tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

イエレンFRB議長、大任を果たして交代

2017年12月16日 16時15分31秒 | 経済
イエレンFRB議長、大任を果たして交代
 アメリカは2008年の年末12月、徹底した金融緩和で金融危機を脱出しようと異次元の金融緩和を始めました。
 その年の1月3%だったフェデラルファンド・レート(日本の公定歩合に相当)を、2007年8月までの5.25%を9月から下げはじめ、2008の3月に2.25%、5月に2%。10月に1%に引き下げ、12月に0.25%にしたのです。

 これを主導したのは、「金融恐慌は金融の徹底緩和で対処可能」という意見の持ち主、当時のFRB議長のバーナンキさんでした。
 4兆ドルと言われる巨大な量的緩和とゼロ金利政策と言われたこの低金利政策和は、量的緩和は2013年末まで、低金利政策は2015年の11月まで続けられました。

 リーマンショックによる金融危機が、この金融緩和で救われたのかどうかは議論のある所でしょうが、世界の主要銀行のB/Sに大穴を開けたリーマンショックから世界の金融システムが立ち直るのには、7年という長い時間がかかりました。

 その間バーナンキさんはイエレン女史に交替し、実体経済中心(労働経済学者)と言われるイエレン議長は、世界に先駆けて金融正常化に舵をとってきました。

 イエレン議長が就任したのは2014年2月、既に量的緩和の終息に踏み切っていたバーナンキからバトンを渡されたイエレン議長は、いよいよ金利の引き上げによる金融正常化を進めてきました。

 緩めるときは一気でしたが、金利の引き上げは簡単ではありません、シェールオイルなどの幸運はありましたが、アメリカ経済は常に経常赤字で、金利の引き上げは、コスト高はもとより、ドル高を呼び、国際競争力の低下から経常赤字の拡大の可能性を大きくし、景気減速の恐れがあります。

 雇用と物価の動向を見ながら、また、トランプ政権になってからは、トランプ流マネー経済学との確執も見られましたが、今回のFOMCで今年3回目の金利の引き上げでffレートは1.5%に到達、来年も3回の金利引き上げの見通しを後任のパウエルさんに託して、世界に先駆ける金融正常化のプロセスを実行しての退任という事です。

 ECBも金融正常化路線には追随し、異次元金融緩和を続けているのは日本だけのような様相になってきていますが、実体経済を見ながら、的確にキメの細かい舵取りをしてきたイエレン議長の業績は評価されてしかるべきでしょう。

 物価が上がらない事だけは、想定外で、意外で、その原因には良くわからないところがあると、イエレンさんは言いますが、物価の上がりやすいアメリカです、2%目標にそろそろ届くかといったところでしょうが、雇用が良ければ、物価はあまり上がらなくてもいいのではないでしょうか。これは今後の経済学の問題かもしれません。

2017年12月の日銀短観:現状好調、先行きも基本は強気

2017年12月15日 13時54分48秒 | 経営
2017年12月の日銀短観:現状好調、先行きも基本は強気
 今日、日本銀行から、今月、12月調査の「短期経済観測(短観)」が発表されました。
 昨年来の景気は「緩やかに上昇」というのが大方の見方ですが、今回の「短観」でも、大企業の業況は5四半期連続の改善となっています。

 第1項目の「業況判断」では、製造業で見ますと、大企業が前回(9月)の22から25に改善、中堅企業が17から19に、中小企業が10から15に改善となっています。
 特に今回は、中小企業の改善大きく、景気の状況が、漸く、中小企業にも浸透して来た様子が見られます。

 ただ、先行きについての回答を見ますと、大企業19、中堅企業14、中小企業11と、慎重な見方になっており、先行きについては、短観の数字は何時の慎重に出る傾向がありますので(9月調査でも先行きは19)、これは次の調査(3月)まで待った方がいいのかもしれません。
 中小企業の場合は先行きは11ですが、9月時点の実績が10ですから、中小企業が最も強気だという事でしょうか。

 非製造業では、大企業が9月⇒12月で、23→23の横ばい、中堅企業が19→20、中小企業が9→10で、製造業ほど顕著ではありませんが、傾向的には良好な状況が続いています。

 こうした判断のベースでもある経常利益について見ますと、2017年度の計画値は、前年度比の伸び率で、製造業大企業15.0%、同中堅企業4.2%、中小企業3.8%となっており、大企業の伸びが目立ちますが、いずれも、前回調査の時の計画値より3~9ポイントの改善という計画になっています。

 さらに企業の先行きへの意欲を示すと思われる、設備投資計画(2017年度、研究開発を含み、土地は除く)について見ますと、対前年同期比で、大企業:製造業6.5%増、非製造業8.5%増、中堅企業:製造業14.8%、非製造業24.0%、中小企業:製造業7.2%、非製造業-7.2%と、特に中堅企業での積極的な設備投資計画が見られます。

