明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(334)マイコプラズマ肺炎など感染症が増加・・・被曝の影響では?

2011年11月25日 23時00分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111125 23:00)

ここ数日、矢ケ崎さんの講演録を、分割して掲載していますが、そこで語ら
れたことをさらに証明するような社会的事象が続いています。深刻な被曝の
兆候と思われる事態で、一つ一つに胸が痛みますが、今、私たちの前にある
危機をきちんとつかむために、お知らせせねばと思います。

今回、お知らせしたいのは、読売新聞に載った、「今秋マイコプラズマ肺炎
やRSウイルス感染症などの患者が増えている」という記事です。ただし、
この見出しはやや不正確で、例年、冬に流行していたそれぞれの感染症が
今年は6月ごろからはやりだし、感染症の流行しにくい夏にもどんどん感染
が増えて、秋になってさらに増えていることに特徴があります。参考に東京
都の感染情報や、ここ数年の年間を通した感染との差異を示すグラフのアド
レスも示しておきます。これらをみると、例年とまったく違った感染グラフ
ができていることがわかります。とにかくこの10年間の中で圧倒的な増加
です。

放射線被曝が起こった場合、免疫力の低下が起こり、あらゆる感染症にか
かりやすくなります。とりわけもともと免疫が低下している人々は、ダメー
ジを受けやすく、チェルノブイリの事故の後には、エイズ患者の死亡が急増
しました。無論、そうはいっても、今回のマイコプラズマやRSウイルス感
染症と被曝との因果関係がはっきりと証明されているわけではありません。
とくにマイコプラズマの場合は、西日本で全般的に発生が高くなっており、
とくに沖縄が高い点など、福島の事故だけでは説明がつきにくい事象もあり
ます。

しかしこうした例年と違う症例に着目し、放射線の影響の可能性を考えて、
れぞれで免疫力を高める努力を重ねていくこと、食品からの被曝を避ける、
ないしは極力減らす努力を続けていくこと、がれきの焼却によるさらなる被
曝を生まないようにしていくことなど、被曝対策を強化していくことが重要
です。

この点で重要な情報としてお伝えしておきたいのが、矢ケ崎さんが講演の
中で触れていた、チェルノブイリ事故後にアメリカで得られた感染症拡大の
データです。これは肥田医師が翻訳された、アメリカの、ジェイ・M・グール
ドが書いた『死にいたる虚構-国家による低線量放射線の隠蔽』の第二章
「チェルノブイルのフォールアウト」に書かれています。

そこでこの章から重要なポイントをいくつか引用しておきます。

「政府のデータでは1986年5月の合衆国死亡率も統計的に有意の増加である
ことを示している。統計では1986年5月の合衆国死亡率は前年同月よりもな
んと5.3%も増加している。これは1000分の1以下の危険率で統計的に有意性
があり、そればかりでなく5月度死亡で見る年度増加率は実際に、合衆国の
過去50年間のうちで最高であった。それに続く3ヶ月間の死亡率増加も高率
であった」(同書p11)

「1986年の夏にきわだって増加したのは、乳幼児、感染症疾患をもつ若年成
人、高齢者の死亡であった。これらの人たちには免疫系が相対的に脆弱であ
るという共通点がある。そこに免疫障害を起こす原因が加われば病気やスト
レスに対しての抵抗を妨害することになる。免疫機能が低下している高齢者
はそれまでに既に病気の状態といえるので、チェルノブイルの放射能は免疫
系の抵抗力を一層、弱体化されたであろう。

酔いをさませるほど驚かせる統計は、これまでになく死亡率を増加させた若
年成人の場合であろう。肺炎、感染症疾患、特にエイズ関連疾患による著し
い死亡率増加は1986年5月にピークとなり、ついで夏期に続くが、この背景に
は免疫障害があると思われる。普通ならば、夏は感染症疾患による死亡率は
もっと少なくなるものである。というのはインフルエンザなどの流行などは
大抵、冬に起きるのだから」(同書p13)

これらからも、被曝の影響で感染症の増加が起きた可能性や、もともと免疫
力が弱っていた人の死亡が増えたことが明らかで、日本でも同様の統計が欲
しいところですが、何せ3月の大災害で、多くの医療機関が被害を被り、地震
と津波によって亡くなられた方、またその後のストレスの中で亡くなられた
方も大変多く、なかなか有意な統計は出てこないのが実情かと思われます。

