「係長ってさ、意外にスケベなのよね。“貴子ちゃん、素敵なお店に行かないか?”って、以前誘われたのよ。
食事だけなら付き合ってもいいけど、お酒はちょっとねえ。行ったんでしょ、『蝶』というクラブに」 . . . 本文を読む
カラリと晴れ渡っていた空に、少しずつ雲が広がり始めた。
雨が近いのだろう、天気予報は良くなかった。
「いっそのこと、雪がいいのに」
彼の独り言に、同じバイト仲間が「うん、うん」と頷いた。
「そうなんだよなあ、雪は払えば済むけれど雨はなあ…。あーあ、またずぶ濡れかあ」
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「大学生活最後の年だったな。せっせと夏休みにアルバイトをして金を貯めたっけ。
殆どの学生は国内だと言うから、外国へと、しゃかりきに頑張ったんだ。
親が、”出してやるぞ”と言ってはくれたが。俺も蒼かった。
”自分の稼いだ金で行きたいんだ”なんて見栄を張ったりして。 . . . 本文を読む
三十路も終わりに近づいているママではあったが、子供を産んでいないせいか体の線は崩れを知らなかった。
張りのある乳房はお椀型で、「Fカップよ!」と自慢するだけのことはあった。
腰回りにしてもこの年代としては細く、適度にくびれている。
もっともお尻のサイズのビッグさは隠しようもないが。
「安産型なの!」と強調するところをみると、多少は気にしているのかもしれない。
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思えば、茂作は格式といったことに厳格だった。
あの家は昔庄屋さんだった、あの家は山を幾つ持っている、あの人は役場の課長さんだのと、常々言い続けた。
あいつは小作人だったくせに農地解放でいい思いをした、あいつは新家(分家)だのと小馬鹿にするところもあった。
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「でも、ぼくなんかじゃ。ぼくなんかじゃ、、」
激しく泣きじゃくりながら、母の胸に抱かれている錯覚に陥った。
ユミは彼の髪に優しく唇を当てながら、
「タケシは素敵な青年よ。その麗子さんとは縁がなくても、きっと素敵な女性が見つかるわよ。
でもね、ひょっとして麗子さん、タケシが好きだったのかも? よ」
と、囁いた。
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「香港・シンガポールのキャリアウーマンの方々は、外国人(フィリピン人等)に子どもの世話をさせているから、日本人もそうすべき」といった内容の発言がありました。
一見ごりっぱな意見に聞こえますが、異議あり! です。 . . . 本文を読む
彼は横たわったまま、起き上がる力もなく答えた。脱力感が彼を襲い、腕すら動かない。
「面白い青年ね。でも、麗子さん、麗子さんって、何度言ったかしら?」
軽く指で彼の胸をつねりながら、ユミは彼の顔をのぞき込んだ。笑い顔の中に、拗ねた表情を見せていた。ホステスとしての顔が、そこにあった . . . 本文を読む