今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

女性オーナーさんのPEN-D

2011年02月08日 20時14分29秒 | インポート

Dscf201988 PEN-Dも女性オーナーさんの多い機種ですね。D2やD3よりも比較的お安く入手出来るのも原因でしょうか? しかし、元々男性のハイアマチュア向け機種ですから、女性の小柄な手にはちょっと重いですよね。症状は、シャッター羽根の開閉が緩慢でオーバーホールに来ています。この個体は#6672XXと、初期の個体ではありませんので、比較的各部の状態は良好だと思います。但し、レンズの前玉にコーティングカビ痕があるのが残念なところ。トップカバーを外してみると・・・あらら、結構ほこのまみれですね。シャッターは本体から分離せず、前から途中まで分解した形跡があります。シャッターを治そうとシャッター羽根を拭いたのでしょう。

Dscf202455 ヘリコイドの回転に違和感がありますね。この頃使用されているグリスはこのように変質しています。これは、新しいグリスと交換します。

Dscf2027871 メカ的には特に問題のある個体ではありませんが、レンズが問題ですね。PEN-D系のレンズは後玉の曇りが持病ですので、購入の時は充分注意をして点検しなければなりません。現物を見れないオークションではちょっと怖いところです。この個体も曇りがありますが、幸いなことに殆どきれいに清掃することが可能でした。手遅れの個体は清掃では落ちませんよ。

Dscf203047 メカを組立てて行きますが、この個体はダイカスト本体の塗装が控えめですねぇ。この部分は塗料が乗っていなくても問題はありませんが、きれいに塗装されている個体もあるのです。作業者が疲れていたのかなぁ・・

Dscf2032151 レンズの前玉ですが、こちらもあまり良い状態ではありませんね。←部分の大きなコーティング劣化とフィルターを装着していなかったために細かなキズが多数付いています。D系は出目金ですのでフィルター装着は必要と思いますね。今回は交換はしません。

Dscf203751 底蓋部分には番号入りのシールが貼られていますね。これはどこかの中古屋さんの管理番号じゃなかったかなぁ? オーナーさんからは「極力買い換えず、同じカメラを長く使って行きたい」とのメモを頂いていますが、大丈夫、このぐらいで買い換えていたら何台買っても一緒です。それよりしっかりとしたメンテナンスをしてあげることですね。調子は最高で新品同様です。


珍しいジョンブリアン・PEN

2011年02月07日 23時57分09秒 | インポート

Dscf200488 ジョンブリアンを始める前に外出用に使用しているセイコー・クラウンをオーバーホールさせてもらいます。クラウンはマーベルの次の世代のモデルですが、当時の傾向でケースの外径が大きくなって、この個体のケースは35mmあります。非力で腕の細い私としてはちょっと大きめな時計ですが、機械は非常に安定して信頼が置けるユニットです。ゼンマイの入っている香箱車に付く角穴車が緩んでいた以外は不具合はありませんでした。とは言っても古い機械ですから、力の掛かる香箱車の軸受けなどには少し固めのグリスを塗布して労わってやります。

Dscf202044 はい、はしょって完成。ケースが金メッキのものは長い間の汗により腐食しているものが多いものです。ステンレスSSケースの方が劣化は少なく、キズも研磨出来ますから楽ですが、年寄りになると光り物を付けたくなるのです。文字盤は特殊なタイプですが、ワニ革バンドの色と合わせて、ちょっとじじくさ過ぎるかもね。そのうち、落ち着いた文字盤と黒バンドに変えようと思います。

Dscf200585 でね。オーナーさんからは、「今なに」でUPしてとのご希望なのですが、UPはしますけど、シボ革の色が違っているだけで、普通のPENなので、あまり書くことないのですよねぇ・・ジョンブリアンはいつ頃製造された製品なんでしょうね? 作り自体は一つ前にやりました三光PENに近い感じですね。モルトは完全に風化して接着剤だけが残っていますが、すでにダイカストも腐食が進行していますので、軽く研磨をする必要があります。

Dscf201177 やっとジョンブリアン色が出て来ましたね。絵の具などの呼び名ではジョンブリアンは出て来ますが、一般的には何のこっちゃという名前でしょう。要するに肌色系統の色なんですが、実物は黄土色に近くないですか? まぁ、経時劣化はしているはずですが。画像はすべて洗浄したところ。やっぱり書くこと無いんですよねぇ・・