 営業用設備の判断のDI(過剰-不足)がいずれの場合もマイナス(不足が多い)という結果も調査も示され、雇用人員の判断でも、いずれもDIはマイナス(不足)という結果になっていますから、ベースにある企業の意欲(判断)は、基本的に強いとみて良いのではないでしょうか。

前提となる為替レートは1ドル=110円前後と回答されていますが、為替を含む、国際経済情勢の安定があれば、企業に良くは強いことが窺われるのが「短観」の結果のようです。

社長アンケート(日経産業新聞)結果から

2017年12月14日 12時57分18秒 | 経営
社長アンケート(日経産業新聞)結果から
 今朝(2017.12.14)の日経産業新聞で、主要企業の社長100人に経済経営の現状などについてのアンケートした結果が発表されていました。

 おそらく皆様にも「そうだろうな」と思われる事が多いと思いますが、現状か確認のためにもと思いまして、いくつかのポイントを紹介させていただきました。

<景気の現状>
拡大・緩やかな拡大が2.1%と87.3%、横這いが10.6で100%です。
拡大している理由の最大のものは、設備投資の増加(52.8%)、米国景気の拡大(31.5%)で、3番目は個人消費の回復(29.1%)となっています。
 個人消費の回復が約3割あるのは、最近の動きの反映でしょうか。

<今後の景気>
3か月後の景気については、拡大・緩やかな拡大が83%、6か月後は、同78%で、来年前半までは 状況はあまり変わらないという見方のようです。
 6か月後の景気について、拡大の要因を聞いていますが、設備投資の増加(61%)とともに、個人消費の回復との答えが、50%に増加しているのが目を引きます。
 多くの経営者が、これからの個人消費の回復基調を予測しているようです。

<今後の景気の問題点>
 問題点については、2019年10月の消費増税、2020年の東京五輪との関係も含めて景気減速の時期の可能性を聞いていますが、消費増税後が40%、東京五輪後が36%となっていて、2つのイベントが景気の行方にかなり影響するという見方のようです。
 ただそれ以外の時期(半年刻み)はすべて1ケタ台の下の方で、また、上の二大要因についても、50%に達していませんから、多くの経営者は今後について、割合強気なのではないかと感じられます。。

<政策への期待>
 安倍内閣への経済政策の期待についての回答では、大胆な規制緩和が55%、法人税率の引下げが44%、生産性革命が33%、国内設備投資が20%、働き方・休み方改革が16%(3つまで選択)となっていて、規制緩和、法人税減税はまさに政策ですが、生産性革命以下は、企業としての取り組みが主の問題で、これからの企業の企業における重点施策という面もあるように感じます。

<世界経済>
 世界経済についても、緩やかな拡大基調という回答が88%を占め、横這いや下降という見方の中では、その理由として、トランプ大統領のの政策によるアメリカ景気の悪化、北朝鮮情勢、先行きの問題としては、米国における政治の混乱、経済原則、北朝鮮情勢、中国経済の減速、テロなど地政学的リスク、が挙げられています。

 その他、為替レートについては、当面110円から115円といった見方が多く、これは見通しと同時に、願望という面もあるように感じます。

 そのほか、それぞれの企業の、投資、雇用政策、人材投資、価格戦略、来春闘の賃上げ、などについても聞いています。
価格戦略については、現状維持が38%ですが、値上げを検討する企業が30%強になっており、最近の企業の価格戦略では、値上げの選択肢が増えてきたことを感じさせます。

 非正規従業員については拡大は18%、採用抑制は67%と、経営者レベルでの意識の変革が見られ、従業員の教育訓練費については増加・やや増加が67%で、この辺りも、経営トップの意識が人材育成に向かってきたと感じられます。

「付加価値と利益」再論

2017年12月13日 23時07分05秒 | 経済
「付加価値と利益」再論
 このブログの主要テーマは「付加価値」です。経済を計測する場合、最も大事なのは付加価値だと考えるからです。

 何故、付加価値(Value Added)が一番大事と考えるのかと言いますと、われわれは付加価値で生きているからです。
 これは国レベルで考えればすぐ解ります。どこの国でも政府が最も関心を持っているのは「経済成長率」です。経済成長率如何では、政権交代も起こります。

 経済成長率は、GDPの額が、昨年に比べて何%増えたかです。そしてGDPというはその国の国内で「1年間に生産された付加価値」の事です。国民がそれを創り、それを使って生活します。
 GDPが増えれば国民は豊かになり、国民1人当たりのGDPが大きい国は豊かな国、少なければ貧しい国という事になります。

