今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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PEN-W+PEN-FV 人気コンビのレストアの巻

2014年04月15日 22時01分25秒 | インポート

Img_388733 人気のPEN-WとPEN-FVが来ていますね。ペンファンなら、どなたでも手元に持ちたい機種ですね。しかし、両方とも、現役から遠ざかって、長い時間放置されていたようです。特に、PEN-FVの方は、改良前のユニットを使われた個体で、巻上げのゴリツキやリターンミラー、全反射ミラーなどの腐食も進んで、セルフタイマーはご覧のとおり固着しています。





Img_388854 両方ともばっちいんだけどね。まずはPEN-Wからやりましょう。長期の放置でレンズには華やかにカビが発生していますね。バルサム黄変もありますが、これは普通程度で、あまり紫外線は当っていなかったのでしょう。








Img_388955 現役でなかった個体には決まってシャッター羽根に錆が発生しています。無傷のように見える黒い部分も、アルコールで拭き上げると赤錆色になります。









Img_389015 ダイカスト本体とカバー類を洗浄してピカピカにしてあります。では、組立てて行きます。まずは2軸を組立てます。










Img_389210 完成したシャッターユニットを組み込みます。シャッターユニットはスローも安定して調子は悪くはありません。シャッターリングを取り付けます。









Img_389301 レンズを分解してカビを清掃します。経験的に、PEN-Wのカビは落ちるものが多いと思います。










Img_389474 トップカバーの吊環部が陥没していましたね。吊環を分離してから修正をしておきます。











Img_389522 おっと、見逃していました。シューのレールも陥没していますね。落下の時に凹んだのでしょう。う~ん、この部分は加工が折り曲げではなくて切削物なので、一度曲がったものを戻すと必ずクラックが入ります。ルーペで観察するとすでにクラックが入っています。しかし、このままではアクセサリーが取り付かないので、承知で修正をします。





Img_389724 はい、これで完成です。最初の状態からは数段良い個体になりましたよ。カタログを見ると、松本清張さんが取材にPEN-Wを使っていたようですね。点と線は鉄道のダイヤのからくりがあって好きな小説です。









Img_390085 次はPEN-FV #1032XXで1967-4製ですので、FTで言うと19万代付近と同じ設計変更前のユニットで組まれた個体ということになりますね。疲労はしていないが、長期に放置された個体で、光学系のダメージが大きいです。画像の駒数ガラスは樹脂の劣化により、内部から崩壊しています。この頃の部品は特に品質が良くなくて、金型も磨きが荒く、表面の平滑性も良くない。何故か→部分の色が滲む現象があります。




Img_390220 分解をしていきますよ。いつものように、モルトは完全に分解して粉になっています。アイピース枠は割れがありますので、ご希望により交換します。全反射ミラーも交換です。










Img_390370 プリズムのコーティングにもカビが発生しています。巻上げレバー下のトップカバー留めビス部にターミナルの接片が接着されていますね。高さ調整用に流用されたのでしょう。










Img_390451 リターンミラーの腐食は長期放置のしるし。交換します。












Img_390564 今回は、交換する前のモルトの状態をお見せしておきます。












Img_390824 劣化したモルトをそのまま放置すると、裏蓋側の塗装を侵してしまいます。












Img_391177 では、明日の組立に備えて、腐食したリターンミラーの分離と新しいミラーの接着をしておきます。











Img_391430 新しいミラーを接着した状態。













Img_391599 今回は分解時の画像をUPしています。巻上げ部には埃などが混入しています。












Img_391677 スプロケット軸と軸受はグリスが完全に固着して回転は非常に重い状態です。












Img_391864 シャッターユニットのスローガバナーの腐食が目立ちますね。












Img_392045 長期の放置で、プリズムのカビも盛大に発生しています。PEN-Fのような黒点の腐食にはなりませんが、コーティングはすでに劣化をしており、手遅れの状態です。










Img_392137

ダイカスト本体側は完成。前板関係はプリズムの清掃で、この程度きれいになっています。












Img_392334 完全に固着して作動しないセルフタイマーユニットですが、歯車が真っ赤に錆びています。時計レベルの精度が要求されれば回復は不可能ですが、何とか復活させます。










Img_392532 セルフタイマーは正常に作動します。全反射ミラーとアイピース枠は交換してあります。初期型なので、駒数板中央はスリ割りナットタイプです。組立てにくいので、以後は、逆にビスタイプに変更されます。









Img_3928401 本体の組立が終ったところで、劣化した駒数ガラスを交換しました。












Img_393090 FVは露出計ユニットがありませんので、専用部品の長いダストカバーを接着します。ピンセット先はスペーサー用に接着をされていたターミナル接片。ビスを締めるとトップカバーが歪んでしまうので、救済処置として手近にあった接片を応用したのでしょう。もちろん組立現場の判断だと思います。







Img_3931551 初期型の仕様ですから、巻き戻しダイヤルは丸のローレットタイプです。今回は、交換部品が多かったですね。救いは機械的に疲労をしていないということ。長期間の放置で状態を悪くしてしまった個体でしたね。巻上げも軽くスムーズで、良い個体となりました。あとは付属の38mmですけど、本体と同様、カビが多くて、経験的にちょっと厳しいと思いますが、オーナーさんのご希望なので・・





Img_393522 レンズには点々とカビ痕と曇りがあります。しかし、経験的に、長期間を経過したカビ痕は、清掃では落とすことが出来ないものが多いですね。










Img_393777 シボリ羽根の作動が緩慢な症状があります。付着した油を洗浄して作動を確認します。












Img_394655 これで、PEN-WとPEN-FVの稀少コンビが完成しました。両方とも、良いコンディションの個体として復活しました。
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