tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融政策の限界を理解しよう

2016年02月08日 10時33分44秒 | 経済
金融政策の限界を理解しよう
 経済政策としては伝統的に財政政策と金融政策が柱になっています。
 日本では、国債の大量発行で国債残高は1000兆円超(GDPの2倍)となり、財政政策は困難ということで、このところは金融政策で経済の活性化を図ってきました。
 
 この効果は極めて大きく、2度にわたる、いわゆる日銀の異次元金融緩和で2013年春には$1=¥80から100円へ、2014年秋には$1=¥100から120円への円安が実現しました。
 プラザ合意、リーマンショックによって異常な円高に追い込まれていた日本経済は、これで息を吹き返したというのは、皆さんが現実に経験されたところです。

 ところが、日本は世界最大と言われる1600兆円の民間貯蓄を持ち、さらに毎年GDPの3パーセント前後の経常黒字を出しているというころで、何はともあれ「円は安全通貨」という認識は世界の金融業界、国際投機資本の中では定着しています。

 以前は「有事のドル」と言われ、何か国際経済の不安があればドルが買われたあのですが、アメリカは万年赤字国になり、また軍事力の時代でもなくなったのでしょうか、今は何かというと「さしあたって円買い」ということになっているようです。

 日本としては、折角円レートがいい水準に来たのに、また円高になったら元も子もなくなるということですから、何とか$1=¥120あたりで維持したいと考えます。
 現政権も「アベノミクス」の成功のためには、円高は最大の障害と考えているでしょう。ということで、今回の日銀のマイナス金利導入も円高阻止の一策です。

 ところが、発表直後は効果覿面かと思われたマイナス金利も、数日で色褪せてきてしまったようです。
 今の金融市場は、ごく短期の損得勘定が中心ですから、日銀がいつ何をやるかと神経質で、何かあると過剰反応し、ビジネスチャンスを拡大して活用するようですが、基本的なものか一過性のものか、それなりに見分けているようです。

 今回のマイナス金利は、それで日本経済が大きく変わることがないようだと理解すれば、効果は一過性で、あとはもう手がないのではないかと逆に円高を試すことになるのでしょう。

 もともと金融政策というのは、財政政策のように、実体経済の直接働きかけるものではありません。金融という手段で間接的な影響を求めるものです。

 異次元金融緩和にしても、金融緩和で実体経済が動くのではなく、まず金融市場(投機筋)がびっくりして円レートの水準が円安に変わり、それが実体経済に影響を持ったというのが実態です。新しい為替レートを主要国が受け入れれば投機筋は手を引きます。
 
 しかしそれを3回もやったら、為替操作と言われること必定です。それでECBもやっているからと今度はマイナス金利ということなのでしょうが、130円、140円の円安はないと読まれてしまえば、効果は一過性で、こうした結果になるのではないでしょうか。

 黒田総裁は、「まだ手段はいくらでもある」と言わなければならない立場でしょうが、実体経済の健全性を前提に考えれば、金融政策もそろそろ限界でしょう。
 財政政策も金融政策も限界ならば、第三の経済政策を考えなければなりませんが、経済学の教科書には書いてありません。

 安倍総理は「1億層活躍」をキャッチフレーズに、新三本の矢を掲げ、国民を元気づけようとしていますが、「そんな社会になれば結構」と思っても、現実にやっている政策と目標が「どう繋がっているのか解らない」という声ばかり聞こえてきます。

 「1億層活躍」「GDP600兆円」達成のために、安倍政権は具体的に、一体これから何をやろうとしているのでしょうか。