 一方、企業という生産活動を担う代表的組織について見ますと「あの企業は業績がいい、付加価値が何%増えた」などと言う話はあまり聞きません。「利益が大幅に増えた」というのが一般的です。ここで重要なのは「利益」です。  

 なぜ、国で重要なのは「付加価値」で、企業だ重要なのは「利益」なのでしょうか。理由は多分、国は国民全体の事を考え、企業というのは株主のものですから、株主にとっての一番の関心事は利益だからでしょう。

 ここで基本的なのは「付加価値=人件費+利益」だという事です。国は、国民の生活を一番に考え、それを支えるのが企業と考えます。ですから、国民の生活の原資になる人件費(一般的には賃金)と、企業の生産活動を支える利益の両方を考えなければなりません。

 一方、企業は株主のものと考えられていますから、株主はまず利益が重要です。あまり人件費が多くなって、利益が減るのは好みません。利益が多ければ、配当も多くなるからでしょう。

 稼ぎの良い企業だという場合、稼いだのは付加価値か、利益か、立場によって違うという事でしょう。国にとっては企業の稼ぎは付加価値で、それが人件費に行っても利益に行っても、どちらでも税金(所得税と法人税)が取れるわけです。

 こうしてみると、経済を全体としてみるのには付加価値という視点から見ることが重要で、利益から見るというのは、経済の一部しか見ていないという事が解ります。

 最近はやりのマネー中心の経済学では、圧倒的に利益重視の視点が多く、EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)などと言っても中身に人件費が入っていないといったことが起きます。

 マネー経済学が盛んになると、人件費の分析が手抜きになりがちですから、消費不振で、経済が成長しないなどという事の原因追及や対策の立案などは不得手になるのかもしれません。そういえば日本も最近消費不振ですね。

イージス・アショア1基1000億円

2017年12月12日 14時37分00秒 | 政治
イージス・アショア1基1000億円
 北朝鮮が核兵器とミサイル技術を急速に進歩させているという事で、現政権は国民の生命と財産を守るために、弾道ミサイルへの対応を急いでいます。

 これまで発表されたニュースでは、当面、秋田県と山口県でイージス・アショア(陸上型イージス)配備の調査に着手することが決まったようです。
 配備する場合、一基の価格は、装備品によって違いはあるとしても約1000億円だと昨日のニュースは伝えていました。

 勿論配備となれば、「下手な鉄砲・・・」ではなくて、べストの物にするべきでしょうし、アメリカもそう要求するでしょう。現実の配備の段階では、通常、予算は、更に増えることが十分考えれれますし、間連する種々の費用も掛かるでしょう。

 先日は、政府が待機児童対策の予算がないので財界に3000億円の拠出を要請し、経団連は受け入れましたが、日商は受け入れていないようです。
 防衛予算と社会保障予算は違うと言えばそうかもしれませんが、所詮は国民の負担(税金と社会保険料)です。

 北朝鮮が、国連決議に反して余計な事をやるお蔭で、とんだ迷惑というのが多くの庶民の感覚でしょうが、トランプさんは「日本は最新の兵器を沢山買ってくれるだろう」といったようですし、まだまだ高い買い物が発生するでしょう。

 考えてみれば、確率としては、陸上・イージスを実際に使用する可能性は限りなくゼロに近いでしょう。また、国民の誰もが、そうならないことを望んでいるでのしょう。
 もし、核ミサイルが本当に頭上を飛ぶようなことになったら、国民の生命財産の保証などは誰にもできないでしょうから。

 使わないのが一番いいが、備えはしなければならない、というのは「保険の世界」では常識です。
 つまりこうした予算措置は「保険の掛け金」という事なのでしょう。随分高いですが、それで安心が買えれば、国民は良しとして、「何事もなくて、ああよかった」と喜ぶべきなのでしょう。

 保育、教育から医療、福祉、介護の世界まで、予算の足りない所はいっぱいあるのですが、そちらは我慢しながら、「生命保険、傷害保険と火災保険は、高くても、きちんと掛けよう」という所でしょうか。平和が一番安く付くとつくづく感じるところです。

 誰のせいだ、誰が悪いと言いたいところですが、言ったところで現状がどうなるものでもないでしょう。
 我々の何代後になるかわかりませんが、人類の知恵がもう少し進んでくることを願うしかないのでしょう。

 そこまで達観せずに、日本として、日本人として、もう少し何か考えられるか、考えなければいけないのでしょうが、先ずは選挙で選ばれた政治家の皆様の知恵の発揮を国会論議で聞かせていただきたいと思います。

問われるアメリカの良識、そして日本も

2017年12月11日 12時38分18秒 | 国際関係
問われるアメリカの良識、そして日本も
 12月の6日に「世界を困らせる(?)トランプさん」と書きましたが、「エルサレムをイスラエルの首都と認定」の発言以来、アラブ世界の反発は勿論ですが、ヨーロッパ主要国を含め、多くの国から、「そうした発言は認められない」といった意見が表明されました。

