりの賃上げ要求をしてくるものと思われます。
 企業としても、雇用増、非正規労働者の正規化などの労働条件改善は考えるでしょう。従業員の教育訓練の再建も必要で、これらは人件費としてトスとアップになります。

 そうした結果として、経済成長を上回る賃金(厳密には人件費総額)上昇があれば、継続的なインフレが起きることになります。
 現状でも、主要国は大体1~3パーセントのインフレですから、その時日本は「普通の国」になるということでしょう。
 
 その時点で初めて、日本独自の問題、例えば、巨大な国債発行残高などへの具体的な処方箋の検討といった問題が論議可能になるのではないでしょうか。