tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

基幹労連12000円要求方針、鉄鋼隔年春闘方式見直しも

2023年12月20日 15時16分36秒 | 経済
来春闘に向けて基幹労連は、月12000円以上という要求方針案を示したという報道がありました。

12000円以上というのは今春闘の3500円に較べれば3倍以上、過日取り上げました金属労協の10000円を超える大幅なものです。

基幹労連は、鉄鋼、造船重機、非鉄金属を中心に、建設、航空宇宙、産業機械などの分野を要する基幹産業の産別労組です。
鉄鋼労連はかつては春闘のリーダーで、鉄鋼産業の賃金決定は春闘の全体に大きな影響を持つ存在でした。

第一次石油危機の際には、当時の宮田義二委員長(のちの松下政経塾長)が経済整合性理論を提唱、年率22%のインフレの克服を可能にし、「ジャパンアズナンバーワン」の基礎づくりにも貢献しています。

あの年、急激なインフレの中で、更なる大幅賃上げを求める労組が殆どだった中で、敢えて賃金インフレ抑制のために、大幅賃上げ論を抑え、日本経済の安定化を考えた決断は、経済整合性理論という言葉と共に、労使関係の歴史に大きな足跡を残しました。。

その鉄鋼労連を主要な核とした基幹労連は、世の大勢に流されるのではなく、その時代のあるべき姿に整合した理論と活動方針を持つという明確な意識を持っているようです。

連合が今春の要求に「以上」を付けただけの中で敢えて、今の日本に要請される労働組合の行動、適切な水準の賃上げ要求の重要性を認識しての方針決定かと思量するところです。

同時に、日本経済の安定、労使関係安定の中で試みた長期賃金協定を目指す隔年春闘も、内外情勢波乱の中では、単年春闘に切り替えるという方針も、臨機に状況変化に応じ適切な判断をするという意味では、同様な視点からのものと理解できます。

金属労協の10000円以上、基幹労連の12000以上という数字の中で、連合の定昇込み5%以上という方針は次第に影が薄くなりそうですが、多くの中小企業を傘下に持つ連合の組織を考慮し、些か慎重に過ぎたという感も持つのではないでしょうか。

勿論、金属労協としても基幹労連としても、個々の企業の労組は殆どが連合傘下でしょう。
連合も「以上」とついているからいくらでもいいという事ではないでしょうが、春闘のキックオフは新年に入ってからですから、何か意思表示が欲しいところです。

特に、「公正取引委員会」が、賃上げによるコスト上昇を価格転嫁する際の行動指針を発表しているというその後の状況変化も勘案すれば、中小企業の賃上げについては、「賃金支払い能力」の束縛は、来春闘では「取り払われた」という事でしょう。

中小企業労使のためにも、より柔軟な賃上げ要求基準を考えても良い、あるいは「考えるべき」という判断があってもいいのではないかと思われます。

中小企業の場合は、平均賃金水準の低さから、賃上げ率は高く見えても賃上げ額は低いのです。「公正取引委員会」の指針は、中小企業の人手不足、人材確保への対抗策に「お墨付き」が出たと言えない事もないでしょう。

これからも、種々新展開があるかもしれません。労使の賃金決定の生み出す活力で、日本経済を活性化の軌道に乗せられるか、年が明ければ始まる2024年春闘に期待したいところです。

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