 そして「やっぱり」という事になりました。北朝鮮が、トランプ発言に強く反応し、「国際世論を無視するならず者国家」といったこれまでアメリカが北朝鮮に向けて言った言葉を、そのままアメリカに返すことになりました。

 さらに北朝鮮は、アラブとの連帯まで言っていますが、これがどうなるかは別として、今回のアメリカに対する北朝鮮の非難は、それ自体としては合理性を持つものだという所が最大の問題のような気がします。

 北朝鮮は、度重なる国連決議を無視して、核・ミサイル開発に邁進し、その成果を世界に誇示して、アメリカが主導する北朝鮮への圧力強化に何とか対抗しようとの姿勢を崩していません。

 こうした状況の中で、アメリカは特に中国、ロシアに対して、さらなる圧力強化を言っているのですが、そのアメリカが、今回のトランプ発言で、自らも国連決議を無視することになってしまったという事ではないでしょうか。

 ご承知のように、1980年国連総会は「エルサレムをイスラエルの首都というエルサレムの決定は無効」を決議し(反対はイスラエルのみ、アメリカは棄権)、安全保障理事会は「国連加盟国はエルサレムに大使館等を置いてはならない」との決議を可決(アメリカは拒否権行使せず)しています。

 こういう状況の中で、トランプ大統領が、「自分は選挙の公約に忠実だ」と言いたかったのでしょうか、エルサレムはイスラエルの首都、アメリカ大使館をエルサレムに」という発言は、あまりにタイミングが悪すぎます。

 国連や安保理決議を北朝鮮に「守れ、守れ」と圧力をかける一方、アメリカは自ら国連、安保理事会決議を無視し」北朝鮮と同じレベルに降りて行ったのです。
 北朝鮮の非難に対しても反論のしようがないでしょう。

 これからの問題はアメリカ自体が、このトランプ発言をいかに収拾するかでしょう。アメリカの良識が問われます。
 そして、日本はどうするのでしょうか、安倍政権も、その思想・理念の根本が問われているという事でしょう。

11月(南関東)の街角景気からの希望的な予感

2017年12月09日 20時55分39秒 | 経済
11月(南関東)の街角景気からの希望的な予感
 内閣府がやっている「街角景気」という調査があります。正式には「景気ウォッチャー調査」という名前で、日本列島を北海道から沖縄まで11の地域に分けて調査し、毎月発表しています。

 この調査は、その名の通り、街角の人たちに現在の景気の印象を聞いてその結果を集計し、「良い」と「悪い」の境目が50になるように設計された数字で発表するものです。

 調査対象は、街角の人たち、百貨店、スーパー、コンビニなどの小売店、いろいろなお客を乗せるタクシー運転手(私もあちこちでタクシーに乗ると運転手さんに「どうですか最近の景気は?」などとよく聞きます)、老若男女それぞれに関係あるレジャー施設などなど、主として現金払いで景気に敏感な仕事にかかわる人たちの意見という事になっています。

 此の街角の景気調査の南関東(1都3県)の数字が昨8日発表されまして、それによると、季節調整値で10月を2.1ポイント上回って、55.6になり、これは、2014年1月以来の3年10か月ぶりの水準だそうです。

 有効求人倍率が史上最高で、日経平均が「トランプ・エルサレム・ショック」で500円近く暴落しても、2日で取り返してさらに上伸するような状況の中で、55.6というのは何かパッとしない感じです。

 60か70ぐらいまで行ってもおかしくないじゃないの、と感じるところですが、考えてみれば、この調査対象は「街角消費支出」に関わる所ばかりで、今、日本経済の最大の問題は消費不振にあると言われる状態ですから、「やっぱり」という感じでしょうか。

 しかし、それはそれとして、上昇してきたという事は、まだまだ速断はできませんが、日本の消費者も、何か少し経済の先行きに明るさを感じ、財布のひもをちょっとばかり緩める気になった「のかもしれないな」などと考えてみたところです。

 このブログでは、家計調査の「平均消費性向」を中心に、消費不振の問題をずっと取り上げてきていますが、最近の統計で見ても、消費は「不振」という基本的傾向は変わらないとしても、何か微妙な動意が感じられるのではないかと見ているところです。

 11月の南関東の街角景気の改善が、単なる一時的なものか、それとも年末年始にかけて、消費者の気分が変わっていくのかどうか、これから注目が必要のような気がいます。

 もしその変化(改善)が傾向的なものであれば、家計調査の「平均消費性向」に現れることになるでしょうし、経済成長の足枷になっている消費不振からの脱出の可能性がほの見えるようであれば、大変結構だが、などと考えるところです。
 さてこれからどんな展開になっていくのでしょうか。

