今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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TECHNOS Ster Chief の竜頭交換の巻

2016年08月18日 19時10分47秒 | ブログ

ご常連さんのお父様の形見の時計とのことです。竜頭がオリジナルでないので、なるべくオリジナルの状態に戻したいとご自身でT入り純正の竜頭を調達されて来ました。

 

古い腕時計は巻芯が錆付いていて竜頭を分離しようとすると折れてしまうものがありますが、幸いこの個体は巻芯に錆は無く交換することが出来ました。純正の方が一回り大きいですね。

 

巻芯に注油と竜頭にシリコングリスを塗布して取り付けました。変わっているのがケースの裏蓋。基本的に圧入式ですが、開ける時は右に回転させるとスロープを上がって裏蓋が分離できるというもの。それなら最初からネジ式にしておけばとも思います。

風防ガラスのキズ研磨、ケースとベルトの洗浄をして完成です。

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元箱付きのPEN-DをO/Hするの巻(その2)

2016年08月14日 20時36分13秒 | ブログ

今日は、しばらくぶりでルマン号に乗りました。すると結構楽にペダリングが出来てスピードも出る。しかも疲れない。夜のウォーキングの効果が表れて来たようです。で、近くの昭和記念公園です。入園料がもったいないので入場はしません。周辺を走ります。夏休みですから、子供連れのファミリーが多く、駐車場待ちのナンバーから、遠くからも来られているようですね。

ここは、立川駅に一番近いゲート。ちょうど、モノレールが出発して行きます。私の子供の頃はアメリカ空軍立川基地で、戦時中は立川陸軍飛行場で飛行第五連隊がありました。フランスのパリまで長距離飛行の朝日新聞社「神風号」は、ここから飛び立ちました。

 

何やらイベントかと思いましたら、リオオリンピックのパブリックビューイングっていうんでしょうか? 大きな画面にリオのライブ画像が映って、観戦されている方がいましたね。まぁ、私は自分で走っていた方が楽しいので・・

 

で、本題です。遅れて来たペンマニアさんは怒涛の収集です。先日もやりましたが、またも元箱付きPEN-Dです。意外に安く入手が出来ているようで、今がねらい目なのかもしれませんよ。普及機とはいえ、はやり当時はカメラは高級品だったようですね。元箱を保護する二重箱には感動します。

取説から保証書その他すべて揃っていますね。購入されたオーナーさんは、物を大切にされる方だったのでしょうね。

 

保証書はこんなんです。軟質パスケースの入っていますが、これがオリジナルなのかは知りません。

 

「物を大切にされる方」にしては、それほど使い込まれていない個体なのに、あっちこっちへこませていますね。あぁ、この純正フィルターは良いですね。

 

底部の角もへこませています。そもそも、サイズの割には質量が重すぎるのです。小さいのに重いから落としやすい。落とすと重いのでダメージが大きいという寸法。気になるのは、4つのリベット周辺が陥没気味ですね。これ、プレスの圧力が高すぎるのですね。

 

こんなふうにね。ロットによってこのような個体を目にしますが、私が検査課の担当者だったら不良判定ですね。

 

 何故か、ずっとコンパクト系が続いていますので簡単にUPです。D系のシャッターバネは強化されています。

 

 ヘリコイドグリスを交換して取り付けています。後玉がね。ちょっと曇りがあるんですね。撮影は問題ありません。

 

絞りとシャッターリングを取り付けます。

 

 

シャッターリングの留めネジ3本はスペースの関係でM1.4と細く緩みやすいので必ずネジロックをしておきます。文字環を付けて終了。

 

#3931XX(1964-5月製)でも、まだ露出計は旧タイプですね。露出計の感度は良好。トップカバーの接眼部モルトを貼って取り付けます。

 

トップカバーは過去に開けられていましたが、シャッターやファインダーは未分解でした。何をしたのかな?

 

折角なので、付属の印刷物をコピーさせて頂きました。

 

冊子には、新製品としてPEN-Fが掲載されていました。

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またまた来ましたPEN-Sブラックの巻

2016年08月13日 18時41分34秒 | ブログ

遅れて来たペンマニアさんから、またまた来ました。もう、遅れて来たなんで言えません。私よりずっとレア物を所有されていまして、もはや第一人者でしょう。で、PEN-Sブラックですが、#1670XXと、前回取り上げた個体#1667XXと同じロットですね。仕様も全く同一です。新宿の有名中古屋さんが出品されていた個体だそうです。裏蓋のモルトは何となく交換されていて、一見問題はなさそうに見えますが、シャッターは良くないです。

右の吊環が曲がっていますね。これは、この部分が落下により陥没したために、吊環を外して修正したのでしょう。裏からナット留めの時には、吊環を固定して回らないようにしなければなりません。ちょっと、仕事が雑です。

 

シャッターは低速不調気味、地板外周に油が付着していますが、これはハウジングのチャージ機構に油を着けたため。注油をするとシャッター羽根に油が回るので厳禁です。

 

