守田です。(20111105 12:00)
昨日、自発核分裂が原子炉の外で起こっていること事態が極めて異常で危険な
事態であることを指摘する記事を書きましたが、さらに中性子で被曝すると
どうなるのかを調べました。この際、これまでもたびたび、有益なアドバイス
をしてきてくれた、科学者の友人のAさんに助言を求めたところ、非常に説得
力があり、かつ読みやすい返事をいただけたので、みなさんにご紹介します。
あらかじめポイントを記しておくと、中性子線は、ICRPの報告でも、γ線の
5倍から20倍の人間への打撃力を持っているとされているそうで、危険性が
高い放射線であることは間違いありません。事実、東海村で起きたJCO事故で
作業員の方たちの命を奪ったのも、ウラン燃料の臨界によって発生した中性子
線でした。
しかし実はこうした事故がありながら、中性子線の人体への影響、とくに晩発
性の疾患との関係などは、まったく研究が進んでいないのが実情のようです。
これはAさんの指摘の中にある、放射線医学研究所のレビューを見ればよく分か
ります。レビューを書かれた方は、この状態に危機感を覚え、中性子線の人体
への影響を調べることの重要性を訴えているのですが・・・。
さらにAさんは、自発核分裂をする物質を体内に取り込んでしまった場合、内部
被曝してしまった場合に何が起こるかの推論を書いてくれました。端的に言えば
体内で核分裂が起こってしまうことになります!これは最悪の被曝と言えると
思います。まず核分裂に伴って、体の内側から中性子が放出されます。中性子は
ほかの原子にあたると、それをも放射化してしまうのでそこからも放射線が出る。
また核分裂ですので、当然にもヨウ素やセシウムをはじめ、あらゆる放射性核種
が発生します。それがそれぞれに放射線を出します。またヨウ素は甲状腺に集ま
り、ストロンチウムは骨に集まりと、それぞれに特徴を持った人体への影響を与
えることをこれまでも述べてきましたが、その大元が体内でつくられ続けること
になる。もちろん核分裂で発生するエネルギーも人体へのダメージになる。
つまり自発核分裂をする物質による内部被曝では、二重三重のダメージが人体に
与えられることになります。これは大変な脅威です。その可能性を持った物質が
格納容器の外に出てしまっていること、さらにそれがどこまで拡散しているか
分からないのが私たちをとりまく現状だということです。対処としてはとにかく
放射性物質を含む可能性のあるものを徹底して避けることが大事です。
またそのためには、もっと大規模で徹底したモニタリング、超ウラン元素の飛散
の現状の把握が必要です。東電の今回の騒ぎから、私たちはこの結論をこそ、
引き出さなくてはならないのではないでしょうか。自発核分裂がどれほど恐ろし
いものであるか、そのようなものを環境中に出してしまった政府と東電の責任と
ともに、さらに徹底して追及していきたいと思います。
以下、Aさんからの提言を貼り付けます。
***************
中性子線の人体への影響と自発核分裂物質による内部被曝について
Aです。
自発核分裂とか、中性子線の話題が出てきたので、
いよいよ本題に入ってきたなという感じがしています。
まず、基本として、いちおうICRP(1990)による放射線荷重係数を示します。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040202/01.gif
中性子線の荷重係数は、γ線1に対して5-20倍という感じで、
エネルギー帯域に対する分布関数として得られています。
たいていの人が、中性子線の被ばくに関する考察をここで止めています。
では、中性子線の低線量被ばくの影響はどのくらい調べられているのでしょう。
オーソドックスなところで、放医研の2001年くらいにおけるレビュー記事として、
「中性子線の生態影響に関する研究」
http://www.nirs.go.jp/news/event/2001/program_12/pro14.htm
というのがあります。これは、一読をお勧めします。
これを読むと、中性子線の被ばくに関しては重要性が認識されながらも、
先行研究が非常に乏しいことが分かります。
中性子そのものは荷電粒子ではないので、透過だけしてくれれば問題は無いが、
実際には物質に含まれる安定な原子核(軽元素・・・水素、酸素、窒素など)
と反応して、これを放射化したり、衝突してγ線やX線などの放射線を発生させ
ますから、決して無視できません。
中性子線は、もっとも注意すべき放射線です。
まず、透過性が抜群に優れている。