活発な意見開陳を期待:経済界、労働界

2017年12月08日 23時08分50秒 | 社会
活発な意見開陳を期待:経済界、労働界
 「忖度」も流行語大賞に輝いたようですが、忖度ばかりして自分の意見を言わないというのも、あまり健全ではないようです。

 このブログの主要テーマでもある経営や労働問題、労使関係の世界でも、特に忖度とは関係ないのかもしれませんが、今迄、あまり本音の意見が聞かれなかったような気がします。ところがこのところ立て続けに、「やっぱりはっきり言ったな」というような声が聞こえてきて、何か安心したというのが、私が受けた感覚です。

 前回は金属労協の議長が、官製春闘もいい加減にしたらといった意見を表明したことを取り上げましたが、今日はJAM(モノづくり産業労組)会長の安河内氏が、経団連が企業に3%賃上げを求めるらしい(詳細不明)ことに対して、「私の印象としては少し的外れ」と言われたとの報道もありました。

 労組が賃上げについて経営側の意見に反論するのは、昔から当然でしょうが、連合のベア要求が2%で経団連が賃上げ3%という事ですと、まさに春闘も主客転倒ということになりそうですから、私共も、相当の違和感を感じます。

 連合の神津会長は、安倍総理と会い、連合の2%賃上げの説明をし、十分に理解し合うことが必要という事で意見が一致したそうですが、政府の3%賃上げ要請が先に出されていること(ベアと賃上げは違いますが、正確には説明できないものです)との関係は、どういう理解になったのでしょうか。

 政府は3%賃上げ要請とともに、企業に対しては、人づくり予算の足らずまえ、待機児童対策の3000億円を企業負担でと要請し、経団連はOKしたようですが、全国の中小企業も組織する日本商工会議所は反対を表明したとのことです。

 もともと経団連は、財界総本山などと言われますが、1500社弱の日本の主要企業をメンバーとする団体で、中小企業とはあまり縁がありません。中小企業を代表するのは商工会議所と言われますから、同じ財界団体といっても意見が違う事は、あっても当然でしょう。

 この問題は、大企業の業績が回復しても、中小の状況は厳しい、という状況を反映するものでしょうが、これについては財界よりも、連合の方が、明確な意見を持ち、毎年「連合白書」で、取引条件の改善で中小企業の経営改善が必要と発言していますし、前述のJAMの安河内会長も、「経団連は取引価格の抜本的な見直しを指示すべきではないか」と言っていると報道されています。

 大企業と中小企業の格差問題は、労使という枠を越えて、労使共通の問題という事になるようです。

 産業内部でも多様化する種々の問題を抱えて、それぞれの立場から、余計な忖度を排除して、それぞれの本音を率直に開陳することで、どうすればベストの結果が得られるか、真剣で本格的な議論につながり、それによって、より不満の少ない、良い社会がを実現することになれば素晴らしいことです。

 その意味で、こうした本音の発言が出ることは、何か良い兆候ではないかと感じるところですが、さて結果はどうでしょうか。

金属労協議長、脱官製春闘を主張

2017年12月07日 11時24分13秒 | 労働
金属労協議長、脱官製春闘を主張
 金属労協議長の高倉氏(日産労組出身)は6日の記者会見で5年目に入ろうとしているいわゆる「官製春闘」に疑義を呈したことが報道されました。

 金属労協はゼンセンUAなどとともに、連合の中核組織ですが、国際金属労連の日本委員会として日本の金属労働者を糾合した、国際的かつ先進的な自由で民主的な労働組合組織として出発した経緯もあり、歴史的にも、日本の組合運動を主導してきた組織です。

 かつては、オイルショックで一時は日本経済がパニック状態となり、ゼロ成長の中で、32パーセントもの賃上げが行われ、労使が真剣に日本経済の先行きを危ぶんだ中で、宮田義二議長の下「経済整合性理論」を展開、当時の日経連とともに、日本経済の正常化に大きな役割を果たしたことは、知る人ぞ知る輝ける歴史です。

 その意味では、一部からはおとなし過ぎる等と言われる連合の中で、脱官製春闘の主張の皮切り役を果たすのは、けだし当然かもしれません。

 高倉議長は「政府は賃上げが出来るような中・長期的な政策を打ち出すのが本来の役割」と政府の役割を明確にし、最近マスコミでも頻繁に取り上げられている「賃上げをした企業に減税を」などと言う手法については「アメとムチの短期的施策」と断じたとのことです。

 このブログでは繰り返し取り上げていますが、近年の連合の春闘に対する姿勢は経済整合性から見ても、また、近年大きな課題になっている格差社会化の阻止・是正の面から見ても、極めて理にかない、かつ、次第に実績を上げてきているものです。