Dscf201358 順調に組立てていますが、レンズが惜しいですね。後玉のコーティングがカビで劣化しているのが分かるでしょ。ここの劣化は結構見ますね。その他のレンズは良好なので残念ですが、今回はこのまま組んでおきます。

Dscf201554 ファインダーは現在、接着硬化中です。その他は全て完成しています。モルトもきれいにやり直してありますよ。巻上げダイヤルを留めているネジはすでに左ネジに変更されています。先日の三光PENは右(正)ネジでした。見えないところでも、改良は進んでいくのです。

Dscf201762 ファインダーの対物レンズは樹脂製ですから、前回の三光PENに近い仕様となっています。樹脂レンズは、採用当時は早期の曇り劣化が心配されましたが、その割には現在でもきれいで(僅かな白濁はありますよ)充分実用に耐えるものです。但し、過去に乱暴な拭き上げをされているものはキズが目立ちますが、この個体はきれいでしたね。駒数計の指針も金メッキですが、巻き戻しダイヤルは変更後のもので、指針よりこちらの方が先に変更されたことが分かります。シボ革の色を変えてバリエーションを増やす手法は、上下枠が中間色のグレーだから成立したのでしょうね。製造台数はそれほど多くはなかったと推測しますので現存数も少ないと思います。状態の良い個体は更に稀少ですから大切にされてください。普通のPENをジョンブリアン仕様に仕上げることは可能ですけどね。


三光PEN+PEN-S 2.8

2011年02月04日 20時11分25秒 | インポート

Dscf1973992_3 PEN-Fを新品で購入されて現在でもお持ちの筋金入りのご常連ファンの方ですが、最近はコンパクト系を極められています。2台来ていますが、ご依頼は真ん中の三光商事の頃の特徴を持ったPEN #1448XXですが、ご心配は裏蓋のマーク下にMADE IN JAPANのホットスタンプが無いということ。う~ん、私もPENの研究家ではありませんので実際に自分の目で確認したことしか言えませんね。しかし、試料数が少ないですから断定的な言い方は避けます。で、部屋で目に付いた個体を見ましたが、左の#120648は入っていますね。右の#140783は入っていません。これだけ見ると12万台頃は入っていて、14万台頃には省略された可能性がありますね。普通に考えれば、生産が軌道に乗って輸出を検討し始めた時に製造国名を追加するのが自然とも思いますが、今回は逆の経過になっています。諏訪工場製PENでは底蓋部分にMADE IN JAPANがプレスされていますが、今回の個体はそれがありません。私が思うに、確かにOLYMPUS TOKYOとMADE IN JAPANのダブルネームはくどいようにも感じられます。TOKYOが入っているから良いかと省略したものの、やはりそれはまずいと底蓋にプレスされた?  さぁ、当時のご担当にお聞きしなきゃ分かりませんね。あくまでも推測の域を出ません。

Dscf1976381 三光PENの定義ってどなたが言い始めたのか知りませんが、私も先生から聞きました。しかし、それは主に外観の差異を指摘したものでしょ。この頃の製品は外観だけでなく内部の仕様も試行錯誤でロットごとに変更されているのです。その意味では、この個体はかなりスタンダードなPENに違い仕様です。但し、部品の加工精度が甘い気がします。ピンセットのウェーブワッシャーは初期の個体には入っていません。(下のギヤの形状も違う)ワッシャーが入るように変更された初期でも材質がスチール製です。すでに巻上げダイヤルのカバーは2本のビスによるネジ留め式になっていますが、初期は熱カシメタイプで分解は出来ません。

Dscf198176 すべて分解をして洗浄してありますが、その分解が一苦労。初期のナットなどはスリ割りの幅が薄い傾向にあり、PEN-S用に調整した工具では合致しません。また、組立から長期の時間が経過していますので、簡単には緩んでくれないのです。改めて部品を点検すると、この個体はへこみなどもなく、各部のコンディションは良いことが分かりました。

Dscf198573 シャッターユニットは、米谷さんは本来使いたくなかったバリオタイプです。この頃は、スローガバナーなどもユニット設計ではなく、地板に一つずつギヤなどを組み込んで行くという旧式な設計思想。構造も簡単ですが、それが幸いしてPEN-Sのシャッターのような気難しさはなく、殆どメンテナンス無しで現在も作動しているものが多いのです。

