今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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Leica M2 クロームのメッキを剥離するの巻

2014年04月10日 18時34分57秒 | インポート

Img_386166 ちょっと光って良く分からないですね。ライカ M2クロームですが、これのめっきの剥離のみのご依頼です。ご自分で塗装をされるのでしょうかね。詳しいことはお聞きしていませんが・・で、到着した分解された部品を見ます。あら~、トップカバーの打痕を裏側から叩き出して表面を研磨してありますね。その他、全体的にペーパーで研磨をされていて、クロームはほぼ削り取られていて、ニッケルと銅下だけか残っているような状態です。研磨にあて板を使わなかったと見えて、角のエッジが丸くなってしまいましたね。アンダーカバーの開閉キーに錆が・・水を着けながら研磨をしたのでしょう。めっきの剥離は各層を順次剥離をしていくので、このように部分的に真鍮が露出している状態はあまり好ましくないのです。

Img_386274 なんかベコベコのカバーですね。剥離の前に彫刻文字とアンダーカバー内側の黒塗装を落としておかなければなりません。めっきが剥離できないので・・









Img_386445 めっきを剥離した状態です。梨地と研磨をされた部分がはっきり分かりますね。このまま塗装をすると、稜線がくっきりと出てしまいます。塗装をされる場合は、その点の処理が必要です。








Img_386515 アンダーカバーの内側。塗装の場合、ダイカスト本体との勘合寸法を考慮する必要があります。










Img_386621 細っかい部品一式。塗装をされる場合は、酸化が進む前に早めに行ってください。
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久しぶりにPEN-FTブラックを作るの巻

2014年04月07日 21時32分00秒 | インポート

Img_378511 ちょっとUPが空きました。眼精疲労でね。作業が止まっておりました。で、PEN-FTのブラックをご希望です。すでにシャッターユニットはO/Hを終えて、本体に搭載してあります。各部の塗装が完成しましたので、彫刻文字の色入れや巻上げユニットの組立をして行きます。







Img_378655 ボチボチやらせてもらいますね。では、塗装をした巻上げレバーをユニットに組み込んで行きます。部品点数も多いですが、じつは画像の中にベアリングのインナーカラーが写っていません。レバーとベアリングとの間で一番力の掛かる部品で、ベアリング上下2列の磨耗筋が入っています。(殆どの個体で同じです)本来はカラーを作り直した方がレバーのガタが減るのですが、まぁ、許容範囲ということで再使用とします。



Img_378774 完成したユニットを本体に組み込んでいます。初期型の個体ですので、駒数板の取り付け方式も変更前のもの。本体の取り付けビスも4点(後に3点)です。









Img_379099 小物部品の組立。セルフタイマーボタンは、レンチの掛かりやすい当方のオリジナルを塗装して使います。巻き戻しレバーのノブは初期型なので丸いローレットタイプ。留めビスは本来ブラックモデルは黒ですが、フェイクを作っているわけではないのであえてメッキのままとします。






Img_379522 駒数窓、明り取り窓の接着。シンクロターミナルの取り付け。文字の色入れを終えてトップカバー完成。










Img_379121 リターンミラーは外周に腐食が広がっていますので、オーナーさんのご希望により新品と交換します。










Img_379766 新品に交換したリターンミラーを前板に取り付けます。











Img_380055 初期型としては、フレネルレンズ、プリズムの状態は非常に良いものでした。ミラーユニットを取り付けて前板関係完成。










Img_380277 完成している本体と前板をドッキングします。初期型のシャッターユニットは疲労をしているものが多く、調子の良いものは少ないのですが、このユニットは疲労磨耗が少なく、非常に安定しています。しかし、スローガバナーは変更前ですから、シャッターダイヤルの操作は丁寧に扱う必要があります。






Img_380455 ビューファインダーのレンズ構成。残念ながら、内側のコーティングにカビ痕があって清掃できません。初期型ですから、レンズの押さえ方式はリングナット式。後にスナップリング式に変更され、分解組立を容易にしています。








Img_380715 メカ部の組立は完成です。この個体は、使用過程で露出計不動となり、後年に基板別体タイプのユニットに換装されています。同時にハーフミラーも交換されています。しかし、オーナーさんのご希望によりハーフミラーは交換しました。







Img_380662 前面から。セルフタイマーレバーを取り付けて、作動のチェックとレバーの水平調整をしてあります。










Img_384655 日曜日は高校の鉄道模型クラブの同窓会に行って来ました。何十年ぶりでお会いする先輩たちとは、当時の先輩後輩の関係が戻って、私には心地良いものでしたね。私が一番後輩です。国鉄の運転士となった先輩の裏話で盛り上がりました。今度は運転会に出てみたいと思いますが、HOゲージの車両は処分してDD13とBタンクしか残っていないしね。現在のHO車両は工芸品で、完成車両のプライスタックは昔と桁が違いますね。ペーパーキットを作る人などいないのでしょうね。しかし、車両製作は真鍮工作を覚えた原点です。

