今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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タカノ・シャトーを復活させるの巻

2014年04月03日 22時27分53秒 | インポート

Img_380831 茨城のご常連さんから腕時計が3個届いていますので、PEN-FTブラックの気分転換に少し手掛けてみようと思います。モデルは、タカノ・シャトーですね。タカノは1957年から5年余り名古屋で腕時計を生産したメーカーで、伊勢湾台風によって工場が被災して生産を停止し、後に現在のリコーに吸収されたとのことです。生産期間が短いので、市場に出て現存している個体数も少なく、幻のタカノとか言われているようです。1号機から3号機まで3個ですが、点検すると、2号機が外観も良く、このまま復活させたい。残りの個体はニコイチで何とか仕上がればというところでしょう。

Img_380961 ご要望のメールをチェックしてから点検します。まず、秒針と長針が共回りしますね。これは、秒針の圧入し過ぎでしょう。機械は、テンプをアシストしても全くトルク伝達が無く不動状態です。典型的な油切れというところ。








Img_381155 このモデルは薄さがセールスポイントだったようで、確かに機械も薄く設計されていますが、地板の仕上げはお世辞にも良いとは言えませんね。セイコーとはかなりの差です。









Img_381275 部品を超音波洗浄をしてから組立てています。特にひどい磨耗はありません。ザラ回しも軽いです。











Img_381346 機械はオーソドックスな軸配置で、セイコーのマーベルなどに受けのデザインが似ていますね。元気に目覚めました。









Img_381661 そのままタイムグラファーに掛けると、ずいぶん進み方向です。過去に油切れで遅れ気味となったものを補正して来たのでしょう。










Img_381721 文字盤は比較的きれいな状態ですが、中心付近が凹み気味です。たぶん、針を押し込み過ぎて工具を当てたのでしょう。これからケーシングです。









Img_381826 セイコーのクロノスなどに多いドレスウォッチのような雰囲気の文字盤と針。ケースは薄く設計されており、巻芯の逃げをベゼルにも作ってあります。金めっきはなんと50ミクロンです。他の個体も裏蓋には永年勤続記念・住友銀行と彫刻されています。国鉄物と同じで、大手の銀行ですので、大量に調達されたのでしょう。当時のタカノはメインバンクは住友だったのかな? 残念ながらリューズはTが入らない汎用部品になっています。オーナーさんから、純正の新品部品が付属して来ましたが、残念ながら巻芯のネジ部の長さが足りません。


Img_382016 秒針が、何度も圧入されたために緩くなっていて、それを無理に押し込んだために長針と接触をしていた不具合でした。時計師さんの仕事では無いでしょう。軸部部分を絞めて再圧入としてあります。これでしばらくエージングテストをします。作業終了ですのでお茶にします。







Img_382324 残りの1号機はゼンマイの逆転を留めるコハゼ部分が破損したために、バネ線を溶接して修理をしてありますが、これではダメですね。しかし、溶接する方が難しいと思うのですが・・で、1号機のケースを生かして、3号機の機械をセットすることにします。







Img_382599 風防とベゼルを分離して緑青を清掃して文字盤と針も軽く磨いておきます。完成した機械をケーシングをして終了。流石に50ミクロンの金めっきは角も剥げませんね。普及クラスの20ミクロンめっきでは、地金が露出して、その部分から腐食が進み、悲惨な状態のものが殆どですからね。







Img_382675 本物のワニ革ベルトは高級感がありますね。セイコーのマーベルやクラウンと同様に、非防水ケースの時代のエレガントな時計は、私も大好きですね。2つとも、永年勤続の記念品ですから、贈られた方は誇りを持って愛用されていたのでしょうね。アンティークの品物を手にする時、いつもそのようなことを感じてしまいます。

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