田老港側の防潮堤横に山積みされたがれき。左奥は宮古市田老総合事務所=岩手県宮古市で2012年2月16日午後0時38分、西本勝撮影
東日本大震災で発生した岩手、宮城両県の震災がれきの一部を両県外で受け入れるよう環境省が呼びかけている広域処理について、処理に必要な焼却施設を持つ自治体などに対して受け入れ要請をしているのは10都府県にとどまり、13県は要請の検討もしていないことが毎日新聞の全都道府県調査で分かった。広域処理には窓口となる都道府県の協力が欠かせないが、受け入れが進まない背景には、がれき処理後の焼却灰の放射性物質濃度に関する国の「二重基準」などを巡る戸惑いがあることも明らかになった。
◇13県は検討もせず
調査は、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城、岩手、福島の3県と、国からがれき受け入れを求められていない沖縄を除く43都道府県を対象に、1月下旬~2月上旬にかけ実施した。
自治体や業者に対する震災がれき受け入れ要請について、「要請している」「検討中」「検討していない」の選択肢のうち、「している」と回答したのは10都府県だった。うち青森、山形、東京が実際に受け入れ済み。
また、独自に放射性物質濃度などの受け入れ基準を定めるなど具体的な対応をとっていたのは秋田、埼玉、神奈川、静岡、大阪の5府県。「検討中」としたのは7府県だった。
「国の文書を自治体に流すなどして協力しているが、それ以上積極的な要請はしていない」と答えた鹿児島県のように選択肢以外の回答をした13道県を、「検討していない」とした13県に加えると、現状では26道県が広域処理に消極的だった。
原子炉等規制法では放射性物質として扱わないごみの基準を1キロあたり100ベクレル以下と定めているが、震災後に国が示した指針では焼却灰の埋め立て基準は同8000ベクレル以下。
がれきの受け入れ要請に消極的な県からは、「国の(放射能の)基準で本当に安全なのか。住民の理解が得られず受け入れの障害となっている」(長野県)、「放射性物質の取り扱いについて国に異なる基準が存在する理由を明確に説明してほしい」(福井県)など、「8000ベクレル以下」の安全性を疑問視する意見が目立った。
広域処理は岩手、宮城の震災がれき約2000万トンを14年までに処理するため、うち395万トンを被災地外で処理してほしいと環境省が昨年10月に都道府県によびかけたもの。今回の調査で、受け入れ中の3都県に加え、具体的計画があると回答した神奈川、埼玉を加えた5都県の処理予定量は、処理済み分を含め計約71万トンで、国の目標の約18%だった。
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静岡県では16日、島田市の処理施設で、岩手県山田町のがれきの試験焼却が始まった。【まとめ・平林由梨】
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