tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

物価問題の先行きをどう見るか

2024年11月16日 21時10分50秒 | 経済

最近、大手スーパーの業績不振が報道されています。現場の実感としては仕入れ価格の上昇と、最近の日用品の買い控えに対する値下げ戦略の挟み撃ち状態の中での苦戦といった声が聞かれるようです。

このブログでは物価については、輸入物価、企業物価、消費者物価指数,それに消費者物価指数については、総合から除く生鮮食品、除く生鮮食品とエネルギーといった形で

、ほぼ毎月追いかけちますが、今回は改めて物価が上がりそうという心配が本当にあるのかどうか、統計のデータから現状を見てみたいと思います。

一昨年から昨年にかけて特に日用品や食品の値段が大幅に上がり、実質賃金が25か月も連続で前年比マイナスという記録を作りましたが、この物価上昇の大波も、昨年の秋から鎮静化に向かい、最近は国内インフレを示すとみられる「生鮮とエネを除く総合」は年率2%程度に収まるまでになり、日銀も政策金利引き上げに動きました。

ところがこの秋に入ってコメの値段が上がるという全く政策の過ちとしか言えない問題が起き、さらに物価を下げていたエネルギー産業への補助金も夏に終わり、政府の物価政策の混乱から、物価上昇再燃の声が出てきているのです。

そこで客観情勢をみましょう。

日本の物価上昇の要因は大きく2つです。1つは輸入価格の上昇です。食料自給率の低い日本、エネルギーも食料も輸入に依存です。これが上がれば日本中物価は上がります。(これには国際的な値上がりと円安による日本だけの値上がりが含まれます)。

もう1つは賃金水準です。賃金が生産性以上に上がればその分コストインフレが起きます。これは国内インフレです。

ところで、1年前から物価は落ち着いて来ていますから、過去1年間の輸入物価と企業物価の動きを見ましょう。

                                             資料:日本銀行 

去年9月から今年の10月まで輸入物価(円建て)は1.5ポイント、1.4%ほどの上昇です。赤い線の契約通貨建てでは0.7ポイント下がっています。この差が円安によって上がった分です。

気になるのは5月から7月までの4か月、青色の円建ての線が高かったので、その辺りの高かった原材料や飼料、エネルギーなどが今になって小売商品に被って来る可能性はあります。ただしそれは何か月かすれば消えるでしょう。

灰色の線の企業物価を見ますとこの間3.9ポイント上がっています。これは経済学では「生産性を越えた賃金の上昇分というのですが」利益が物価を押し上げても同じこと起きます。どちらが主因かは、法人企業統計などで分析すれば解るかもしれません。

いずれにしても、この1年間では、基本的に日本経済がインフレになるような事態は起きていないことが解ります。

お米の価格が上がったことは米作農家の所得が増えたことになるでしょうし、ス-パ=のマージン率が低くなったことは,スーパーの利益が減ったことで吸収されて、産業別、業種別,企業別、地域別、規模別・・などのプラス・マイナスはあっても、全体としては大きな動きはなかったという事でしょう。

こうした点に十分気を付けて経済を運営していけば、消費者物価まで含めてみても、物価の大きな動きはなさそうだと言えそうです。

ただアメリカ次第ですが、円安になるか、円高になるか、これが大きく動くと、影響は大きいと思います。


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