 連合白書では、例年サプライチェーンの全体に、バランスの取れた付加価値の成果配分をすべきだと主張して、下請け企業との公正な取引といった、経営の問題にまで具体的に踏み込んで、提言をし、活動を展開しています。
 そして、昨年の春闘では、中小の賃上げ率の向上、非正規労働者の賃金上昇率などを確認できたことを成果として表明していることはご承知の通りです。

 一方政府の方は、恐らく、当面の経済成長率が少しでも高まり、消費者物価上昇率も上がればいいという事でしょうか、高めの賃上げを奨励、高めの賃上げをした企業には、税金をまけるという形の補助金を出すといった政策ですから、賃上げのできないような企業には恩恵がありません。

 賃上げを多くしたかどうかの基準を公正に決めるなどは本当に確りやろうとすれば至難の技で、まさに場当たり的な人気取り、賃上げが出来る企業が有利という、格差拡大に貢献する、ごく近視眼的な政策と言わざるを得ません。何か「志」に違いがあるような気がします。

 高倉議長の発言ではありませんが、政府は中・長期的な政策、例えば、賃上げが出来ないような企業を出来るだけ減らしていくような、企業も、従業員も、国民も、みんなが喜べるような、格差社会化を是正しつつ、一応総活躍が、一億総ハッピーにつながるような基本構想に実現のための本格的な政策を考えて頂きたいと、このブログからもお願いするところです。

世界を困らせる(?)トランプさん

2017年12月06日 20時31分54秒 | 国際関係
世界を困らせる(?)トランプさん
 アメリカのトランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認め、アメリカのイスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移す方針を決めたと報道されています。

 付加価値とも労使関係とも直接の関係のない国際政治問題を取り上げることはこのブログとしては勿論本旨ではありませんが、このニュースには、おそらく世界中が困惑しているのではないでしょうか。
 トランプさんが、「アイ ラブ イスラエル」と繰り返しているのをテレビのニュースで見たように思いますが、個人的な発言としては特に構わないとしても、アメリカのの大統領としての発言で、それが現実のアメリカ政府の意思や行動になるとは考えられませんでした。
 おそらくそんな認識が多くの人に共通なものだったのではないでしょうか。

 しかし現実にこんなことが起きてしまいました。当然パレスチナは反発を強めますし、アラブ諸国は集まって会議を開かざるを得ません。イスラムの名を名乗るテロ組織はどんな態度を示すか、そんな行動に出るか、当然世界には不安が広がります。

 経済面で見れば、おひざ元のアメリカ発の株価下落がみられ、今日の日経平均は一時500円を越す暴落、終値でもマイナス445円、世界の株価を見ればやはり軒並み下落とった状況のようです。

 国連事務局が本気で、北朝鮮との話し合いを始めたようですし、ようやく上向いてきた世界の経済情勢の中で、より確実な安定と経済の順調な成長を世界中が求めているのではないかと思いますが、世界のリーダーであるアメリカが、なぜこんな意思決定をするのか、まったくアメリカという国(というよりトランプさん)のやることはわからない、と感じてしまいます。

 世界の覇権はアメリカから中国へなどという先読みの意見もありますが、今、アメリカはれっきとした覇権国、基軸通貨国です。戦後のアメリカはその地位に誇りを持って行動してきたと思います。おそらく、現在のアメリカの中にも、そうした、超大国の責任を背負うといった考え方はあるはずです。

 このブログでも企業のCSRになぞらえたNGR(Nation's Global Responsibility)を提唱してきました。
 トランプさんの意見がそのまま通るのか、何か別の動きがアメリカの中から出るのか、世界はどう反応するか、狭くなった地球社会の中で、多くの人々の望む「平穏を実現したい」という希求いかに汲み取って行くかという、アメリカの、さらに世界のリーダーたちの役割が、まさに今、問われているのではないでしょうか。

国連事務次長北朝鮮へ

2017年12月05日 10時27分52秒 | 国際関係
国連事務次長北朝鮮へ
 昨日、国連から、国連事務次長のフェルトマン氏が、今日5日から8日までの予定で、北朝鮮を訪問することが発表されました。
 この訪問をきっかけとして、北朝鮮とアメリカのチキンレースなどと言われ、時とともにエスカレートしていく脅し合いが終息に向かう事を願うばかりです。

 度重なる国連決議にも拘らず、北朝鮮は、核・ミサイル開発をやめようとしませんし、アメリカは北朝鮮に徹底した圧力をかける態度を変えません。
 国連決議は本来、人類の最高の決議なのでしょうが、現実には、金総書記は相手はアメリカだと考えているようですし、トランプ大統領も、アメリカとして、まともにそれに対応しているといった態度に見えます。

