tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカの貿易赤字史上最高

2022年02月09日 22時27分38秒 | 経済

アメリカの貿易収支の赤字が昨年1兆ドルを超え、史上最高を記録したういニュースが入って来ました。

一昨年より18.3%増えて1兆906億ドルになったそうで、そのほぼ3分の1が対中国の貿易赤字という事です。

アメリカの貿易収支は以前から赤字続きですから「バイ・アメリカン」などといったスローガンは随分長いこと聞いていますし、バイデンさんも国内の労働者のためにも国産品愛用を言っているようですが、国民は安くてよい外国製品を買っているのです。
 
国民は労働者であると同時に消費者でもあるわけで、労働者としては国産品を買ってほしいけれども、自分がモノを買う時はやっぱり安い方がいいという事で中国製ということなのでしょうか。

トランプさんなら一方的に「中国はアメリに物を売って儲けている」「お陰でアメリは損ばかり」と理屈抜きで国民を煽り、また多くのアメリカ人も、多分自分も中国製品を買いながら「中国はけしからん」と信じてトランプさんを支持するのでしょう。

バイデンさんのように、真面目に考えれば、結局アメリカの製品の競争力が落ちているからという問題の原因を見て、財政政策を活用してアメリカの生産力を立て直そうとするのですが、大幅な財政赤字には反対という意見もあり、本当に大変です。

今は昔ですが、アメリカも1960年代辺りまでは、圧倒的な生産力、競争力を持ち、覇権国、基軸通貨国として君臨したのですが、60年代後半になりますと、先ず雑貨などの軽工業製品から香港や日本の製品が安く品質も向上し「 青い目をしたお人形は アメリカ生まれのセルロイド」などと歌われたアメリカ製品に追いつき追い越し、その勢いは、繊維製品に及び、更に鉄鋼などの基幹材料から自動車、半導体におよびました。

こうしてアメリカ製品の国際競争力は低下を続けているので、アメリカの貿易赤字は放置すればますます大きくなります。

これに対してアメリカのとった政策は、為替政策です。1970年代に入ってまず、アメリカは、固定相場制を止め、世界は変動相場制になりました。
競争力の強い国の通貨は高くなり、弱い国の通貨は安くなるといことで、アメリカは競争力を回復しようとしたのでしょう。

然し為替レートはマーケットで決まりますから、必ずしもアメリカの望むようにはいきません。
一方日本などは、競争力を磨き、激しくアメリカを追い上げ、日本はGDP世界第2位になりました。

貿易赤字がなかなか減らないアメリカのとった政策は日本に円高を認めさせることで、これは1985年のG5でプラザ合意として日本も了解し、その後2年間で円は対ドルで2倍に切りあがり、日本は競争力を失い長期不況に陥って未だに経済低迷です。

アメリかの赤字は少し減りましたが、その後アメリカを激しく追い上げているのは中国です。人口14億の超大国で、急速に経済を伸ばしGDP世界第2位になり、世界の工場といわれ、アメリカの貿易赤字の最大の原因国となりました。

アメリカは中国にも、人民元の切り上げを求めましたが、然し中国は日本の経験を学び応じませんでした。結果は米中貿易戦争に突入ということでしょう。

冒頭のニュース「アメリカの貿易赤字史上最高」というのは、こうした状況の中で起きていることです。
このまま推移すると、どういう事になるのでしょうか、もう少し見ていきたいと思います。