明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(336)放射線影響研究所が、内部被曝調査を1989年に打ち切っていた!

2011年11月26日 22時00分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111126 22:00)

矢ケ崎さん講演録を掲載中に、次々と、これに関連する事実が浮かび上がっ
てきていますが、今回は、内部被曝隠しの一端が明るみに出ました。広島・
長崎の、放射線影響研究所(放影研)が、長崎・西山地区住民に対する内部
被曝調査を、1989年に打ち切ってしまい、以降、20年以上、研究が途絶えて
いるという報道です。

放影研は、311以降にしばしばマスコミに登場し、放射線の人体への影響を
非常に軽んじた「解説」を繰り返していますが、もともとこれはアメリカの
原爆傷害調査委員会(ABCC)の末裔の組織です。アメリカが、原爆の性能を
調べるとともに、被爆者の現実、とくに内部被曝による健康被害の実態を
隠すために組織したものであり、多くの被爆者の怒りと恨みを買っています。

ベトナム戦争にアメリカが戦費を使いすぎたことによって、日本側の経営
への参加が求められ、日米合同組織に変わりましたが、もともとアメリカ
核戦略の一端を担ってきた組織であり、その性格を現在も色濃く受け継いで
います。そのことが内部被曝調査を密かに打ち切って、データを蓄積しない
ようにしていたことに端的に現れています。

またこの放影研の長滝元理事長は、今回の事故に際しても、4月に「チェルノ
ブイリ事故との比較」と銘打った、事故の影響、死者数などをきわめて低く
見積もった提言を、他の人士と連名で首相官邸ホームページに載せるなど
しています。まったくの虚言としかいえないもので、こうした点には、放影研
が、今回の事故でも、被害を極端に小さく見せる側に与していることが分かり
ます。

こうした虚言が、平然と首相官邸ホームページに載せられ続けているのが私
たちの国の現状です。本当に繰り返しウソばかりつく政府に、騙されないよう
にしましょう!内部被曝の恐ろしさを隠すことを認めず、しっかりとした放射
線防護態勢を築いていきましょう!

************

放影研、89年に調査中止 内部被ばく実態、20年不明
共同通信 2011/11/26 14:02

日米両政府が運営し、原爆被爆者の健康を調査する「放射線影響研究所」
(放影研、広島市・長崎市)が、原爆投下後に高い残留放射線が見つかっ
た長崎市・西山地区の住民から、セシウム検出など内部被ばくの影響を確
認し、研究者らが調査継続を主張してきたにもかかわらず、1989年で
健康調査を打ち切っていたことが26日、関係者への取材で分かった。

45年から続く貴重な内部被ばくの継続調査だったが、打ち切りによって
健康への影響や実態の解明は20年以上、進んでいない状態。放影研は調
査終了の理由について「健康被害が確認されず、当初の研究目的を達成
したため」と説明。
http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011112601003088.html
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明日に向けて(335)子どもたちを放射能から守るために・・・矢ケ崎さん講演録(3)

2011年11月26日 18時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111126 18:30)

矢ケ崎さん講演録の3回目をお届けします。今回は内部被曝のメカニズムやその
実相についてです。この中で難しい言葉ですが、放射平衡という言葉がでてき
ます。「放射性物質は放射線を出して崩壊していく。半分になるまでの時間を
半減期という」・・・よくこのような説明を耳にしますが、これだと、放射線を
出す力が半分になると読めてしまいます。

実際には違います。ある核種の放射線を出す力が半分になる、あるいはある核種
の量が半分になることを意味していて、実際には放射線を出した物質は、違う物
質に変わります。これを「崩壊」と呼びます。通常に使われている意味の「崩壊」
ではないのです。問題は違う物質になるとそこからも放射線が出ることで、ある
時期にはもとの核種からの放射線と、「崩壊」してできた放射線が重なって出て
きます。これが「放射平衡」の意味です。

今回の講演では触れていませんが、矢ケ崎さんはこの「放射平衡」を非常に重要
視して、しばしば語られる次のような見解、「放射性物質は原爆投下直後や、原
発事故当初がもっとも多く出てきていて、その後に放射線の量は急速に減ってい
く」という考え方を批判されています。放射並行により、むしろ一時的に放射線
の量は増加し、その後に下がっていくからです。

このことは、広島や長崎で、あとから汚染地帯に入って被曝した「入市被曝」を
考えるときにも非常に重要なポイントになります。この点もまた隠されることで
原爆投下後に何日も経ったにもかかわらず、まだたくさんの放射能が舞っている
市内に入って被曝してしまった人が、「被爆者」から除かれてきたからです。

・・・説明が長くなってしまいました。以下、ぜひお読みください。

****************

矢ケ崎克馬講演録(3)

子どもたちを放射能から守るために
-知られなかった内部被曝の実相-
2011年11月19日 


【内部被曝の脅威】

私も随分、内部被曝と外部被曝について発言させていただいていますが、次に内部
被曝の具体例を示します。一つは肺の中に吸い込んでしまうこと、一つは水
や食べ物の中に含まれている放射性物質を食べ物と一緒に体の中に入れてしまうと
いうメカニズムです。体の中に入った放射性物質から出てきた放射線で体の中が被
曝してしまうので、内部被曝と呼ばれています。