 国と国との関係という事になりますと、大国であろうと小国であろうと1対1の対等ですから、張り合えばきりがありません。

 ここはやはり、国連決議を錦の御旗として、一国の権威を超越する組織、人類の在り方、国の在り方を決めるべき組織である国連の事務局が積極的に動いて、まさに「国連の権威」のもとに、国対国の問題を解決する、国連本来の役割を確りと果たすべきでしょう。

 その意味で、今回のフェルトマン氏の訪朝が、こうした国際紛争の解決へ進む第一歩として、北朝鮮、アメリカの双方の高まった熱を冷まし、現在の困った状況解決の本来的な在り方につながり、広く世界に安心を齎すものに進展することを、世界の人々ともに心から望みたいと思います。

労使関係の現場力の強化が必要では

2017年12月04日 14時52分10秒 | 労働
労使関係の現場力の強化が必要では
 今年も師走に入ってしまいました。 あれあれと言っているうちに大晦日になりそうです。
 労使関係の場から見れば、労使ともに、2018春闘への政策のまとめの最終段階で、大変な時期でしょう。

 政府はすでに3%賃上げをと言って2018春闘でも主導権を取りたいようです。すでに、10月ベア2%を打ち出した連合は、定期昇給分と合わせ、計4%程度を要求するという説明もしているようです。

 政府の3%の計算の中身は解りませんが、定期昇給というのは企業の賃金体系の中で本来決まっているものですから、賃金体系を変更しない限り、すでに約束されているものでしょう。連合はいつもながら、現実を見極めた真面目な(真面目過ぎる?)要求態度です。

 賃上げについての労使の真剣な論議は来春に期待するところですが、この何年か気になっているのは、労使関係における現場力の低下(?)の問題です。
 これは労使共にみられるようで、労働組合でも、ストの打ち方が解らないなどという話もありました。経営側でも、何が不当労働行為になるのか知らない経営者や労務担当者が結構いたりするようです。

 ストなど不要な労使関係はある意味では理想でしょうが、不当労働行為はいけません。
 最近は、長期間労働の問題で、36協定も良くマスコミに登場するので、知られてきましたが、36協定を知らいない労使の担当者が結構多いなどという調査も出たりしました。

 矢張り労働三法は、労使関係をより良いものにするためにあるわけですから、経営者、管理者をはじめ、労使関係の担当者は、先ずはその基本的精神をしっかりと理解すべきではないでしょうか。

 労働法制も最近は「働き方改革」などで、目まぐるしく変わるようで、追いつくのも大変かもしれませんが、法律は最低限を規定するものですから、本当に大事なのは、現場の労使関係を、労使双方が喜べるような良いものにすることでしょうか。

 労働組合のサイドでいえば、労働組合活動を通じて、企業をより良いものにするという視点も重要でしょう。労働組合の委員や役員になることによって、事業所や企業のトップの人たちと、直接経営の核心に触れるような議論が出来るというのは、ある意味では素晴らしいことでしょう。

 労使交渉では、直接労使の利害に関わる問題が中心になることが多いかもしれませんが、かつてその成果を誇った「労使懇談会」とか「労使協議会」といった、広範な問題を議題にした労使協議の場は、労使双方の、労使関係の現場力の成長、労使の信頼関係の形成に大きく貢献したと言えるのではないでしょうか。

 労使関係がオープンで、労使間の風通しの良い企業では、不祥事などは起こり得ないなどと言われたこともありましたが、草の根からの健全な労使関係を改めて見直すことも必要な時期ではないかと考えるところです。

平成という時代、再論の初めに

2017年12月03日 13時10分34秒 | 経済
平成という時代、再論の初めに
 この7月に「 平成という時代、日本経済としてみれば」をかきました。
 経済から見た平成の30年は、バブル経済末期からアベノミクスに至る30年で、その大部分は、鍋底というにはあまりに巨大な鍋の凸凹な底を、日本経済が這い回った時期だったという事になるようです。

 この巨大な失敗の経験を繰り返さないためにも、これから折に触れて、平成の時代を振り返って、いろいろと考えてみたいと思っています。

 今回は平成よりずっと以前、高度成長期の日本経済があんなに元気だったのに、今の日本は・・・、いったい何が違うのだろうかなどと考えながら、気の付くことをいくつか並べてみたいと思いながら書いてみます。

 勿論、かつては、国民がみんな若く、 国家再建の意気にの燃えていたという事もあるでしょう。しかし高齢化しても、日本人は元気です。勿論大多数の若者は、将来を目指して意気盛んです。
 現状の日本経済の持ち直しも、その元気によって大きく支えられていると言って間違いないでしょう。