そのハウジング側のシャッター羽根と接するプレート。分かり難いですが、メッキに腐食が発生していて摺動抵抗が大きくなります。

 

磨いたところ、あまり変わり映えがしませんかね? 現物は変わっています。

 

 

スローガバナーも動きがギクシャク気味です。再組立で調整します。このように、シャッターは僅かなフリクションを減らす努力が必要です。

 

前回と同じロットなので、調整ワッシャーも同じ。スプロケット側は1枚に見えますが、実際には2枚入っています。この個体にはスプール側にも入っています。どれだけ精度が悪いんだよ。

 

カム板とスローガバナーの当たりを確認して組みます。この頃は、巻き戻し部分は旧設計の頃です。

 

旧設計は上下ガタを調整ワッシャーの枚数で調整しています。巻き戻し軸の下側のワッシャーが欠落していますので追加しておきます。

 

レンズは後玉に難あり。普通は裏側のコーティングが劣化するのが定番ですが、このレンズはコーティングは完璧で表側にガラスの腐食があります(点々)

 

シャッターは調子を取り戻しました。ブラックモデルは相変わらず高値だそうで、私にはとても買えません。オリンピックネタですので、私の世代では、東京オリンピックと言えばこのマークです。

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日焼け兄弟PEN-W・Sブラックの巻

2016年08月09日 17時42分29秒 | ブログ

今日の関東地方は37.7℃だったそうで、どうりで朝から暑かったです。普段は控えているエアコンを入れっぱなしで作業をしていましたよ。昨日の閲覧数を見ると上昇傾向で、やはり頑張ると見てくださるのだなぁと分かりますけど、UPするのも大変なんですね。( ´艸`)

で、真夏で日焼けをした子供たちが里帰りをして来たみたいです。PEN-SブラックとPEN-W兄弟です。以前でしたら羨望の組合せでしたが、最近のクラカメ人気低下により、入手が容易になって来たのですかね? 私はマニアではないので所有していませんけど、今度探してみようかな? まずは、PEN-Sブラック #1667XX からO/Hします。PEN-Sのブラックは発売初期に製造されたもので、この個体はシャッター完成(コパル)1961-4月、本体完成1961-5月ですから、かなり初期です。その割には程度は悪くないと思いますよ。

ずっとPEN-Wをやっていたので、PEN-Sの出っ張ったレンズはエレガントじゃないなぁと感じます。メカはシャッター不調、ピントリングはグリス切れでクルクル回ります。ついでに後ろのシャッターリングも回わっちゃいますね。これはリングナットが緩んでいるのでしょう。

この個体は未分解機です。思った通りリングナットが緩んでいました。工場での組立時に緩み止めのネジロックが塗布されていないのです。

 

カバー内部も汚れ放題ですが、ファインダーカバーは剥がされた形跡がありません。

 

取りあえず、すべて洗浄をして、さっぱり汗を流していただきました。

 

 

接着剤の硬化時間の都合で、ファインダーのレンズ分解、清掃から行っていきます。初期のファインダーは2枚の対物レンズと前面の保護ガラスの間に無駄なクリアランスが無く、ピタッと位置が決まってくれます。

 

シャッターは開いたままで停止して、忘れた頃にパシャッと閉じます。当然シャッターも未分解ですが、パーツの状態は良いと思います。初期のユニットの見分け方。12時位置のネジ頭がスリ割(-)です。中期以降は地板にカシメられた軸に対してナット留め(逆になる)になります。組立難易度の低減(軸に対して部品を嵌めた方が楽)と軸の位置精度を上げるための変更でしょう。B(バルブ)が利かなくなるのです。

初期の個体はスプロケットはアルミアルマイト地、スプールはグレーですが、本体のダイカストの加工精度が安定せず、ナットには調整用のワッシャーが入っている個体が多くあります。この個体は2枚です。また、ピンセット先のクラッチの先端が削られています。これも工場での調整と思われます。

同じような画像が続くので簡単に・・。本体メカ部の組立完了。

 

 

接着硬化をしたファインダーを組み込みます。カウンターガラスにクラックが入っていますが、今回はこのままとします。

 

ファインダーのリンクル塗装で、PEN-Wと印象が変わりますね。製品の仕様を決める段階で、いろいろな検討がされたのでしょうね。

 

同じような画像で自分でも分からなくなります。次のPEN-W #1035XXです。現在はリオオリンピックが開催されていますが、この個体の製造は1964-10月。そう、第18回東京オリンピックが開催されたその月です。私の印象ではそれほど昔ではないのですが、52年前かぁ・・歳を取るわけです。その割には程度は悪くありませんね。塗装もきれいな方です。ファインダーは曇っていますが、シャッターは作動します。

分解洗浄で組み立てています。この個体#1035XXでは、スプロケットはアルミの黒アルマイトですが、先日の#1161XXでは、プラの成形品となっていました。良く見なければ分からないコストダウンが行われています。

 

本体の塗装状態も悪くないですね。シャッターは初期型とは違いますよ。見比べてください。

 

オリジナルの塗膜を良く残している個体です。かなり艶消しが強いことが分かります。

 