いずれにせよ、昨日、掲載した町田市の症例などと合わせ見るとき、被曝に
よりさまざまな疾患が増えているのは確かだと思います。こうした事態を前に
私たちがなすべきことは、まずは「腹をくくること、開き直ること、覚悟を
固めること」です。その上で「免疫力を上げる」ことが重要です。

同時に、もう実現不可能だとしてあきらめてしまわずに、汚染ゼロの要求を
政府に出していくことが必要です。とくに汚染のない地域、ないし東日本と
比べるならばかなり少ない地域で、食料の大増産を行うことが重要です。そ
れを被災地に供給したいし、しなければならない。政府や各地の行政に、
国民・住民の安全を守る義務をつきつけていくこと、あきらめずにこれを
続けることが大事です。

知恵を絞って、病の拡大に立ち向かっていきましょう!

***********

今秋、マイコプラズマ肺炎やRSウイルス感染症などの患者が増えている
読売新聞 2011年11月24日16時10分

国立感染症研究所によると、11月第2週(7~13日)のマイコプラズマ
肺炎の平均患者数は2001年以降の最高値を記録。

九州、山口、沖縄では全国平均を上回る県もある。西日本では寒暖の差が
激しい不順な天候が続いており、感染研は「予防のため体調管理などに気を
つけてほしい」と呼びかけている。

◆マイコプラズマ肺炎 患者数が最多◆

感染研が全国約500の医療機関(定点機関)の報告をまとめたところ、第
2週の平均患者数は1医療機関当たり1・25人で、01年以降の10年間
で最も高かった0・72人を上回った。九州、山口、沖縄では沖縄県5・14、
長崎県1・73、山口県1・44。福岡県も第1週の0・4から0・73に
増加。北九州市では小学校の学級閉鎖も報告されている。

マイコプラズマという細菌による呼吸器系感染症。感染研の安井良則・感染症
情報センター主任研究官は「症状が風邪に似ていて外来ですぐ診断するのは難
しく、重篤化してしまうケースもある」と指摘する。

ワクチンはなく治療は抗生物質が中心だが、薬が効かない耐性菌の増加が拡大
の要因になっている可能性もある。「今年はこれまで使われてきたマクロライ
ド系の抗生物質が効かないケースが多い。03年以降、耐性菌が増え、今では
8割を超えるという報告もある」と安井研究官。別に効果がある抗生物質は
あるものの、幼児の歯形成への副作用が懸念されるため、医療現場では難しい
対応が続く。

◆RSウイルス 乳幼児に多く◆

RSウイルス感染症は乳幼児が感染しやすい呼吸器系感染症。今年は全国的に
例年を上回る患者数が報告され増加傾向が続く。福岡県の1医療機関当たりの
平均患者数は、11月第1週の0・51から第2週は0・76になった。

本来は冬に流行しやすいが、今年は6月頃から都市部を中心に感染が広がり
始めた。新規患者数は10月中旬にいったん減少したものの、再び増加傾向に
転じた。感染研は「感染の勢いは落ち着き始めているが、もともと冬にピーク
を迎える感染症。12月の動向が気になる」とする。

◆インフルエンザ 年明けに流行か◆

山口県では9月に周南市の幼稚園で集団感染が発生し、クラスが閉鎖された。
新型インフルエンザ(H1N1)が発生した09年を除くと、同県で最も早い
時期の集団感染発生となった。その後は落ち着いた状態が続いてきたが今月
21日、山口市の小学校が学級閉鎖された。

同県以外の発生ペースは遅く、今のところ確認されているウイルスのほとんど
はA香港型。しかし昨季と同様の傾向をたどれば年明け以降にH1N1型が
流行する可能性もある。感染研は「いずれの感染症もうがいや手洗いで、ある
程度予防できる。患者との濃厚な接触を避けるなど注意してほしい」として
いる。

◆マイコプラズマ肺炎=天皇陛下や皇太子ご夫妻の長女、愛子さまも一時、
感染の可能性があるとされた。感染者の大半は14歳以下。乾いたせきや発熱、
頭痛などの症状のほか、重篤になると脳炎などを引き起こす場合もある。せき
や接触で広がり、潜伏期間は2~3週間。

