tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

まだまだ危ないアメリカ:良識の健在は下院で

2018年11月08日 12時44分41秒 | 政治
まだまだ危ないアメリカ:良識の健在は下院で
 世界が注目していたアメリカの中間選挙ですが、アメリカ国内でも関心が高かったことは投票率が示しています。

 アメリカの大統領選でいつも思うのは、ポピュリズムが嵩じるとこんなことになるのかといった感慨です。
 中傷合戦は当たり前ですし、言葉も過激過ぎるようです。報道画面の最後は単発のスローガンに「熱狂」する支持者たちがクローズアップされることになっています。

 オバマさんのときは「 チェンジ」、トランプさんの時は「アメリカ・ファースト」というと支持者が熱狂するのを見て、日本の選挙ではこんな光景は見たくないと思ったものです。
 国政の根幹に関わる選挙なのです。冷静に、真剣に、慎重に中身を考えて投票するもので、キャッチフレーズに熱狂などは異常に見えたのです。

 今回もトランプさんについては全く同じでしたが、下院で反トランプが過半数を占めたことは、アメリカの良識が健在だったと理解して、やっと安心したところです。
 上院も全取換えだったら共和党過半数は無理だったのではないかなどという意見もあるようですが、アメリカが正気を取り戻してくれることは世界にとって有難い事です

 振り返ってみれば、戦後国連を主導し、戦争のない世界を目指し、民主主義と自由経済、国際協力(協調)の戦後世界を創ろうと努力した頃のアメリカは素晴らしかったと言えます。
 日本は、そのリーダーシップに感じ、よき フォロワーシップ を発揮したのでしょう。

 しかし、1970年代以降、アメリカ経済の赤字化の進行とともに、いわば「貧すれば鈍す」のスパイラルが始まったのでしょう。
 とはいえ、アメリカはその中に発展のための多様な開発力を秘めています。今その典型としてGAFAが言われます。(一昔前は「金融工学」でしたが、これはリーマンショックで破綻を経験しました)

 こうした優れた開発力を秘めているにもかかわらず、トランプさんは、アメリカの窮状(赤字)は、外国のせいだとしてアメリカを被害者に仕立て、被害者意識で人心を固め、孤立を辞さないアメリカ中心主義を選択しているのです。

 経済的には、これは衰退への道という事は明らかですが、一旦被害者意識の虜になりますと、自国中心、加害者は外国という単純な図式に熱狂する人たちが出ます。ポピュリズム化した民主主義の、まさに危険な状態です。

 今回の中間選挙で、下院で共和党が敗れたことは、アメリカにとってはまさに「救い」だったのではないでしょうか。
 トランプさんは上院を巧みに使って、従来の路線をさらに強力に進めようとするかもしれません。
 しかしそれはアメリカの更なる衰退の道であり、世界にとっては混乱に拍車をかけることにあるのでしょう。

 健在を証明したアメリカの良識に期待し、今後のアメリカが、覇権国、基軸通貨国として、より良い地球社会の実現の方向に回帰してくれることを願うばかりです。