かなり厚い鉛板か、水の層、水を含むコンクリートでないと防げません。
したがって、普通の防護服では身が持たない。
今回の事故の初期に、吉田所長が一時、作業員全員を休憩所に
総員退避させましたが、おそらく中性子線が出ていたため
(あるいは出る恐れがあったため)でしょう。
JCO臨界事故で防護服を着ていた作業員が浴びたのはほとんど中性子線ですし、
古くは、マンハッタン計画でのプルトニウム「デーモン・コア」の事故があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%82%A2
広島・長崎の原爆でも、中性子線は出ているはずです。
いずれも膨大な線量を浴びたことによる事故なので例外的として扱われ、
中性子の低線量被ばくの実態はよく分かっていない・・・ことになっています。
でも、冷戦期には中性子爆弾の研究が盛んに行われ、
中性子の威力は、軍事面ではよく理解されていたでしょう。
その内部被ばくについても認識されていたでしょう。
■自発核分裂について
さて、もろもろの放射性同位体の基礎データについては、下記のウェブサイトを
ブックマークしてください。
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/
これで核種ごとのページに移動して、
Page Two
Nuclides/ Isotopes
というリンクに移動すれば、全放射性同位体の基礎データが得られます。
プルトニウムについてはこちら
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/Pu-pg2.html#Nuclides
キュリウムについては、こちら
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/Cm-pg2.html
キュリウムの同位体と半減期(Half life)、崩壊(DM=decay mode)のところに、
SFとあるのが自発核分裂(SF=spontaneous fission)で、
BR(BR=Born Ratio)が、半減期サイクルに占めるSFモードの割合です。
ちょっと分かりにくい感じもありますが、Cm-240やCm-242は、
比較的に半減期が短いんですね(27日、約160日)。
Pu-240が個数にしてCm-240やCm-242の20000~100000倍くらいの量あれば、
Pu-240による自発核分裂も無視できないのですが、
キュリウムの生成量を計算しないと、ちょっとよく分からんですね。
それに、自発核分裂由来の連鎖反応を全く考慮に入れないというのも解せない。
一回で吸収されるよりも、核燃料の組成と存在形態によって、いろいろなケースが
ありえると考えた方が自然な気がしますし、
6月、8月、9月などに散発的に起きていた線量の上昇なども、
それで説明できるんじゃないかと思いますがね。
さて、閑話休題。
自発核分裂が内部被ばくに与える影響を考えてみました。
Pu240の自発核分裂で生じる中性子の数は、
1グラムあたり1秒間に約1000個です。けっこう多い。
(参考URL http://en.wikipedia.org/wiki/Spontaneous_fission#Spontaneous_fission_rates)
まあ、Pu240の量が1グラムもあるわけ無いから大丈夫?いやいやいや。
Pu240を1マイクログラム(0.000001グラム)、体内に取り込んだときに、
この粒子が1年に何個中性子を放出するかを考えてみると・・・
一年は365日、一日は24時間、一時間は3600秒なので、
0.000001*1000*365*24*3600=31536
というわけで、年間、30000個の中性子が生成され、
さらに30000個のFP(核分裂生成物)が新たに創出されることになります。
もちろん、このFPは、ストロンチウムにも、ヨウ素にも、セシウムにも、
なんにでもなり得ます。
なので、プルトニウムを吸い込むというのは、アルファ線の放出のみならず、
自発核分裂性の場合は、中性子線と、体内でのさらなる放射性物質の創出による
内部被ばくの危険性にさらされるので、二重にも三重にも厳しい。
それに、
核燃料集合体の場合、プルトニウム240のみが単独で存在するような系よりも、
Pu239やU235などの核分裂性の元素が混合した粉末状固体として存在しているわけで、
体内細胞の水環境に、この粉末が入ると、
いわば体内にナノパーティクル・サイズの原子炉が出来てしまい・・・
