PEN-F系が長く続きましたね。では、九州のご常連さんからキングセイコーが来ていますのでやります。5626-7040(56系)は最後のKSですね。なんでも、腕に嵌めていたら風防ガラスがどこかに無くした。とのことです。う~ん、風防ガラスはベゼルで圧入されていますから、ベゼルがそのままでガラスだけ落ちることは無いはずですけどね?それと、SSベルトの上がKS用ですけど、半分しかないですね。下の別のモデル用(セイコー)のベルトにクラスプを移植して欲しいとのご依頼です。
しかし、簡単には移植出来ません。KS用のヒンジピンには抜け止め加工があります。また、寸法を計測してみると、下のベルトの取付巾が0.5mmほど広いです。
取りあえず分解して行きます。
この状態でそのまま接続出来れば問題は無いのですが、巾が合いません。クラスプ側の内寸を広げるか、ベルト側の外寸を削るかですが、ヒンジピンの保持を考慮してベルト側を削ることにします。
で、このように組み立てました。この後、ヘアーラインを入れてから洗浄をして仕上げます。次はKSのケースを見ます。
オーナーさんからは裏蓋式のツーピースケースとお聞きしていましたが、私の嫌いなワンピースケースですね。56系ロードマチックはワンピースケースが主流ですが、確かに新品で組んだ時は防水性能は良いのかも知れませんが、一度分解したら変わらないと思います。困るのは、ケースにキャリバーを固定すると地板に応力が掛かって調整をした歩度が変化してしまうことです。裏蓋と違って、何度もベゼルは開けたくないですからね。で、風防ガラスは金属リング部との接着が剥がれてガラスだけ落下したものでした。
この時代になると変に多角形のカットが多くなって、研磨はやりずらくなります。ベゼルも含めてけっこうなキズがあります。
思ったより深いキズが多いですよ。
愚痴を言っても始まりませんので、シコシコと研磨をして行きます。
では、機械を分解洗浄をして組んで行きます。特に問題の部分は無いと思いますが、過去に二度ほどO/Hを受けているようです。
日ノ裏車はバネで押されていますから注意をしてセットします。
香箱車を回しながら輪列の各ホゾが確実に入っているかを確認しながら一番受をセットします。
アンクル周辺。基本的に5606Aロードマチックと同じ機械ですが、振動数の違いからGS,KS,LMは部品が異なります。
日ノ裏側。幸い壊れやすい揺動レバーは正常に作動しました。日車押エをセットして曜車をセットします。
ここで問題が・・ゼンマイを巻くとコハゼが利かず角穴車のストッパーが掛からず戻ってしまう時あり。観察すると歯車との接触部分が摩耗気味です。ストックはありますが、今回は先端の形状を直して解決しました。
分解前の歩度測定で3分弱進み傾向でしたが、O/H後も同じ傾向でした。クロノメーターですからいけませんね。調整をしましたが、天真に摩耗がありますね。+10秒程度には入るように調整します。
研磨しておいたケースにケーシングします。
ワンピースケースは風防を圧入してしまうと歩度調整が出来ないため、KSではラグ間のネジを取り除くと歩度の調整が出来るようになっています。しかし、片振りなどの調整は機械を取り出さなくてはなりません。
文字盤には劣化と汚れがありますが不用意に拭くのは禁物です。塵をロディコで取り除いてから風防を圧入しました。
デッドストックの風防ガラスはリングとの接着剤が黄ばんで表面から見えてスカッとしません。現在はデッドストックは非常に高価になっています。先に仕上げておいたSSベルトはロードマチック用ですね。それを取り付けて完成です。
http://www.tomys800.sakura.ne.jp/