塗装のコンディションが良い個体のレンズは、やりは程度はよろしいです。コーティングにうす曇りとバルサム黄変は仕方がないところ。

 

レンズ部の出っ張りを比較してみると・・

 

 

2020年にまた東京オリンピックが来る。みなさん、それまで頑張りましょう。

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さてどうなるかPEN-Wの巻

2016年08月02日 22時08分23秒 | ブログ

PEN-Wを2台体制で運用されているオーナーさんです。PEN-Wも年々程度が落ちてきますけど、この2台は定期的なメンテナンスも受けていらっしゃるとのことで、特に不具合はありませんが、塗装の状態が悪い方をリペイントご希望とのことです。え~、この蒸し暑いのにリペイントかぁ・・

気を取り直して、とにかく全て分解します。ターミナルはお約束の半田剥離です。

 

 

ファインダーブロックを留める3本ネジのうち右上の皿ネジがありませんね。

 

 

オーバホールでは分解しなくても良い吊環も外していきます。

 

 

駒数ガラスも撤去します。ネジ孔部に接着剤の痕がありますね。本体に対してのトップカバーの位置を調整するためのワッシャーが接着してあったはずです。

 

シボ革を剥離し易いのはシボ革が劣化(風化)しておらず、接着が弱いケース。剥がしにくいのがその逆でこの個体。私も当時はシボ革を貼っていましたが、ベテランの女工さんはほんときれいに貼ります。たぶん、ベテランさんが貼ったのでしょう。しかし、シボ革はタタミイワシ状態なので、再使用はどうするか??

裏蓋は背と下カバーを分離します。引っ張っても取れませんよ。どうするのか・・

 

 シャッターはO/H不要とのお話でしたが、私としては全ての部分について責任を負いたいのです。リペイント費用にはO/H費用は含まれておらずサービスで行っているというのが現状です。

 

頑固なシボ革の剥離が終わりました。それほど程度は悪くないと見えた母材ですが、へこみ、真鍮の腐食劣化が結構進んでいますね。

 

塗装を剥離した状態。絶望的な気持ちになります。私がPEN-Wのリペイントを始めた頃に比べて、母材の状況は確実に悪くなっています。

 

PEN-Wの彫刻文字は幅が細くて彫が浅い。長期に塗装が剥離した状態で使われた個体は、真鍮が酸化磨滅をしておりリペイント後の色入れが困難な個体もあります。

 

極力、磨滅させずに一皮剥く。この相反した作業は神経を使います。

 

 

 塗装完了ではありません。下塗りです。塗装は下地の善し悪しがはっきりと表れます。母材の荒れが大きく、塗装面に現れてしまいます。これを修正して行きます。

 

 こちらが仕上がり。酸化被膜を除去するだけならサンドブラストが有効だが、すでに酸化浸食をされた母材の仕上がりが平滑面になるわけではない。また、サンドブラストを彫刻文字に掛けると彫刻の角が磨滅してしまい彫刻がダレてしまう。PEN-Wのような微妙な彫刻には使わないようにしています。

 標準のPEN-Sをリペイントする場合は、クロムメッキを剥離することになりますが、メッキによって真鍮の母材は酸化から守られており、プレスが完了した時とほぼ同じ状態を保っているため塗装作業は容易い。しかし、PEN-Wのように耐久性のない塗装を施された母材は酸化が進んでリペイント作業を困難にしています。かと言って、自動車の板金塗装のように、パテやサーフェサーは打てないので、平滑面の下地を得るまで、ひたすら塗装と水研ぎを繰り返すことになります。

 塗装が終わった本体ボディ。これから部品を組み込んで行きます。

 

 

裏蓋は背と下カバーをリベットでカシメて一体にします。

 

 

ふぅ、暑いのにやることが沢山あります。ひとりオリンパスをやっているようなものです。トップカバーの製作。吊環取付、彫刻色入れ、カウンターガラス接着をします。

 

本体の組立をしています。「タタミイワシ」のシボ革は修正をして再使用としています。それほど悪くは見えないでしょ。

 

カウンターガラスは新品で気持ちが良いです。脱落していた調整ワッシャーを接着しておきます。

 

トップカバーにファインダーを取り付けて(欠落ネジ追加)本体ドッキング。シューのレール部は打撃による変形を修正した形跡があり、すでにクラックが入っていました。

 

並行して裏蓋の組立をして行きます。リベットでカシメてから開閉鍵などを取り付けます。

 

シボ革は最後の貼りますので、この段階では貼ってありません。工場でも、良品合格後に貼ります。底部は変形やキズなどのダメージが多く、あまり納得できる仕上がりではありません。夜目遠目ということで・・

 

本体にはレンズを取付けて完成。裏蓋はシボ革を貼って完成。

 

 

最後に本体と裏蓋をセットして完成とします。かれこれ、作業に着手をして2週間になりますね。古い塗装を剥離して、ちょこちょこっと塗ればおしまいの簡単なお仕事ではないことはご理解頂けたでしょうか。

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