tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国民負担率と政府の信用

2022年02月18日 22時16分22秒 | 政治
政府が今年度の国民負担率が48%になる(実績見込み)と発表しました。

国民負担率というのは、国民所得の中の何パーセントを、税金と社会保険料という形で、国民が政府に納めているかという数字です。

サラリーマンにしてみれば、給与の明細表の中で、所得税、地方税、諸種の社会保険料として一体何%が天引きで取られているかという数字です。

48%といえばほぼ半分ですから、給料もらっても手取りは少ないなという現実と重なるものでしょう。
半分という所は藩幕時代の「五公五民」と同じだなという感じを持つ方もおられるかもしれません。

ところで、ご承知のように、国民負担率という事になりますと、北欧諸国は70%前後と高い事が有名で、ヨーロッパ諸国が50~60%、アメリカが一番低くて30%ほど、日本はヨーロッパとアメリカの間で35~40%前後というのが従来の常識でした。

その日本が50%近くになったという事は、日本がヨーロッパや北欧のような、社会保障の進んだ国になって来たのかという事になるわけですが、高齢化で社会保障負担が高くなっているという意味で、それもそうかなと言えないわけでもない面もありますが、どうも少し違う様でもあります。

というのは日本の場合、積極的に社会保障を充実させて、福祉国家に近づくといった政策での結果国民負担率が上がった、と言うよりは、世界一の高齢化のスピードのせいで、否応なしに社会保障負担が大きくなったという面が大きく、社会保障の中身は、年金に見ますように、次第に削られていくといった状況です。

更に言いますと日本の場合は、税金や社会保障負担という形で国民が拠出するのではなく、政府が国民からカネを借りて財政を賄っているという面が大変大きく、そのために国債残高が異常に大きくなっているという現実があります。

国民は、税金を払うのは嫌だが、カネを貸すなら(利息が安くても)まあいいや、いずれ返してもらうのだから、税金で取られてしまったら無駄遣いされたらアウト、という感覚なのでしょうか。

政府の方は、税金で取ったら国民が使い道にうるさいだろう、借りると言えば手軽に貸してくれるから余程自由に使えるという感覚でしょうか。

そんなこんなで、国債残高は世界が驚く巨大さ(GDPの2倍)になっているのです。
財政学には、当然、国債発行額も結局は国民のカネを政府が使っているのだから(いずれ返済のためには増税しなければならないのだから)実質的には国民負担率の中に入れるべきだという事で、『潜在的国民負担率』という言葉があり、これは通常の国民負担率に国債発行額の分を加えたものです。

政府(財務省)もそれは解っていて、今回も2021年度の48%に、国債発行分を加えた潜在国民負担率も発表していて、それは61%でまさにヨーロッパの国民負担率の水準に到達しています。

コロナのせいもあるのでしょうが、そろそろ北欧並みに届くかもしれないなどと驚く水準です。
北欧諸国の国民負担率が高いのは、国民が「それだけ負担しても、政府は国民の必要なことは確りやってくれるから」と政府を信用しているからと言われています。

日本の場合は、政府に納めてしまったら、何に使われるかわからない。貸すのなら返してもらえるから、と政府をあまり信用していないからでしょうか、それとも、国債は安全だと政府を信用しているからでしょうか。