Img_385322 で、中断をしていたPEN-FTブラックに戻ります。じつは、テスト中にミラーユニットが悲鳴を上げました。極初期型のミラーユニットは磨耗によって、ロック爪の掛りが不確実となって不良となるものがあります。このユニットは、PEN-FTの中では一番キーとなる部品だと思っています。カシメを多用して組まれているため、分解修理は出来ません。






Img_385548 しかし、良くこのからくりを考えたものだと感心します。技術者は大したものだと感心するばかりです。設計者の米谷さんにお伺いをしましたが、「FTは分解できないユニットが多いので、長く使いたい人は、交換用の部品を用意しておくこと」と言われました。現状は、新しいユニットは生産されないわけで、手持ちの部品から交換をしていますが、それが底を突いた時が、FTが現役でなくなる時だと思っています。今回は改良後のユニットを使いましたので、レリーズのリンケージも適合した部品にセットで交換しています。




Img_385766 と言うことで、通常の2倍の工数が掛かったPEN-FTブラックリペイントは完成とします。







タカノ・シャトーを復活させるの巻

2014年04月03日 22時27分53秒 | インポート

Img_380831 茨城のご常連さんから腕時計が3個届いていますので、PEN-FTブラックの気分転換に少し手掛けてみようと思います。モデルは、タカノ・シャトーですね。タカノは1957年から5年余り名古屋で腕時計を生産したメーカーで、伊勢湾台風によって工場が被災して生産を停止し、後に現在のリコーに吸収されたとのことです。生産期間が短いので、市場に出て現存している個体数も少なく、幻のタカノとか言われているようです。1号機から3号機まで3個ですが、点検すると、2号機が外観も良く、このまま復活させたい。残りの個体はニコイチで何とか仕上がればというところでしょう。

Img_380961 ご要望のメールをチェックしてから点検します。まず、秒針と長針が共回りしますね。これは、秒針の圧入し過ぎでしょう。機械は、テンプをアシストしても全くトルク伝達が無く不動状態です。典型的な油切れというところ。








Img_381155 このモデルは薄さがセールスポイントだったようで、確かに機械も薄く設計されていますが、地板の仕上げはお世辞にも良いとは言えませんね。セイコーとはかなりの差です。









Img_381275 部品を超音波洗浄をしてから組立てています。特にひどい磨耗はありません。ザラ回しも軽いです。











Img_381346 機械はオーソドックスな軸配置で、セイコーのマーベルなどに受けのデザインが似ていますね。元気に目覚めました。









Img_381661 そのままタイムグラファーに掛けると、ずいぶん進み方向です。過去に油切れで遅れ気味となったものを補正して来たのでしょう。










Img_381721 文字盤は比較的きれいな状態ですが、中心付近が凹み気味です。たぶん、針を押し込み過ぎて工具を当てたのでしょう。これからケーシングです。









Img_381826 セイコーのクロノスなどに多いドレスウォッチのような雰囲気の文字盤と針。ケースは薄く設計されており、巻芯の逃げをベゼルにも作ってあります。金めっきはなんと50ミクロンです。他の個体も裏蓋には永年勤続記念・住友銀行と彫刻されています。国鉄物と同じで、大手の銀行ですので、大量に調達されたのでしょう。当時のタカノはメインバンクは住友だったのかな? 残念ながらリューズはTが入らない汎用部品になっています。オーナーさんから、純正の新品部品が付属して来ましたが、残念ながら巻芯のネジ部の長さが足りません。


Img_382016 秒針が、何度も圧入されたために緩くなっていて、それを無理に押し込んだために長針と接触をしていた不具合でした。時計師さんの仕事では無いでしょう。軸部部分を絞めて再圧入としてあります。これでしばらくエージングテストをします。作業終了ですのでお茶にします。







Img_382324 残りの1号機はゼンマイの逆転を留めるコハゼ部分が破損したために、バネ線を溶接して修理をしてありますが、これではダメですね。しかし、溶接する方が難しいと思うのですが・・で、1号機のケースを生かして、3号機の機械をセットすることにします。







Img_382599 風防とベゼルを分離して緑青を清掃して文字盤と針も軽く磨いておきます。完成した機械をケーシングをして終了。流石に50ミクロンの金めっきは角も剥げませんね。普及クラスの20ミクロンめっきでは、地金が露出して、その部分から腐食が進み、悲惨な状態のものが殆どですからね。







Img_382675 本物のワニ革ベルトは高級感がありますね。セイコーのマーベルやクラウンと同様に、非防水ケースの時代のエレガントな時計は、私も大好きですね。2つとも、永年勤続の記念品ですから、贈られた方は誇りを持って愛用されていたのでしょうね。アンティークの品物を手にする時、いつもそのようなことを感じてしまいます。

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