Dscf198757 巻き戻しダイヤル関係の部品は、後にスタンダードと大きく異なる部分ですね。ダイヤル本体も裏面の肉抜きもなく重いのです。頭の中にある形を試作的にそのまま図面に起こしたような設計。当時も、販売価格が安価なカメラのため、コストを意識した設計をされたばすですが、結果的には意外に工数の掛かった設計となっています。ですから、すぐにコストダウンのため変更されます。私個人としては、メカニカルなノブなど気に入っているんですけどね。

Dscf198096 ファインダーブロックのビス孔の1ヵ所が折れていました。硬質プラスチックの材料の劣化とトップカバーとの接合面の形状が合っていなかったのでしょう。接着で再使用とします。内部の樹脂製対物レンズなども非常にきれいな状態です。

Dscf199186 三光の特徴として良く言われるレンズ外周の「Flash¬」レリーズボタンの横筋、フィルム位置マークの非貫通、片耳ストラップ、巻き戻しダイヤルなどは揃っていますね。その他には、駒数カニ目ネジ孔非貫通、指針金メッキ、裏蓋底部リベットの頭の形状(丸)なども異なっています。初期の特徴は有していませんが、間違いなく三光PENと言って良い個体と思います。

Dscf199357 次はPEN0S 2.8 #3688XXですが、すでにオーナーさんご自身でメンテナンスをされています。さすがエンジニアさんですので、作業はまじめで正確ですね。あとは、数をこなす経験があれば良い修理が出来るでしょう。で、レンズ部の絞り機構ですが、イモネジ部にヤスリ掛けの跡があるのでジャンクとのことですが、これで良いのですよ。苦労してナットを分離した形跡がありますが、不都合がなければ、ここは分解しない方が良いと思います。一度分解すると、どうしても締め込みが甘くなって、絞りリングを過度に回したりフィルターを外す時などに緩んで絞り指標と▽が合わなくなってしまいます。

Dscf199487 メカとしては特に問題はなく、同機種が続きますので画像は撮りませんでした。しかし、製造番号と中身がちょっと疑問がありますね。シャッターの完成時期からすると40万台以降のような気もします。但し、過去の履歴を見ると、製造番号と内部の製造日は必ずしも正数順に並びません。途中でユニットの入れ替えなどの後天的な原因もありますが、自動車の車台番号のように、仕様変更の時期を正確に特定すること(この号機からというような)は無理なのです。巻き戻し軸のガタを調整するワッシャーも厚み(枚数)が足りませんので、この辺に何に原因が見え隠れしていそうです。この個体はシュー下に記入されているはずの数字(赤字)が消されています。(僅かに残っているが判読不明)シャッターユニットの製造捺印とともに、この個体の履歴を推理する重要な手がかりですから、不用意に消さないように気をつけなければなりません。私は、洗浄時は充分注意をして、判読不明となりそうな捺印は予めルーペで読み取っておいて、洗浄後、新たに捺印をしています。しかし、私の手元に来た時点で、すでに消されていたものは処置なしで、私の過去の資料から推測する以外にありません。カメラ自体は非常に調子良く仕上がっています。


PEN-S 2.8+PEN-D3

2011年02月01日 20時21分57秒 | インポート

Dscf193573 この8型の時計可愛いでしょ。スイスのCHRONOMETERですけど、ちょうどPEN-Sのフィルター径と同じぐらい。これらのジャンクは殆ど中の部品を抜かれていますが、欠品を追加して注油をしたところ調子よく動き出しました。合間を見てオーバーホールしてやろうと思います。で、きれいに管理されたPEN-S 2.8とPEN-D3が来ています。どちらもシャッター羽根の固着と粘りが発生していますが、基本的に同じ形式のシャッターですから原因は同一で、定期的なオーバーホールが必要なんですね。では、PEN-S #2659XXから作業を始めることに致します。

Dscf193828 一見「きれいに管理された」と見える個体なのですが、じつはちょっと悩ましいのです。ダイカスト本体はかなり初期の仕様に見え、外観の黒塗装部分は自然乾燥塗料で塗装されています。また、ファインダーの対物レンズやミラーは新品か複製品でやり直されています。トップカバー#2659XXとシャッター「37.6」はう~ん、という気はしますが、まぁ、納得したとしてその頃の個体でファインダーをやり直す必要があるのだろうかという疑問を持ちます。一番納得出来ないのはターミナルのリード線が半田付けだということ。この頃はすでにネジ留め式になっている頃です。半田付けを使用したのは10万台も前半ですね。推理が困難な個体です。

