そのままキャバレーに戻った武蔵は、訝しがる五平や梅子に、
「なんだ、なんだ、その目は。あんな小娘をどうかするとでも、思っていたのか。
今夜の相手は、珠子に決まってるだろうが!」と、珠子を呼び寄せた。
他のボックスに居た珠子だったが、すぐに武蔵の元にやってきた。
「おお、珠子! 淋しかったぞ!」と、大げさに声を上げて珠子に抱きついた。
「うれしいぃ!」と、珠子もまた武蔵の背に手を回した。
珠子の豊満な胸が武蔵の欲情に火を点け、「店が終わったら、付き合うんだぞ。今夜は、寝かさないからな」と、耳元で囁いた。
「それじゃ、あとでね」と言い残し、待ちぼうけ顔をしている客の元へと戻っていった。
珠子が離れた後に武蔵が、梅子に対して「おい、梅子。あいつのどこが、未通女娘だと言うんだ。思いっきり、淫乱の気があるじゃないか」と、軽く睨みつけた。
空になった武蔵のグラスにウィスキーを注ぎながら、梅子は澄まし顔で答えた。
「この店では、まだ未通女だわよ。誰も、手を付けてないんだからさ。
それより、どうしたのさ 振られたのかい、あの娘に。珍しいこともあるもんね」
「いやいや、どう致しまして。これからさ、あの娘は。じっくりと、構えるのさ。
まだ、ネンネだなからな。五平、気に入ったよ」
「社長! 伴侶にしてくださいよ。二、三年もすりゃ、いい女になりますって」
得意満面に、五平が答えた。
「そうだな、考えとくよ。梅子、悪い虫が付かないよう、監視しててくれ」
「あいよ! 任しときなっ。社長、本気なんだね? 一時の気の迷いだった、なんて言わないでおくれよ」
梅子が真顔で武蔵に詰め寄った。
「あの娘は、ほんとに身持ちの堅い娘でね。何人かの客に言い寄られたんだけど、頑として受け付けない。
『わたしには誓い合った人がいますから!』って、真顔で拒否するんだよ。
断る方法を二つ三つ教えたんだけど、『うそはバレますから』って、言い張ってねえ。
可愛い娘だよ、ほんとに」
武蔵にというよりは、己に言い聞かせる風の梅子だった。
「娘というには、あたしはまだそんな年じゃないし。まあ、少し離れた妹かねえ」と、感慨深げに続けた。
「それにさ、なんでも英語とかを話せるようになりたいとかで、昼間は学校通いだよ。
で、昼間にも時間を作ってはどこかで仕事をしているみたいでね。
健気な娘だよ、ほんとに。そうだ! 社長。少し援助してやってくれないかねえ。
このままじゃ身体を壊すんじゃないかって、不安なんだよ」
いつになく真剣な顔付きで、武蔵に迫った。
「なんだ、なんだ、その目は。あんな小娘をどうかするとでも、思っていたのか。
今夜の相手は、珠子に決まってるだろうが!」と、珠子を呼び寄せた。
他のボックスに居た珠子だったが、すぐに武蔵の元にやってきた。
「おお、珠子! 淋しかったぞ!」と、大げさに声を上げて珠子に抱きついた。
「うれしいぃ!」と、珠子もまた武蔵の背に手を回した。
珠子の豊満な胸が武蔵の欲情に火を点け、「店が終わったら、付き合うんだぞ。今夜は、寝かさないからな」と、耳元で囁いた。
「それじゃ、あとでね」と言い残し、待ちぼうけ顔をしている客の元へと戻っていった。
珠子が離れた後に武蔵が、梅子に対して「おい、梅子。あいつのどこが、未通女娘だと言うんだ。思いっきり、淫乱の気があるじゃないか」と、軽く睨みつけた。
空になった武蔵のグラスにウィスキーを注ぎながら、梅子は澄まし顔で答えた。
「この店では、まだ未通女だわよ。誰も、手を付けてないんだからさ。
それより、どうしたのさ 振られたのかい、あの娘に。珍しいこともあるもんね」
「いやいや、どう致しまして。これからさ、あの娘は。じっくりと、構えるのさ。
まだ、ネンネだなからな。五平、気に入ったよ」
「社長! 伴侶にしてくださいよ。二、三年もすりゃ、いい女になりますって」
得意満面に、五平が答えた。
「そうだな、考えとくよ。梅子、悪い虫が付かないよう、監視しててくれ」
「あいよ! 任しときなっ。社長、本気なんだね? 一時の気の迷いだった、なんて言わないでおくれよ」
梅子が真顔で武蔵に詰め寄った。
「あの娘は、ほんとに身持ちの堅い娘でね。何人かの客に言い寄られたんだけど、頑として受け付けない。
『わたしには誓い合った人がいますから!』って、真顔で拒否するんだよ。
断る方法を二つ三つ教えたんだけど、『うそはバレますから』って、言い張ってねえ。
可愛い娘だよ、ほんとに」
武蔵にというよりは、己に言い聞かせる風の梅子だった。
「娘というには、あたしはまだそんな年じゃないし。まあ、少し離れた妹かねえ」と、感慨深げに続けた。
「それにさ、なんでも英語とかを話せるようになりたいとかで、昼間は学校通いだよ。
で、昼間にも時間を作ってはどこかで仕事をしているみたいでね。
健気な娘だよ、ほんとに。そうだ! 社長。少し援助してやってくれないかねえ。
このままじゃ身体を壊すんじゃないかって、不安なんだよ」
いつになく真剣な顔付きで、武蔵に迫った。
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