tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

改めて統計調査の重要性の再認識を

2019年01月17日 20時26分06秒 | 労働
改めて統計調査の重要性の再認識を
 このブログでもよくグラフを出します。数字も並べることが多く、出来るだけご理解いただけるように並べているつもりですが、如何でしょうか。

 その中でも統計数字の「在り方・使い方」について書いたのは、2つで、1つは裁量労働にについて政府の出した数字が出鱈目だった時、「 統計調査の重要性の再認識を」を書きました。その時の趣旨は、ああした「業務統計」の様な不確かな物を法律制定の根拠にするのは止めるべきだという趣旨でした。

 その時は、基幹統計の様な母集団が決まっていて、統計理論によって信頼性が確保されているもの(誤差率の範囲が推定可能)なら間違いないが・・・、と言う趣旨でした。
 2つ目の今回は、その基幹統計、「毎月勤労統計」に 誤りがあったという事態が起きてしまったという事になるようです。

 昔の総理府統計局、今の総務省の担当局は、統計理論の専門家を十分に擁しているはずです。間違いなど起きるはずがないのになぜ起きたかを追ってみましたが、これは、統計理論に関わるような高度なものではなく、実は、ごく単純な関係部署間の連絡ミスか手抜きの結果だったように思われます。

以下は、これまでの報道から得られる情報を使った、多分こういう事だったのではないかというこのブログとしての推論です。(「毎月勤労統計問題は整理できなくなりました」(1/11付参照)
 
 報道によれば、東京都の500人以上に事業所は数が多いから、サンプリング調査で十分正確な数字が出るから、事業所にも手数をかけ、事務処理も大変な全数調査からサンプリングに変えてもいいと総務省は考え、統計理論によって抽出したサンプルを提示したようです。

 しかしそれを正式に認めてもらうのが大変だったからでしょうか、2015年以降「内々でやっていた」ようです。そのリストは厚労省に行き、実際に調査を行う東京都に行き、その通りに調査され、その数字が調査結果として出てきたときに、(全数調査を黙ってサンプル調査にしたものですから)どこかの段階で全数調査として報告していたのでしょう。

 本来なら、1400ある事業所のうちの500事業所だけのサンプル調査ですから、事業所数を1400社に復元して報告すべきだったのです。
 受け取った方の統計処理では、全数調査で500事業所ですから、東京都の従業者500人以上の事業所は500だという統計処理になります。結果として900の事業者が統計から落ちたのです。

 東京都の500人以上の事業所はおおむね賃金水準は高いですから、高い900事業所が抜け落ちた集計結果の平均賃金水準はその分低くなります。
 それを基準にした失業給付や労災給付が低くなるという事になり、差額をこれから支払うことになるわけです。

 官房長官は違法の疑いと言いましたが、法律に違反して、サンプル調査にしたのであれば、サンプル調査にしたのですから1400事業所に復元する手続きも法律違反でやっていれば、「毎月勤労統計」の連続性は担保され、遡って、追加給付といった事は起きなかったことでしょう。

 統計理論的には十分可能なことを、何故、正式な手続きをとらずに内々でやっていたのか。正式な手続きが大変だったからでしょうか。
 その嘘が全数調査という嘘を呼び、嘘の連鎖の結果が大変なことになったという事と思うのです。
 最高の厳密さを必要とする官庁統計に関わる部局で、こうしたことが起きるという現実をどう理解すべきでしょうか。