自発核分裂で生成された中性子に起因して、
或る程度の回数の核分裂連鎖反応が起きるのではないかと。
これが、この間、私がもっとも恐れているシナリオです。
倍倍ゲームで増えるから、単純に考えれば、
自発核分裂一回あたり連鎖反応がたった5,6回続いただけでも、
50個くらいのFPが新たに生成されるわけです。
それが年間に30000回とすると、軽く1,500,000個のFPが体内で生成される。
それがまた崩壊して放射線を発する・・・
しかも、半減期が極端に短いものが出て来たら、高ベクレル数になるうえ、
安定同位体になるまで何回もβ崩壊を続けるので、とても厄介なことになる。
こういうわけで、超ウラン元素を含む核燃料の飛散というのは、
K-40のような自然界に普遍的に存在するα崩壊核種とは
全然違う危険性を孕み持つと、シロウトなりに考えるものです。
しかし、いまだに(公的には)原因不明とされる
ロッキー・フラッツのプルトニウム被害や、
ドイツの原子炉周辺での発ガン率の問題などを考える際には、
ICRPの各種放射線の線量当量方式で説明できない、
超ウラン元素の内部被ばくの特異性に目を向けざるを得ないと思うのです。
私がひところ、核分裂反応が起きる最小サイズの核燃料について、
血眼になって実験データを探していたのは、そのためです。
ーーーーー
最近は、ちらほらと、旧作の反核映画を見てます。
「風が吹くとき」は、やや教条主義的な感じもあるが、力作のアニメでした。
「Dark Circle」は傑作で、ロッキーフラッツの歴史を認識する上で必見です。
同じ頃に作られたドキュメンタリーで「Atomic Cafe」もよかったです。
これは、マイケルムーアの「Bowling For Colonvine」に影響を与えたとか。
あと、新藤兼人監督の「第五福竜丸」も、面白かった。
今の20代以下の若い世代には、
冷戦時代の感覚というのがピンと来ない人が多いと思うので、
あえて旧作映画を見せることで、歴史感覚を養ってもらいたいんですよね。
冷戦下の当時は核戦争が日常の一部に溶け込んでいた時代だったので、
狂気の質が現在と違ってて、「面白い」。
現代は、市場経済万能主義の狂気が横溢していて、
これもまた30年くらいたてば、異様な時代として顧みられるのでしょう。
まあ、すでにかなり異様なのですけれども。
昨日、自発核分裂が原子炉の外で起こっていること事態が極めて異常で危険な
事態であることを指摘する記事を書きましたが、さらに中性子で被曝すると
どうなるのかを調べました。この際、これまでもたびたび、有益なアドバイス
をしてきてくれた、科学者の友人のAさんに助言を求めたところ、非常に説得
力があり、かつ読みやすい返事をいただけたので、みなさんにご紹介します。
あらかじめポイントを記しておくと、中性子線は、ICRPの報告でも、γ線の
5倍から20倍の人間への打撃力を持っているとされているそうで、危険性が
高い放射線であることは間違いありません。事実、東海村で起きたJCO事故で
作業員の方たちの命を奪ったのも、ウラン燃料の臨界によって発生した中性子
線でした。
しかし実はこうした事故がありながら、中性子線の人体への影響、とくに晩発
性の疾患との関係などは、まったく研究が進んでいないのが実情のようです。
これはAさんの指摘の中にある、放射線医学研究所のレビューを見ればよく分か
ります。レビューを書かれた方は、この状態に危機感を覚え、中性子線の人体
への影響を調べることの重要性を訴えているのですが・・・。
さらにAさんは、自発核分裂をする物質を体内に取り込んでしまった場合、内部
被曝してしまった場合に何が起こるかの推論を書いてくれました。端的に言えば
体内で核分裂が起こってしまうことになります!これは最悪の被曝と言えると
思います。まず核分裂に伴って、体の内側から中性子が放出されます。中性子は
ほかの原子にあたると、それをも放射化してしまうのでそこからも放射線が出る。
また核分裂ですので、当然にもヨウ素やセシウムをはじめ、あらゆる放射性核種
が発生します。それがそれぞれに放射線を出します。またヨウ素は甲状腺に集ま
り、ストロンチウムは骨に集まりと、それぞれに特徴を持った人体への影響を与
えることをこれまでも述べてきましたが、その大元が体内でつくられ続けること
になる。もちろん核分裂で発生するエネルギーも人体へのダメージになる。
つまり自発核分裂をする物質による内部被曝では、二重三重のダメージが人体に
与えられることになります。これは大変な脅威です。その可能性を持った物質が
格納容器の外に出てしまっていること、さらにそれがどこまで拡散しているか
