今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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こんなにあるんだぁ、PEN-Wの巻

2016年08月20日 20時03分07秒 | ブログ

なんですか、日本近海で次々と台風が発生していて関東地方も強い雨が断続的に降っていますよ。今年の夏は様子が変ですね。リオオリンピックは予想外?の日本人選手の活躍で盛り上がっていますが、男子400mリレーの銀メダルには感動しましたね。走力の足りないところをバトン技術で補う。創意工夫の日本精神です。で、最近、何故かPEN-Wばかり集まって来るのです。「こんなに現存数があるんだぁ」と感心したり、マニアさんの放出で入手がし易いのかな? とも思ったりします。どちらしにても、同じ機種が続くのは、画像がみな同じになってしまうので都合がよろしくない事情もあります。

この個体。かなりきれいですね。過去に無傷の個体も確認していますが、それには及ばなくともかなり良い方です。駒数ガラスはお約束のクラック入りですが、オーナーさんが純正のデット部品を入手されて交換をご希望です。純正品は良いのですけどね。使われていないだけで、クラックが入り易い欠点は同じですよ。また、梨地メッキ仕様に比べて、塗装面への接着は、接着剤が塗装膜と一体になっており、きれいに分離することが非常に困難なのです。しかも、観察すると駒数ガラスと塗装面の隙間にも接着剤が染み出していて、これは難易度がさらに高いです。

こう同じ機種が続くと書くこと無いよなぁ。ブツブツ。レンズの状態も良いですね。バルサムの黄変も少ないのが分かりますか?

 

吊環部のネジが欠落していますね。

 

 

全体的には素晴らしい状態の個体なのに、何故かシャッターリングのメッキの腐食が進んでいます。最初のオーナーさんが汗かきの手だったのかな? ここのメッキは下地のニッケルが無い直付けメッキなので、余計に汗には弱いのだと思いますね。何故に直付け? コストの問題でしょうかね。まぁ、メッキは非常にチープです。

で、シャッターユニットを本体から分離する時、1本のネジが妙に硬いのでした。この個体は未分解機と思われますが、組立時にネジを曲げたままねじ込んだため、ハウジング側のねじ山を壊しているのでした。表付近のねじ山の損傷が大きいため、完全ねじが残っている裏側からガイドとしてM1.7P0.35のタップで修正をしておきます。

何故、ネジを倒れたままねじ込んだかですが、設計にも原因があります。画像のようにネジ頭に合うドライバーで締め込もうとすると、ドライバーが垂直に入らないのです。米谷さんの設計には、このようにドライバーが真っ直ぐに入らない設計が多いと感じます。組立の容易さより、理論的な必然性を優先させた設計なのかとも思いますが、組立屋上がりの私としては、組立現場は組みにくかっただろうなぁと思います。

まぁ、そんなことで、無事シャッターユニットを本体に取り付けました。駒数ガラスも交換してあります。いつまでクラックが入らずにいられるかは知りません。

 

え~と、その他は問題のない個体ですので、ここまで組み上げました。駒数ガラスは新品できれい。吊環部の塗りネジは追加してあります。で、ここでオーナーさんからのご連絡で、メッキの劣化したシャッターリングのデッド品をお持ちとのこと。すごいですね。貴重な部品をどこで入手されたのでしょうか? その新品部品と交換して欲しいとのことですので、到着まで作業を中止とします。その間、腕時計をやる予定です。

 部品が到着するまでの間にチュードルのゼンマイ交換をしておきます。機械はETAの2824-2の8振動ですからゼンマイは強力で自動巻きのゼンマイは香箱の内周を滑るので、すでにメッキが摩耗して真鍮が露出していました。急速に摩耗が進むかも知れませんね。

香箱を組み込んで行きます。

 

 

自動巻き機構を取り付けます。

 

 

やはり、新品のゼンマイになると歩度が非常に安定してタイムグラファーの精度も非常に優秀です。

 

そうこうしている間にシャッターユニットが届きました。COPALのパッケージに入っていますよ。上下に防錆紙でサンドイッチされています。うちにもシャッターユニットの新品は残っていますけど、シャッターリング(カム板)は付属していません。カム板はシャッタースピードの調整をされている個体もありますから、本来はこれが正解ですね。

ということは、シャッターリング(カム板)はコパルで作られている訳ですね。新品の作動はシャッタースピードのクリック感がはっきりとしています。回転トルクなどを参考に覚えておきます。(それほど軽くはない)

 

クリックは先端が丸い板バネがカム板に開けられた孔に嵌ることで固定されます。使い込むと孔の角が摩耗をして、クリック感が乏しくなります。

 

その他、レンズの清掃、ヘリコイドグリスを塗布して組立、ピント調整で完成です。

 

作家の松本清張氏もPEN-Wを愛用していたんですね。枚数が多く撮れますから、取材用には重宝したのでしょうね。東京駅ホームのトリック、「点と線」など好きですね。

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