写真・図版

 「神風」は吹いたのか――。

 大阪地検特捜部の捜査が進む森友学園問題。学園側と安倍晋三首相の妻昭恵氏の親密さに、人々の疑念の目が向けられた。

 森友学園が小学校用地として得た大阪府豊中市の国有地は、更地の鑑定価格から「ごみ撤去費」として8億1900万円が値引きされ、1億3400万円で売却された。分割払いOK。売却額は、当初非公表。国の実務にしては「特例」尽くしだった。

 学園の籠池泰典・前理事長(64)=詐欺罪などで起訴=によると、昭恵氏とは2012年12月の第2次安倍政権発足より前、学園幼稚園のPTA役員の紹介で知り合った。昭恵氏に小学校の構想を伝え、国有地取得に向けた国との交渉経過を頻繁に報告した。

 14年春には昭恵氏と予定地で記念撮影し、交渉窓口の財務省近畿財務局職員に写真を見せたという。15年5月、国は「特例」で10年以内の購入を約束する定期借地契約を結んだ。

 その年の9月、昭恵氏は幼稚園で講演し、小学校の名誉校長就任を引き受けた。その日の昼食は籠池夫妻らの案内で近くの洋食店へ。店の関係者によると、会食は和やかな雰囲気で、昭恵氏は3千円のランチを残さず食べ、学園側が支払った。

 国有地をめぐり事態が大きく動いたのは16年3月。過去に1億3千万円かけて汚染土などを除去したのに「新たなごみが見つかった」と学園側が国に報告。その4日後には籠池夫妻が財務省の担当室長に会い、昭恵氏らの名前を出して対応を求めた。

 野党が追及した通常国会が今年6月に閉じたあとも、国有地売買をめぐる疑惑はさらに深まっている。

 8月には、財務局側が16年3月下旬、学園側に「いくらまでなら買えるのか」と尋ねていたことが複数の学園関係者の証言で判明。事前の価格交渉を「ない」とした財務省の佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長の国会答弁は、虚偽だった疑いが指摘されている。

 9月には、財務局職員が「ゼロに近い金額まで私はできるだけ、努力するという作業をやっています」などと語る音声データ(16年5月録音)が残っていたことも明らかになった。

 さらに、ごみの積算根拠とされた不鮮明な写真資料でも、新たな疑惑が浮上している。別々の試掘場所と示された写真が同じ穴を違う角度から撮っていた可能性が高いことが専門家の指摘でわかった。土地紛争の専門家は「写真を見比べれば、二つが同じ穴であることは明らかだ」と話す。

 国有地売却の経緯に疑念が続出するなか、籠池前理事長は昭恵氏保守系の国会議員との関係を冗舌に語ってきた。

 「昭恵夫人は政治家的な方。財務省に多少の動きをかけて頂いた」「神風が吹いたかなと思った」(今年3月、国会証人喚問

 「定期借地契約に難色を示していた財務省が14年夏ごろ、突然前向きになってくれた」(同4月、民進党のヒアリング)

 積み上がった不信。しかし、国民が国会で事実に近づける機会は、安倍首相解散表明で遠のいた。

 埋没していたこの問題に気づき、今年2月、非公表だった国有地売却額の情報公開を求めて裁判を起こした大阪府豊中市議の木村真さん(53)は、臨時国会を待ち望んでいた。「ここまでの事実が出てきた以上、『知らぬ存ぜぬ』では無理」と感じていたからだ。議論の余地を与えない冒頭解散は、「なりふり構わない権力の私物化」としか見えない。

 解散の意向を表明した25日夜、安倍首相は「誠実に丁寧に説明してきた」とテレビのインタビューで繰り返した。

 木村さんは言う。「政府が説明するということ。これは民主主義の前提です。『記録がない』『処理は適切だった』と繰り返すのでは、国民は判断することさえできない」

 この問題にかたくなに背を向ける政権のもとで、民主主義のプロセスはあまりに軽んじられている。

上は朝日のネット記事

一個も説明もせんと、何が国難やお前さんが問題やないか


 

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