この埃が実は非常に細かいもので、一番大きいものが、1000分の1ミリメートル以
下、単位をマイクロメートルといいますが、1マイクロメートル以下の放射能の埃
であると言われています。私も3月25日から福島に入りましたが、まったく放射能
の埃は見えませんでした。周りの放射線の量は計測してみると、だいたい10マイク
ロシーベルト毎時と凄い量があるのですが、まるっきり見えません。

しかしこの見えない埃の中に、1000分の1ミリメートルの直径なら、だいたい1兆個
ほどの原子が含まれています。体の中に1兆個ほどの原子が入ってきますけれども、
この中からバンバンと放射線が出るわけですね。そういうわけで内部被曝の場合は、
外部被曝の場合よりも、浴びる放射線量が随分、多くなってしまいます。

外部被曝で放射能を帯びた物質の埃は、原子の種類によって3種類の放射線を出す
わけですけれども、その中でγ線だけは随分遠くまで飛んでいきます。空気中で
70mも飛んでいく測定結果が紹介されていますが、これはなぜかというと、物質と、
つまり例えば人間の体との相互作用が非常に少なくて、ところどころしか分子切断
をしない。そのためにところどころであたっても、エネルギーを残したまま、体か
ら突き抜けてしまうのです。分子を1回切断するごとにエネルギーを失っていくの
ですが、失う機会が少ないので、随分、遠くまで飛んでいってしまいます。それ
が遠くまでいく物理的な理由なのです。

それに対してα線の場合は、約45ミリ程度、β線の方は約1mしか飛びません。外部
被曝の場合だったら、体が埃から1m以上離れていれば、γ線しか届かないわけです。
しかし具体的にはこの1mをβ線が飛ぶ中で、分子の切断は2万回から3万回行われま
す。α線の場合には、体の中では100分の4ミリメートルしか進むことができません
けれどもその中で10万個の分子切断が行われてしまいます。

そういうわけで、α線やβ線が遠くまで飛ばないというのは、ギシギシと分子の切
断を行うからなのです。それで埃が体の外にあるときは、ほとんどγ線だけを考慮
すればいいのですが、埃が体の中に入ってしまうと、出てくるすべての放射線が、
体の中で分子切断をするという被曝を与えてしまうわけです。そういう意味で、内
部被曝の被曝の仕方の方が、随分激しいものがあります。

外部被曝しか見ていない人は、内部被曝の見方が非常に中途半端で、「内部被曝は
外部被曝の3%程度だ」などという人もいますが、とんでもないことですね。内部
被曝は、外部被曝より凄く深刻です。内部被曝ではα線やβ線が関与して、非常に
高密度な分子切断が行われます。それが体の中に放置されることで、いろいろな効
果が重なって出てきます。


【内部被曝の実相・・・放射平衡による放射線の重なり】

例えば食べ物と一緒に放射性の埃が入った。それが直径0.1マイクロメートルだと
しましょう。10000分の1ミリです。そこにはだいたい10億個の原子が入っています。
β崩壊、β線を出すセシウムやヨウ素を念頭におきますと、β線は体の中では1㎝し
か飛びません。それでセシウムがこの埃を形成しているとすると、1時間にだいたい
2600本の放射線が出ます。セシウムの半減期は30年と言われています。

それに対してヨウ素は8日間の半減期ですから、単位あたりの放射線量が凄く多くて、
1秒間に1000本もの放射線を出します。それで内部被曝が起こります。さらに崩壊
系列というものがあります。外部被曝しか問題にしない方は、セシウムの被曝はγ
線だなどと言いますが、物理的には、セシウムはβ線しか出さないのですが、β線
を出すとバリウムという物質に変わって、これがγ線を出します。β線を出すのと
バリウムになってγ線を出すことが同期してしまう。これを放射平衡というのです
が、β線と一緒に同じ数のγ線が出てくる。だからセシウム137の放射線はγ線だ
などと言っていますが、これははしょった言い方で、内部被曝の場合にはβ線を勘
定に入れないと、被曝量をまるっきりとらえられません。

そういったことはが他にもいっぱいあるのですが、この埃が食べ物と一緒に小腸の
管を移動していくとなると、だいたい1㎝の球を描いて、その中にいっぱいに放射線
がでてきます。この腸管の中にできる食べ物と埃の球の直径は、小腸の腸管のサイ
ズよりも少し大きい状態が具体的なものですから、小腸の管で分子切断が集中して
しまいます。それでわずかな量で下痢が起こってしまいます。

これと同じだけの症状を外部被曝で出すならば、非常に大量のγ線を外から放射し
てやらなければいけません。こういう意味でヨーロッパ放射線リスク委員会など、
内部被曝をまじめに考えている科学者集団は、内部被曝は外部被曝の700倍の実行
線量があると考えています。700倍という数字そのものはともかくとして、非常に
大きな被曝効果があるのが内部被曝です。

ちなみにヨウ素を1000万分の1ミリグラム、もう埃とも感じない量なのですが、たっ
たこれだけを、1週間からだの中に保持していると、1シーベルトという巨大な被曝
量になってしまいます。これが内部被曝で体内に放置された放射性物質からの被曝
量ですね。

続く

*********

なお以下から、当日の集会の様子が見れます。後半のディスカッションの部です。

いまこそ原発を問う連続講座
http://d.hatena.ne.jp/genpatsu-iyayo/20111124/1322145132
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