Dscf1939281 この個体は、過去の修理で軸受けや画像のシャッター内部にまで、非常に重いグリスが塗布されています。このシャッターに軸受けと同じグリスを使用することは私はしませんよ。本来は、シュー下に記載の数字が製造時期を特定する手がかりとなるのですが、この個体は記載がありませんので推理を困難としています。拭き上げで消されたとしても、加工の挽目溝に入り込んだ赤鉛筆は消えないと思いますが、PENなどからの流用かも知れません。まぁ、あまり疑っていても仕事になりませんから、これからは完成させる努力をしますよ。

Dscf194559 問題のシャッターユニットのハウジングですが、内部の黒いプレートはシャッター羽根と摺動する部分ですが、それを留めている皿ビスのスリ割りが壊れてプレート面より飛び出しています。これでは羽根と干渉してしまいます。工場での組立を見てもスリ割りを傷めているものもありますが、これは後の作業でしょうね。どうもこのハウジングはあやしいのです。

Dscf195179 スプール軸を見るとね。ピントが甘いのではっきりとしませんが、じつはヤスリで削られています。駒数板の上に乗るキー付きワッシャーも取り去られています。そこまでして軸の飛び出し量を抑えたかったのでしょうね? 画像はありませんが、巻き戻しダイヤル部分のダイカストは変更前のものですから、当然巻き戻しダイヤル下には調整ワッシャが入るのですが、この個体には見当たりません。これらのことから、このトップカバーはこの本体のものではなくて、勘合が合わないところを加工により取り付けたのではないか? という気がしますが断定は出来ません。

Dscf195297 その他、PEN-Sの場合は、レンズのヘリコイドねじの規格が二種類ありまして、初期のものはピッチが細かく、その後は粗いピッチになりますが、この個体のピッチは細かいのですねぇ。どういうことかな? ヘリコイドグリスが劣化して抜けてくると、前中期以降のピッチの粗い個体は距離ダイヤルの回転がスカスカに抜けやすいのですが、初期の個体ほど、意外にしっかりとしているのです。どちらが良いのやら、変更された理由を聞かないと分かりませんね。しかし、レリーズボタンのバネは初期の弱いタイプではなくて強く変更されたものになっていたりで、考えるとますます分からなくなる個体ですね。まぁ、工場を出たままの組み合わせでないことは、沢山の個体を見てきた私には一目で分かるのです。しかし、しっかりと機能していますので、これはこれで良いとも思います。

Dscf195654 次はPEN-D3 #2141XXですが、こちらは何の疑問も無いと思いますよ。PEN-Sと同じようにシャッター羽根の開閉不良ですから、すべて分解洗浄の後に組立てて行きます。基本的にはPEN-Sと同じシャッターですが、1/500を実現するためにメインのスプリングが強化されています。ピンセットのスプリングはレリーズレバーのリターンスプリングです。このレバーの形状はPEN-Sとは変更されて細かな部品が追加されています。

Dscf195798 で、こんな感じでシャッターユニットは完成しています。PEN-Sと異なり、シャッターの下に絞り機構を持つ二階建て構造ですから巨大なシャッターです。

Dscf195985 この個体の電池室は従来の水銀電池ではなくてLR44などのボタン電池仕様となっていますね。電池室の外形に比べてスペーサー部分が大きいでしょ。しかし、先日オーバーホールをしました#2511XXは水銀電池仕様でした。先に生産された個体がボタン電池仕様というのは変ですか?  水銀電池の生産終了に伴ってメーカーSSではボタン電池が使えるようにメーカー改造を行っていたようですので、この個体は後天的に改造を施された個体かも知れませんね。水銀電池仕様をお持ちの方で、ボタン電池仕様に改造されたい方は右側の絶縁プレートを自作すれば良いと思いますね。

Dscf1964821 PEN-D2やD3を分解するたびに感じるのですが、矢印のように露出計のスイッチがボタンのセンターと随分ずれていますよね。左端に辛うじて掛かっている感じです。寸法的な制約かなぁ? とも思いますが、もう少し何とかならなかったものかと思います。米谷さんの設計は、他の機種でも、組立のドライバーが真っ直ぐに入らないとか、私が組立屋上がりなので感じるところが多々あります。

Dscf196519 最後に駒数ガラスとメーターガラスが曇り気味でしたので研磨をして、ファインダー前面角の塗装はげをタッチアップをして完成です。