 戦後の日本経済は不況を何回も経験しました。主なものを上げれば、終戦直後の復興の中でインフレ阻止のためのドッジラインによる不況、朝鮮動乱終了による不況、神武景気の反動の鍋底不況、戦後最大と言われた昭和40年不況、さらには2度にわたるオイルショックによる不況、オイルショックは確かに深刻でしたが、これも世界に先駆けて克服しています。

 然し、1990年代からの円高不況には20年余にわたって深刻で長期な不況を経験しました。
 通観すれば、オイルショック以前の不況は日本経済に内在する構造要因による不況でした。ですから、自分の判断で、自分の力で対応できたのでしょう。

 しかしオイルショックは、外来の要因です。 一時はパニック状態にもなりました。ただしこの場合は、産油国への世界の富の移転という事で、世界共通の問題でした。
 そして未だ後遺症の残る円高不況は、1985年の強いられた円高の結果で、これは世界の中で日本を狙い撃ちにした日本だけが不況を強いられるというものでした。

 残念ながら、これには日本は、適切な対抗手段お持ちえませんでした。真面目な日本人は、円高を受け入れて、その上で、何とか経済を回復させようとしたのです。
 今考えてみれば、2年間で円の価値が2倍になるような円高を受け入れて、それに対応するような経済を作ることは不可能とだれも思うでしょう。

 しかし当時の日本、政府、日銀、そして企業まで、何とか出来ると考え、今回の不況も、日本人の勤勉さで、ある程度の短期で克服できると思っていたようです。
 「円が高くなったという事は日本の価値が上がったという事だから、歓迎すべきことだ」などと言う意見の方が強かったようです。しかしこれは誤算でした。

 この辺りは「 為替レートとゴルフのハンディ」でお分かりいただけると思いますが、こうして経験を通してみると、日本人は、自らの行き過ぎや失敗による不況への対応には優れた能力発揮してきましたが、外来の要因に対しては、残念ながら対応がまずかったという傾向があるようです。

 特に、日本経済だけが狙い撃ちにされた「プラザ合意」による円高には全く対応を誤ったようです。
 こうしたことを経験するたびに、日本経済は賢く、強くなるのでしょう。世界でもやはり「出る釘は打たれる」でしょうか、今後も、益々国際化する世界経済の中で、いろいろな問題が起きるでしょう。日本人の対応能力の「拡張」が必須のようです。

忍び寄るバブルの影?

2017年12月01日 11時36分31秒 | 経済
忍び寄るバブルの影?
 バブルの時は、多くの人はバブルだと思っていない、だからバブルが発生するのです、といった解説はよく聞かれます。

 今日も株価は乱高下しています。日経平均は、朝方は200円を超える上げ幅でしたが、一転してマイナスに転じ、その後徐々にまたプラスに転じているようですが、戻りは鈍いようです。

 東京市場も、昔と違って、日本勢よりも外国勢の方が主導権を持っているようですが、アメリカのダウ平均のドル表示の価格を、日経平均が円表示の数字で追いかけているような感じの動きになっています。

 ダウ平均はすでに24,000「ドル」を超えていますから、日経平均もそろそろ23,000「円」を超えてもというのでしょうか。
 確かにアメリカ経済は好調というのが一般的な理解のようです。日本経済もゆっくりですが、堅調な歩みを見せています。
 このブログでも、日本経済は当面堅実な上昇を続けるのではないかと見て来ています。

 そういう意味では、株価上昇もバブルではないという見方が多いと思います。
 しかし、日本経済もアメリカ経済も、共に問題を抱えていることは、皆様ご承知の通りです。

 アメリカでは年明けの2月にはFRBを去るイエレン議長が、トランプ政権の財政政策について厳しい指摘をしています。
 金融政策としてやるべきこことはやり切ったが、現政権の財政政策では、連邦債務はGDP比で許容範囲を超えることになろう、これは政府が対応すべき仕事だという指摘です。

 日本では現政権は、公約だった2020年の財政基礎収支の黒字化を断念、「ただし財政健全化の旗は降ろさない」などと言っていますが、財政健全化の旗を降ろす政権などと言うものは世界にあり得ませんから、全然説明になっていません。

 もしアメリカの財政問題に懸念の意見が出れば、ダウ平均は? それより酷い累積財政赤字の日本への影響、国際投機資本の日経平均を見る目はどうなるのでしょうか。
 イエレンさんは、金融の正常化を実行しましたが、日本は金融は緩めっぱなしだから大丈夫などとは言っていられない事は確かでしょう。

 国際経済は連鎖します。防波堤は、自国経済を徹底して健全に保つことでしょう。求人倍率の高さを誇る現政権ですが、それだけ雇用が逼迫しても、国民の将来不安が消えず、ゼロ金利のもとでも消費を控え貯蓄に走る国民の不安感、それにどう答えようというのでしょうか。
 バブルの宴で解決出来ない事は、バブル崩壊で辛酸を舐めた日本人は知っています。