分からないのが私たちをとりまく現状だということです。対処としてはとにかく
放射性物質を含む可能性のあるものを徹底して避けることが大事です。
またそのためには、もっと大規模で徹底したモニタリング、超ウラン元素の飛散
の現状の把握が必要です。東電の今回の騒ぎから、私たちはこの結論をこそ、
引き出さなくてはならないのではないでしょうか。自発核分裂がどれほど恐ろし
いものであるか、そのようなものを環境中に出してしまった政府と東電の責任と
ともに、さらに徹底して追及していきたいと思います。
以下、Aさんからの提言を貼り付けます。
***************
中性子線の人体への影響と自発核分裂物質による内部被曝について
Aです。
自発核分裂とか、中性子線の話題が出てきたので、
いよいよ本題に入ってきたなという感じがしています。
まず、基本として、いちおうICRP(1990)による放射線荷重係数を示します。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09040202/01.gif
中性子線の荷重係数は、γ線1に対して5-20倍という感じで、
エネルギー帯域に対する分布関数として得られています。
たいていの人が、中性子線の被ばくに関する考察をここで止めています。
では、中性子線の低線量被ばくの影響はどのくらい調べられているのでしょう。
オーソドックスなところで、放医研の2001年くらいにおけるレビュー記事として、
「中性子線の生態影響に関する研究」
http://www.nirs.go.jp/news/event/2001/program_12/pro14.htm
というのがあります。これは、一読をお勧めします。
これを読むと、中性子線の被ばくに関しては重要性が認識されながらも、
先行研究が非常に乏しいことが分かります。
中性子そのものは荷電粒子ではないので、透過だけしてくれれば問題は無いが、
実際には物質に含まれる安定な原子核(軽元素・・・水素、酸素、窒素など)
と反応して、これを放射化したり、衝突してγ線やX線などの放射線を発生させ
ますから、決して無視できません。
中性子線は、もっとも注意すべき放射線です。
まず、透過性が抜群に優れている。
かなり厚い鉛板か、水の層、水を含むコンクリートでないと防げません。
したがって、普通の防護服では身が持たない。
今回の事故の初期に、吉田所長が一時、作業員全員を休憩所に
総員退避させましたが、おそらく中性子線が出ていたため
(あるいは出る恐れがあったため)でしょう。
JCO臨界事故で防護服を着ていた作業員が浴びたのはほとんど中性子線ですし、
古くは、マンハッタン計画でのプルトニウム「デーモン・コア」の事故があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%82%A2
広島・長崎の原爆でも、中性子線は出ているはずです。
いずれも膨大な線量を浴びたことによる事故なので例外的として扱われ、
中性子の低線量被ばくの実態はよく分かっていない・・・ことになっています。
でも、冷戦期には中性子爆弾の研究が盛んに行われ、
中性子の威力は、軍事面ではよく理解されていたでしょう。
その内部被ばくについても認識されていたでしょう。
■自発核分裂について
さて、もろもろの放射性同位体の基礎データについては、下記のウェブサイトを
ブックマークしてください。
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/
これで核種ごとのページに移動して、
Page Two
Nuclides/ Isotopes
というリンクに移動すれば、全放射性同位体の基礎データが得られます。
プルトニウムについてはこちら
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/Pu-pg2.html#Nuclides
キュリウムについては、こちら
http://environmentalchemistry.com/yogi/periodic/Cm-pg2.html
キュリウムの同位体と半減期(Half life)、崩壊(DM=decay mode)のところに、
SFとあるのが自発核分裂(SF=spontaneous fission)で、
BR(BR=Born Ratio)が、半減期サイクルに占めるSFモードの割合です。
ちょっと分かりにくい感じもありますが、Cm-240やCm-242は、
比較的に半減期が短いんですね(27日、約160日)。