◆RSウイルス感染症=多くは鼻水やせき、のどの炎症などで治まるが、乳幼
児では重篤な肺炎や細気管支炎を引き起こす場合もある。免疫ができにくいた
め、流行期に何度も感染する可能性もある。ワクチンや抗ウイルス薬はなく、
酸素吸入や点滴などの対症療法が中心。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111124-OYT1T00764.htm

*****

東京都におけるマイコプラズマ肺炎の発生状況
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/mycoplasma/mycoplasma.html

*****

マイコプラズマ肺炎、急増=過去最多で高止まり-被災地も要注意(9月29日)
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_soc_health20110929j-01-w370haien

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明日に向けて(333)子どもたちを放射能から守るために・・・矢ケ崎さん講演録(2)

2011年11月25日 00時00分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111125 00:00)

矢ケ崎さん講演録の2回目をお届けします。今回はお話のコアである被曝のメカ
ニズムについてです。この説明の中で、チェルノブイリ後のアメリカでの例を
ひきながら、「年寄りには放射線の影響は少ない」という一部にある思い込み
が誤りであることの指摘もなされていて必見です。

以下、ぜひお読みください。

********************

矢ケ崎克馬講演録(2)

子どもたちを放射能から守るために
-知られなかった内部被曝の実相-
2011年11月19日 


【被曝の物理的メカニズム】

より具体的な話に入ります。被曝といいますが、より具体的には放射線が飛んで
きて体に突き刺さります。あるいは体の内部から発射されて、内部に突き刺さり
ます。この放射線というのは、原子の一番ど真ん中から出てくるのですが、放射
線を出す能力という意味で、放射能という言葉が使われています。放射能からは
放射線が出てくるわけです。

それで放射線の一番の大きな作用についてですが、私はまず肉体的な変化、医学
的な変化を見る前に、物理的にどういう変化があるかということを捉えることが
大事だと思って、その目線でみなさんにお話しています。その場合、重要なのは
放射線が電離という作用を持っていることです。電離とは、原子の中の小さい電
子という粒々を、吹き飛ばすことです。それで結果的には分子を切ってしまいま
す。原子だ、分子だ、電子だと、大変難しい言葉が出てきて申し訳ないのですが、
スライドをみながら説明します。

原子がつながってできた分子の絵が書いてあります。私たちの体の中で生理的な
機能を果たすものは、すべて分子から構成されています。この中の原子がどうして
お互いに結びつくことができるのかというと、電子が軌道を重ねて、ペアを作る
ことで、非常に強い結合力が生じます。そういう状態が、原子と原子がつながる
原理です。

ここに放射線がやってくると、せっかくペアになってつながっている電子が、飛
ばされてしまうわけです。とくに電子として、一番外側の軌道を回っているもの
が吹き飛ばされてしまうものですから、電離、電子が原子から離されてしまうと
いう言葉を使っています。ここで分子が切断されてしまいます。これが放射線が
物質に対して果たす一番の影響です。


【分子切断の2相の危険性】

この分子が切られることで、どんな被害が出るかですが、一つはたくさんの分子
が切られてしまうわけですから、生命機能が破壊されてしまう危険がまず出てき
ます。それに対して二番目は、破壊されることを免れて、生き延びることができ
た細胞の中で、実は大変な危険が起こってしまう可能性があります。このように
考えているのは、今のところ、私一人なのですが、物理的に被害を見ていく場合
に、一番、しっかりとした見方なのではないかと自画自賛しています。

分子が切られるものだから、生理機能がうまくいかずに機能が停止してしまう。
それがまず最初の危険で、急性症状などが現れてきます。脱毛や紫斑、下痢、出
血などが、実際の被爆者のみなさんの記憶からたくさん記録されています。これ
は実際に分子切断からダイレクトに機能破壊をした効果です。もっと分子切断が
多くなると亡くなってしまいます。

二番目には、免疫力の低下、体調不全が出てきます。この免疫力の低下はあまり
重要視されていません。しかし大変、大きな危険を孕んでいます。それをチェル
ノブイリのときにアメリカにどんな現象があったかということでご説明します。


