【金子元希、北沢拓也】JR四国が、線路がかかる78カ所の橋について「安全を脅かす恐れがある」として補修工事が必要と判断しながら、具体的な工事の計画を立てていないことが、会計検査院の調査でわかった。なかには最長で23年間、放置されている橋もあった。検査院は、工事の実施時期を速やかに決めるよう同社に求める方針だ。
検査院が調査対象にしたのは、JR四国が管理する2600カ所余の線路がかかる橋。
同社は定期検査の結果などから、国の基準に基づいて橋の安全性を4段階に判定。最も危険な「A」は「変形やひび割れがあり、安全や列車の運行を脅かすため補修や改築が必要」で、さらに緊急度に応じて「AA」「A1」「A2」と分類される。他の鉄道会社では、A2と判定してから3年程度で補修を実施しているという。
検査院が同社の昨年度までの検査結果を調べたところ、A1が2カ所、A2が83カ所あった。しかし、今年度に補修する計画になっていたのはA1の2カ所と、A2の5カ所だけだった。残る78カ所については、来年度以降も含めて補修する時期は決まっていなかった。
このうち50カ所は、3年以上前に判定されていた。最も古い橋の判定時期は1989年度で、昨年度までに23年が経過するなど、同社の遅れが際立つという。
同社は取材に対し、「状態を見極めながら補修してきたが、優先順位をつけた結果、長年補修されない橋が出てしまった。検査や補修の態勢を検討したい」と答えている。
また調査では、同社が橋の検査で見つけた変形などの場所を詳しく記録に残していない問題も見つかった。検査院は、検査の結果が有効活用されていないとして、改善を求める方針。
検査記録をめぐっては昨年も、検査院はJR四国とJR北海道に対し、安全にかかわるブレーキや自動列車停止装置(ATS)の記載に不備があったことなどを指摘している。
JR各社のうち、北海道と四国、九州については政府出資があるため、検査院の検査対象となっている。