Pu-240が個数にしてCm-240やCm-242の20000~100000倍くらいの量あれば、
Pu-240による自発核分裂も無視できないのですが、
キュリウムの生成量を計算しないと、ちょっとよく分からんですね。
それに、自発核分裂由来の連鎖反応を全く考慮に入れないというのも解せない。
一回で吸収されるよりも、核燃料の組成と存在形態によって、いろいろなケースが
ありえると考えた方が自然な気がしますし、
6月、8月、9月などに散発的に起きていた線量の上昇なども、
それで説明できるんじゃないかと思いますがね。
さて、閑話休題。
自発核分裂が内部被ばくに与える影響を考えてみました。
Pu240の自発核分裂で生じる中性子の数は、
1グラムあたり1秒間に約1000個です。けっこう多い。
(参考URL http://en.wikipedia.org/wiki/Spontaneous_fission#Spontaneous_fission_rates)
まあ、Pu240の量が1グラムもあるわけ無いから大丈夫?いやいやいや。
Pu240を1マイクログラム(0.000001グラム)、体内に取り込んだときに、
この粒子が1年に何個中性子を放出するかを考えてみると・・・
一年は365日、一日は24時間、一時間は3600秒なので、
0.000001*1000*365*24*3600=31536
というわけで、年間、30000個の中性子が生成され、
さらに30000個のFP(核分裂生成物)が新たに創出されることになります。
もちろん、このFPは、ストロンチウムにも、ヨウ素にも、セシウムにも、
なんにでもなり得ます。
なので、プルトニウムを吸い込むというのは、アルファ線の放出のみならず、
自発核分裂性の場合は、中性子線と、体内でのさらなる放射性物質の創出による
内部被ばくの危険性にさらされるので、二重にも三重にも厳しい。
それに、
核燃料集合体の場合、プルトニウム240のみが単独で存在するような系よりも、
Pu239やU235などの核分裂性の元素が混合した粉末状固体として存在しているわけで、
体内細胞の水環境に、この粉末が入ると、
いわば体内にナノパーティクル・サイズの原子炉が出来てしまい・・・
自発核分裂で生成された中性子に起因して、
或る程度の回数の核分裂連鎖反応が起きるのではないかと。
これが、この間、私がもっとも恐れているシナリオです。
倍倍ゲームで増えるから、単純に考えれば、
自発核分裂一回あたり連鎖反応がたった5,6回続いただけでも、
50個くらいのFPが新たに生成されるわけです。
それが年間に30000回とすると、軽く1,500,000個のFPが体内で生成される。
それがまた崩壊して放射線を発する・・・
しかも、半減期が極端に短いものが出て来たら、高ベクレル数になるうえ、
安定同位体になるまで何回もβ崩壊を続けるので、とても厄介なことになる。
こういうわけで、超ウラン元素を含む核燃料の飛散というのは、
K-40のような自然界に普遍的に存在するα崩壊核種とは
全然違う危険性を孕み持つと、シロウトなりに考えるものです。
しかし、いまだに(公的には)原因不明とされる
ロッキー・フラッツのプルトニウム被害や、
ドイツの原子炉周辺での発ガン率の問題などを考える際には、
ICRPの各種放射線の線量当量方式で説明できない、
超ウラン元素の内部被ばくの特異性に目を向けざるを得ないと思うのです。
私がひところ、核分裂反応が起きる最小サイズの核燃料について、
血眼になって実験データを探していたのは、そのためです。
ーーーーー
最近は、ちらほらと、旧作の反核映画を見てます。
「風が吹くとき」は、やや教条主義的な感じもあるが、力作のアニメでした。
「Dark Circle」は傑作で、ロッキーフラッツの歴史を認識する上で必見です。
同じ頃に作られたドキュメンタリーで「Atomic Cafe」もよかったです。
これは、マイケルムーアの「Bowling For Colonvine」に影響を与えたとか。
あと、新藤兼人監督の「第五福竜丸」も、面白かった。
今の20代以下の若い世代には、
冷戦時代の感覚というのがピンと来ない人が多いと思うので、
あえて旧作映画を見せることで、歴史感覚を養ってもらいたいんですよね。
冷戦下の当時は核戦争が日常の一部に溶け込んでいた時代だったので、
狂気の質が現在と違ってて、「面白い」。
現代は、市場経済万能主義の狂気が横溢していて、
これもまた30年くらいたてば、異様な時代として顧みられるのでしょう。
まあ、すでにかなり異様なのですけれども。