【チェルノブイリ事故後に、アメリカで起こったこと】

グラフをお見せしますが、チェルノブイリは4月26日に爆発が起こったのですが、
アメリカには約2週間してチェルノブイリの放射能の埃が届いています。新鮮なミ
ルクの中に入ったヨウ素131が調べられていますが、実際にはもっといろいろな
放射能が降っています。

その5月にどのようなことが起こったのか。エイズをはじめさまざまな感染症の人
がどれぐらい当年と前後の年の5月に亡くなったのかを比較したグラフがありま
す。エイズ関係だと事故の前の1984年5月と1985年5月を比較すると死亡者はマイ
ナス15%ぐらいになっていた。ところが1985年5月と放射性物質が降った1986年5月
を比較すると、なんと100%近く増えている。2倍の人が命を落としているのです。

全感染症の平均をみてみても、その前の年が前年比プラス10%以下だったのに、
1986年では前年にプラス30%ぐらいになっています。ストレスを持っていて、かろ
うじて命を保っている人に放射性物質が浴びせられると、たちまち命を失ってしま
います。


【年寄りには放射線の影響は少ないという思い込みは間違っている】

このグラフを見ていると、一部で「放射性物質は年の若い赤ちゃんほど敏感であっ
て、年を取ると感受性がにぶくなるから、年を取った人は放射能の埃をたくさん含
んだ食べ物を食べてもいいよ」という風潮がありますが、それが間違いであること
が分かります。全ての比較される人が、理想的に健康で、ストレスがない。免疫力
もいっぱい持っている。そういう人たちの状況で比較しますと、確かに細胞分裂を
一番している赤ちゃんほど、放射能の影響をたくさん受けるわけです。

ところがストレスや病気などのファクターは、年を取った人ほどいっぱい持ってい
ます。ですから年を取ると、免疫力の低下に関して凄く影響を受けるファクターが
生じるのです。赤ちゃんに被曝をさせまいとするのは大切ですが、市民のみなさん
には、全員が被曝を避けるということをしていただかないといけないと思います。


【DNAの異常再結合】

先ほどのグラフに戻って、第二番目のご説明をしますが、細胞が生き延びる時に、
つまり分子切断がDNAの切断として行われたときに、生物の生きている作用とし
て再びつなごうとする、再結合をしようとする作用が働きます。そのときにちゃん
と元通りに戻らなくて、異常再結合してしまう場合が起こる。この影響が、晩発性
としてがんになったり、遺伝的影響が出たりする放射能の被害に直結しています。

次の絵は、DNAが放射線を浴びて切断されることをモデル化したものです。γ線
がやってきたときには、DNAはところどころまばらに分子切断される。そうする
と周りの組織までやられていないので、元のように正常に再結合する確率が高くな
ります。これが外部被曝で主になるγ線で被曝したときのことを絵に書いたものです。

これに対してα線やβ線の被曝の場合、外部被曝の場合はあまり問題になりません
が、内部被曝の場合、とくにα線の場合は、あたる分子の全てを切ってしまう。そ
うすると再結合をしようとしたときに、結びつきが可能になるものが、周囲にたく
さんあるものですから、異常再結合してしまいやすい。異常に結びついてしまい、
DNAで言えば変成されてしまう、あるいは組み替えられてしまうという表現があ
りますけれども、こうした細胞が生き延びてしまうと、体の中で、何十回も細胞分
裂が繰り返されてコピーされるなかでがんになってしまいます。がんになるにはこ
のように何十回もの遺伝子の変成が必要になり、時間がかかって出てきます。

被害をごまかそうとする側にとっては、都合のいい出方になります。被害者にとっ
ては因果関係が特定しかねる出方になってしまいます。これが晩発性と呼ばれてい
る被害の現れ方です。こういう遺伝子の変成が、精子や卵子の中で起きると、子孫
に対する影響も出ると言われています。

具体的にではどのように遺伝子が変成されていくか。いっぱいいろいろな経路やメ
カニズムがあります。今日はこの点は具体的にお話せずに進ませていただきます。
医学的には、どう進んでいくか、周辺にどのような影響があるか、重要になってき
ますが、今日は割愛させていただきます。

続く
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